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October 20, 2014

フォルクスオーパーのオペラ「おじさん社長」

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今日は10月にフォルクスオーパーでプルミエが行われた「Onkel Präsident」(アンクル・プレジデント、おじさん社長)をご紹介しましょう。

この作品はFriedrich Cerha作曲の現代オペラなので、Feriは観にゆくつもりはありませんでした。何しろ現代音楽の旋律が苦手なので‥

しかし、新聞評が良かったこと、音楽は別にして舞台は面白そうなこと、Feriが気にいっている歌手が起用されていることなどから、急きょ、観にゆくことにしたものです。

今回、上演される「Onkel Präsident」は、2013年6月にPrinzregententheater Münchenで上演された演出です。上演時間は1時間45分で、休憩が入らない短編オペラ。

さて、指揮はAlfred Eschwéさん、演出はJosef Ernst Köpplingerさん、舞台装置はJohannes Leiackerさん、衣装はMarie-Luise Walekさんという面々です。

しかし、Alfred Eschwéさんはオペレッタはもちろん、伝統的なオペラ、現代音楽と幅広いジャンルを手堅く指揮する器用な方ですね。

「Onkel Präsident」は、上演時間の割に出演者が多いのが特徴です。当日のキャストは以下の通りです。

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-Der Komponist:Walter Finkさん
-Der Präsident:Renatus Mészárさん
―Melody Moneymaker:Julia Kociさん
-Josef Powolny, Fahrradbote:David Sitkaさん
―Fräulein Flink, Sekretärin:Martina Dorakさん
―Fräulein Flott, Sekretärin:Elvira Soukopさん
―Fräulein Flugs, Sekretärin:Renate Pitscheiderさん
―Dr. Fleiß, Leiter des Sekreteriats:Stefan Cernyさん
―Dr. Gefällig, Generaldirektor:Marco Di Sapiaさん
―Dr. Pillerl, Betriebsarzt:Marco Di Sapiaさん(二役)
―Deodatus Graf Schrullenhuf-Wullersdurff:Thomas Sigwaldさん
-Didi Kvača, Reporter vom "Skandal":Jeffrey Treganzaさん
―Zwirn, Zuschneider:Christian Drescherさん
-Monsignore Campanile:Andreas Mitschkeさん
-Mummy Moneymaker:Sulie Girardiさん
-Daddy Moneymaker:Petar Naydenovさん

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一幕ものですが、プロローグとオペラ本編、フィナーレで若干、舞台が変わります。オペラの部分は終始、同じ舞台装置で上演されます。今回は、お話の内容を中心にご紹介しましょう。

舞台設定は現代です。巨大鉄鋼コンツェルンの社長(プレジデント、Renatus Mészárさん)が、ゼーフェルトでバカンスを過ごしています。

ある公園のベンチで彼は、作曲家(Walter Finkさん)にオペラ・ブッファを作曲するよう励まします。“あなたの年齢で、ヴェルディは既に「ファルスタッフ」を完成していますよ”と‥ しかし、作曲家は社長の提案に懐疑的です。曰く、“今時、誰が喜劇を求めますか?しかも喜歌劇を?”。

作曲家は更に、一般的な教育水準の低さ、芸術家に対する圧迫、良い脚本家のいないことなどを、社長に嘆くのでした。そこで、社長は、前日のオフィスでの出来事を語り、“面白い題材ではないかぁ”と作曲家に投げかけ、オペラ本編が始まります。

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この部分は、照明と木々を配置することで、公園の雰囲気を出しています。また、バカンス中なので、おじさん社長はフィナーレも含めて民族衣装です。

スクリーンが下りて場面転換。このスクリーンが巨大ビルディングを模したデザインになっています。スクリーンが上がるとオペラ本編の舞台となるコンツェルン本社に変わります。白を基調とした明るい舞台。手前が社長室で、奥が2階建てになっており、スタッフが働くオフィスという設定です。ノートパソコンなども置かれています。

コンツェルンの本社で指揮をとる社長の下、3人の女性秘書(Martina Dorakさん、Elvira Soukopさん、Renate Pitscheiderさん)をはじめ、忠実なスタッフたちが働いています。喫緊の課題はマネーメーカー氏の大コンツェルンと5年契約を取りまとめること。数千人の社員の生活が、この契約にかかっているのです。

なぜか、社長のデスク上には鉄道模型が置かれており、前半、社長が走らせる場面も‥

1週間後、バカンスの後に、マネーメーカー氏が夫人とともに、アメリカから到着する予定になっています。ところが、マネーメーカー夫妻は予定より早くやって来ることに‥

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この知らせに、マネーメーカー夫妻の娘メロディー(Julia Kociさん)は大慌て。彼女は半年前から、ドイツ語を学ぶため「アンクル・プレジデント」(おじさん社長)のところに滞在しているのです。

