« “日本人が大好き?”なランキング雑感 | Main | 不思議な「こいのぼり」 »

May 11, 2015

「オーストリリアワインスキャンダル」をご存じですか?

Img_2014_10_7544_001

ウィーンも良い季節になりました。シャニガルテンで快適な一時を過ごすことができる時期が待ち遠しかったですね。
今日は「ワインの話題」をお届けしましょう。当ブログにコメントをお寄せ頂けるKino_Sanさまは、専門家なので、笑われてしまうかもしれませんが‥

先日、友人と話をしている時、“日本でも最近は南米産のワインが増えてきた”という話題になりました。確かに南米産のワインは、お値段も手頃で、スーパーマーケットの酒売場などでも結構、並んでいるようですね。

南米のワイン造りは、フランスなどの本場から技術者を招いて、指導を受けてきたそうなので、品質も高くなっているのでしょう。

ところで、その時、話題になったのは“ところで、南米の国は日常的にワインを楽しむ習慣はあるのかな?”ということです。

もちろん、ワインはポピュラーな飲み物ですから、それなりの需要はあると思いますが、ヨーロッパのように日常生活に溶け込んでいることはないと思います。

Img_2014_09_7197_001

ある意味、国内需要より、輸出による外貨獲得を目的とした商品だと思います。逆に日常的にワインを楽しむ生活が普通のヨーロッパでは、輸出と同時に、国内やEU内も大きなマーケットとして捉えていると思います。

そう言えば、依然、友人が参加したオーストリア・サインセミナーで、“オーストリアでは、自分たちが飲みたいワインを作っている”といった趣旨の話があったそうですが、考えてみるともっともな話です。

ところで、若い皆さんは、ご存じないかもしれませんが、オーストリアワインを語る上で、避けて通れないのが、今から30年前に起きた「オーストリアワインスキャンダル」です。

当時、日本でもマスコミが大きく取り上げたので、50代以上の方は覚えている話題かもしれません。

Img_2014_04_1902_001

1985年に発覚したワインスキャンダルとは、安いワインに、人為的に自動車のラジエーター用不凍液(ジエチレングリコール 、diethylene glycol)を混入させて、コクとうま味を出して、市場では高額で販売していたというものです。

ジエチレングリコールは毒性があり、経口摂取すると、最悪の場合、死にいたる危険性があります。

事の発端は、1985年にオーストリアから西ドイツに輸出された白ワインにジエチレングリコールが混入されていることが発覚し、問題になりました。

その後、日本にもジエチレングリコールが混入している可能性があるオーストリアワインが輸入されていることが発覚し、大変な騒ぎになりました。

日本の場合、問題は複雑で、ボトルワインだけでなく、日本のメーカーが原材料として輸入していたオーストリア産のバルクワインにジエチレングリコールが混入していたことです。

Img_2014_05_4062_001

当時、高額で販売されていた「国産貴腐ワイン」のほとんどは、バルク輸入されたワインを国内で瓶詰めしただけということも明らかになってしまいました。

ちなみにバルク輸入とは、ワインをボトルではなく、150リットル以上の容器で輸入することで、国産ワインのブレンド用として多く使用されています。

ワインスキャンダルは、バルクワイン価格の大幅な下落に加えて、オーストリアワインの輸出消滅という大変な事態に発展します。

1985年当時、Feriは、すでにオーストリアへ旅行していたので、この話題は、正直、ショックでした。また、今でも覚えているのは、ワインスキャンダルが発覚するまで、日本国内でも、大手洋酒メーカー経由でオーストリアワインが多数販売されていました。

Img_2014_09_5963_001

今ではFeriがお気に入りの白ワインであるGRÜNER VELTLINERを瓶詰めした「ヨハンシュトラウスワイン」というのも某大手洋酒メーカーから販売されていましたね。

「食の安全が脅かされている」今だったら、恐らくもっと大騒ぎになったと思いますが、一部のマスコミに「毒入りワイン事件」などと報じられては、日本市場からオーストリアワインが姿を消したのはやむを得ないところでしょう。

