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February 02, 2015

産業遺産保存に対する考え方の違い

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横浜に住んでいる友人から「氷川丸と日本丸 老朽化進み保存に課題をかかえている」というメールが来ました。

氷川丸(左写真の船です)は日本郵船、日本丸は横浜市が、それぞれ所有して維持管理にあたっていますが、氷川丸は1961年、日本丸は1998年を最後に、大規模修繕を行っていないそうです。要するに自治体、企業とも修繕に必要な資金を調達できないというのが実態でしょう。

この話を聞いて思い出したのが、ヨーロッパではファンドを立ち上げて産業遺産などを保存する方法です。これは、国や自治体、企業に依存することなく、自分たちで保存や維持に必要な資金を、賛同者から集めるというものです。

最も盛んなのはイギリスで、蒸気機関車や航空機などの保存に当たってファンドを立ち上げて、広く支援者や愛好家から資金を集めて、運営費用に充てているようです。

オーストリアでも、イギリスほどではありませんが、ファンドを立ち上げて狭軌鉄道の蒸気機関車を保存している例があります。

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右の写真はSalzkammergut-Lokalbahnの蒸気機関車12号機を保存するためのファンドに関する紹介で、Raiffeisenbank Mondseelandが幹事会社になっています。ちなみにRaiffeisenbankは日本のJAバンクのような組織で、地方の農村地帯ではよく支店を見かけます。

Salzkammergut-Lokalbahnの蒸気機関車12号機は、1906年に製造されましたが、同鉄道廃止後、シュタイヤマルク州営鉄道を経て、ドイツへ売却されてしまいました。

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1997年、Salzkammergut-Lokalbahnが廃止されて40年になることを記念し、この機関車を再びオーストリアに呼び戻し、動態保存しようというプロジェクトが立ち上がりました。

当然、動態保存を行うためには、機関車の大規模な修繕が必要になるため、資金が必要です(150万シリングが必要だったと言われています)。そこで、ファンドが活用されたわけです。

ちなみにファンドの株券には、Salzkammergut-Lokalbahn12号機が現役だった頃の写真があしらわれています。一口500シリングだったようです。

実際、オーストリアに搬入直前の写真を書籍で見たことがありますが、廃車体のようにボロボロでした。

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最終的にプロジェクトに資金が集まり、2005年8月、Salzkammergut-Lokalbahn12号機の修繕が完了しました。同機はFeriが毎夏、訪れるLungauにある保存鉄道Taurachbahnに配属され、Club760の手で、夏の間、運転が行われています。

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資金提供だけでなく、技術や労力の提供を通じて、「自分も保存の一翼を担っている」ということに趣味人としての誇りを持っている人もいるような気がします。

実際、2014年に参加したドイツの蒸気機関車フェスティバルでは、子供さんの姿はほとんど見ませんでした(ご家族で参加している人はいましたが‥)。特に沿線で撮影している人は、大人ばかりで、秩序ある行動に驚かされました。

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日本では、撮影場所で、誤って前に出てしまうと罵声が飛び交うこともありますが、そんな光景は全くありません。これは博物館での有料撮影会でも同様でした。

中には、参加費を払いながら、写真を撮らずに蒸気機関車を見ながら、ビアを飲んでいるグループもいらっしゃいました。ターゲットの写真は撮ることだけが目的化している人が多い日本とは大きな違いです。

日本でもナショナルトラストという組織が鉄道車両の保存活動を行っていますが、思うように資金調達ができないようです。日本では、産業遺産の保存は国や自治体、もしくは企業が行うものという考え方が一般的になっているため、どうしても企業や組織の財政状態が直接影響してしまうようです。

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実はオーストリアでも、ÖBBがイニシアティブをとっているウィーン近郊のシュトラスホフにある鉄道博物館は、資金的な問題があり、鉄道開通150年当時、大量の車両を集めたものの、その後は動態保存で苦労しています。これも、ある意味、企業依存の限界と言えるかもしれません(この件については、後日、改めてご紹介したいと思っています)。

以前、日本の友人が「日本人は、口は出すけれども、カネは出さないからねぇ。自動車で撮影に来て、被写体の鉄道を利用しない人も多いし‥」と言っていましたが、当たらずとも遠からず‥という気がします。

写真の飛行機はイギリス空軍が運用していたアブロ・バルカン爆撃機で、1984年の現役引退後、「Vulcan to the Sky」というプロジェクトが立ち上がげ、ファンドを組んで資金を調達し、何と2007年に再飛行を果たしています。恐るべし、イギリス人。

ちなみに友人の話によると、冒頭にご紹介した横浜の船舶については、国の重要文化財指定を受けて、補助金の獲得を目指しているそうです。ファンドを立ち上げて、民間から資金を調達するという発想にならないのは、経済大国の日本としてはちょっと残念ですね。

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Comments

現在、日本で進められている“「零戦里帰りプロジェクト」のクラウドファンディングによる募金集めが、2015年2月2日11時ごろ目標の2,000万円を突破した”そうです。

日本でも徐々に、自治体や企業だけに頼るのではなく、自主的な資金集めが広がるかもしれません。

Posted by: Feri | February 02, 2015 at 12:38 PM

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