富裕なおてんば娘のメロディーは、バイク便を仕事とするヨーゼフ・ポヴォルニー(David Sitkaさん)と熱々です。しかも、ヨーゼフは貧しいばかりでなく、組合運動にも熱心。経営者としては、頭の痛いタイプです。さらに困ったことにメリーは妊娠しており、ヨーゼフ(ニックネームはペピ)と結婚するつもりなのです。

そこで、メロディーは、身分のつりあわない花婿候補を両親に受け入れさせるため、「おじさん社長」の助けを借りることに‥

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マネーメーカー氏から預かっている令嬢がバイク便の青年とただならぬ関係になり、妊娠までしていることがわかれば、契約どころではありません。そこで「おじさん社長」は、あらゆる手段を講じて、ヨーゼフをアメリカの大資産家に相応しい娘婿に仕上げようと考えます(何やら男性版のマイフェアレディーみたい)。

ヨーゼフは、まず、これまでの生活をやめさせ、労働組合からも脱退。大急ぎでスタイリングされ、促成コースで知識やマナーを詰め込まれることに‥ 

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この場面、色々な人物が登場し、服の採寸から始まって、舞台の上はてんやわんや。メロディーとの結婚のため、ヨーゼフは不承不承で「おじさん社長」の指示に従いますが、オーダーメイドの服ができるまで服装はヒッピーのような感じでした。

また、途中、ゴシップ雑誌の記者(Jeffrey Treganzaさん)がおじさん社長の企てをかぎつけて、社長室に乱入するといった場面も用意されています。とにかく障害が多い企てだけに成功するために「おじさん社長」は苦労を重ねます。

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「おじさん社長」は、花婿に相応しい役職を用意するため、臨時取締役会を召集し、鉄鋼コンツェルンの取締役を解任。ヨーゼフにポストを準備します。

そして、シュルレンフーフ・ヴーラースドゥルフ伯爵(Thomas Sigwaldさん)がヨーゼフを養子にすることで、貴族の身分を手に入れさせます。あつらえていた服や靴も到着、メイクを施して準備万端。

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貴族となったヨーゼフが社長室で待機しているところにマネーメーカー夫妻が来社(「あらすじ」ではサン・モリッツの高級ホテルに向かうことになっていますが、場面転換を省略するため、同じセットで物語は進みます)。

社員一同、アメリカの国旗を振ってマネーメーカー夫妻を出迎えます。夫の方はテキサスあたりから来たような服装。

仰々しく飾り立てた服装のマネーメーカー夫人は、大喜びでスマートな娘婿を抱きしめます。どうやらメロディーの相手としてヨーゼフは気に入られたようです。さっそくおじさん社長の前で、いちゃいちゃするメロディーとヨーゼフ。さて、「おじさん社長」の策略は見事成功したのでしょうか?

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実は、このオペラ、「あらすじ」には書かれていない「落ち」があって、ハッピーエンドになるかと思いきや、最後に日本企業が参入。スーツ姿の日本人が大挙、押し寄せます(ご丁寧に日の丸を振っています)。どうやらマネーメーカーの契約をかっさらってしまったようです。

バブル絶頂期の日本企業でしょうかね。ただ、元気がなくなった今の日本企業を思うと、ちょっと残念なオペラの結末。ドイツ人は日本企業を目の敵にしていますからねぇ。混乱のうちに、スクリーンがおります。

スクリーンが上がると、プロローグと同じゼーフェルトの公園に。

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フィナーレ。おじさん社長と作曲家は再び、公園のベンチに座っています。2人は、新たなオペラのアイデアを放棄することに‥ やはり「ファルスタッフ」に勝るオペラ・ブッファはあり得ないというのが2人の出した結論だったのです。

この作品ですが、その昔、日本で制作された森繁久弥が出ていた社長シリーズの映画みたいなドタバタ劇ですね。テンポも速く、ミュージカルのようなオペラです。ただし、曲は現代曲なので、Feriは全く乗れませんでした。そのため、コミカルな演技なのですが、曲のリズムのため、なぜか深刻な感じがします。

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さらに、いわゆる「聴かせるアリア」がないので、舞台上のお芝居を観て楽しむ‥という感じの変わったオペラでした。明るいきれいな舞台なので、ミュージカル仕立てにしたら面白い舞台になるかもしれません。また、現代音楽がお好きな皆さんには、楽しめる作品だと思います。

ただ、出演者が多いことも関係しているのか、「Onkel Präsident」は上演回数が極端に少なく、10月27日が千秋楽となっています。

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