転んでもただでは起きないオーストリア。「その後の動き」は見事でした。ワインスキャンダルを受けて、オーストリアでは、1年の内に、世界で最も厳しいワイン法を施行しました。

もちろん、法律の施行だけでは、根本的な問題は解決できません。実際にワイン造りに従事する皆さんの意識改革も重要だったことでしょう。

Img_2014_04_1953_001

オーストリアが選んだ道は、いわば「原点回帰」。「自分たちが飲みたくなるようなワインを作る」というものです。従来の醸造所に加えて、高い理念を掲げた若手も参入し、品質の高いワインが作られるようになりました。

ただ、逆に大量生産という発想がなくなったようで、ワインの輸出を一大産業としている国とは、一線を画すようになったと思います。

そして、ワインスキャンダルの翌年、1986年には、オーストリアワインマーケティング協会が設立され、オーストリアワインのイメージ向上と販売促進に力を入れるようになりました。

ちなみに、オーストリアワインマーケティング協会のセミナーでも、「ワインスキャンダル」は無かったことにしている訳ではありません。「あの忌まわしい事件」を忘れずに、ワイン造りの原点に立脚して、高品質のワインを提供していこうという姿勢が感じられます。

このような関係者の努力により、オーストリアワインは、「奇跡的な復活をした」と言われています。お客さまの信用は一瞬で失いますが、快復するまでには多大の努力と時間を要すると言われていますが、オーストリアワインは信用を快復するまでに四半世紀、かかったことになります。

Img_2014_09_6684_001

さて、ワインスキャンダル発生後、日本では、オーストリアワインはボトルワインの輸入中心となったこともあり、オーストリアワインは酒販店の店頭ではほとんど見かけなくなりました。

最も、最近では通信販売という便利な流通経路が確立したので、以前よりは入手しやすくなっているようですが‥

ところで、ワインスキャンダルが発生した1985年、Feriはホイリゲに入り浸るような「怠惰な生活 ただれた生活」は送っていませんでしたので、当時、ホイリゲがどんな雰囲気になっていたのかは知る由もありません。

しかし、逆に「まじめにワインを手作りしていたホイリゲ」には、とんだとばっちりだったことでしょう。もっとも、常連さんが集う「作り手の顔が見えるホイリゲ」では、ワインスキャンダルは関係なかったかもしれません。

ワインスキャンダルから30年。今では、この事件を覚えている人も少なくなっているかもしれません。やはり食品の場合、生産者自身が食べたくなる、飲みたくなるような製品を作るというのが、国を問わず原点だと思う今日この頃です。

なお、今回、掲載した写真はワインスキャンダルとは、一切関係はありません。

※「人気ブログランキング」に登録しています。この記事がお気に召しましたら、下記のバナーをクリックしていただくとFeriの励みになります

H_banner

ホイリゲ |

« “日本人が大好き?”なランキング雑感 | Main | 不思議な「こいのぼり」 »

Comments

こんにちは
呼ばれちゃったので出て参りました。
幾つか補足しなければなりませんが、先ずはワインスキャンダルですね。
あれはどう言う理由かオーストリアだけが悪者にされた、とても不可思議な事件でした。オーストリアのワイン関係者もとても悔しい思いをしたのではないでしょうか。それ故に世界で最も厳しいワイン法を作ったのだと思います。それはEUのワイン法の元のもなっています。
あれはオーストリアだけのスキャンダルではありませんでした。ドイツでもブレンドワインにジエチレングリコールが入れられていましたし、イタリアではメチルアルコールを入れていたため死者も出ています。
が、何故かオーストリアだけの事件となって歴史に残ってしまいました。
国ごとのマスコミ対策やドイツの場合は「オーストリアから輸入した原酒にジエチレングリコールが入っていた。」としっかりオーストリアを悪者にしちゃったみたいです。(実際はドイツ産だけのワインにも含まれたいた物があるようです。)

でも、スキャンダルを真摯に受け止め、他の国がいろいろな物をいっぱいワインに加えている時代から、一切の添加物を禁止、加糖さえ許さなかったオーストリアのワイン法は素晴らしいと思います。
それが現在のオーストリアワインの品質の高さにもつながっていると思います。

Posted by: Kino_San | May 11, 2015 06:21

怒られちゃいそうですが、次はチリワインとの比較の話です。
オーストリアワインとチリワインの価格の違いは地形と場所(位置)です。多少は物価もあるとは思いますが、それ程大きな影響はないでしょう。
その前に、南米でもチリはワイン栽培に非常に適した気候の国で、かなり昔からワイン栽培が行われていました。また、スペイン文化の影響が大きいので日本よりはヨーロッパに近い位ワインは日常的な飲み物だと思います。

まず地形です。
Feriさんに説明する必要はないと思いますが、オーストリアの葡萄畑はかなり条件の厳しい場所にありますよね。ワッハウなんて日本の千枚田ばりの段々畑です。従って、殆ど機械化出来ません。と、ワイナリーの方針により手摘みとか、機械化していない部分もあります。
チリの葡萄畑はほぼ平坦です。で、ほとんど機械化できます。人手はあまり必要ありません。
圧倒的にチリの方が生産コストが低くすみます。

次に場所です。
地球の裏側のチリは日本人の感覚では非常に遠い国のように感じますが、実は日本とチリの間に障害物はありません。輸送の時間もかかりません。米国の東海岸で2週間ですから、チリでも1月かからないと思います。
オーストリアは内陸国です。ウィーンで荷積みされた定温コンテナはドナウ河を遡り、北ドイツのハンブルグで貨物船に載せ替えられます。そして地中海を経由して2月かけて日本に届けられます。その輸送コストはチリの数倍になると思います。(倍ではすまない)

オーストリアは船で行くにはなかなか遠い国ですね。

Posted by: Kino_San | May 11, 2015 09:08

もう止めた方がいいのですが、最後にホイリゲとワインスキャンダルについて
私も1989年以降のホイリゲしか知りませんが、ホイリゲへの打撃はウィーン等の観光客向けの店舗に限られたようです。
地方のホイリゲは元々地元客、おなじみさん中心なので、ホイリゲへの信頼が強かったのだと思います。その農家で育てた葡萄をその農家で醸造しているのですから、生産者の顔がしっかり見えています。

それでも、ホイリゲ農家の人は気にかけてはいました。
1989年の夏にホスト・ファミリーに同じホイリゲへ毎日のように連れて行ってもらっていました。そのホイリゲのご主人が何回目かの夜に私にワインスキャンダルの事を知っているか聞いてきました。話の詳細は覚えていませんが、「一部の儲け主義のワイナリーの為に自分達は苦労させられている。でも、自分のワインは大丈夫だ。」そんな事を話してくれたと思います。
その時は周りの客達もここのワインは大丈夫と口々に話してくれました。
ホイリゲは生産者と消費者が近いので信頼関係も厚いと感じました。

それも私がホイリゲを好きになった理由の一つです。

長々と申し訳ありませんでした。

Posted by: Kino_San | May 11, 2015 09:42

Kino_Sanさま、およびだてして、申し訳ございません。

1985年当時、私はオースオトリアへは旅行していたものの、ワインについては全くの門外漢でしたので、背景も含めて詳細にご説明いただき、ありがとうございました。

私自身、改めて勉強になりました。これからもよろしくお願いいたします。

Posted by: Feri | May 12, 2015 08:22

ドイツのジエチレングリコールはオーストリアワインをブレンドしたために混入したものだし、イタリアワインの件はマフィアが行ったものであって、生産者が組織的に政府機関を巻き込んで混入事件起こしたオーストリアとは悪質度が違うと思うんだがなあ。

Posted by: | January 29, 2018 02:03

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« “日本人が大好き?”なランキング雑感 | Main | 不思議な「こいのぼり」 »