フォルクスオーパー「Der Mann von La Mancha(ラ・マンチャの男)」
日本では、2016年5月のフォルクスオーパー来日公演のチケット販売が始まったようですが、オペレッタファンの皆さま、すでにお買い求めになりましたでしょうか。
まあ、チケットが売れても、売れなくてもフォルクスオーパーには関係がありませんが、「日本のファンの力」で盛り上げたいものです。
さて、今日は久しぶりにフォルクスオーパーの「ミュージカルの話題」をお届けしましょう。
2015/16シーズンはオペレッタに力を入れてくれたフォルクスオーパーですが、ミュージカルでも魅力的なプログラムが並んでいます。
その一つが、11月にプルミエが行われた「ラ・マンチャの男」です。何と言ってもドン・キホーテにRobert Meyerさんが起用されていますから、“最初から成功間違いなし”といった感じのプロダクションです。
日本では、「ラ・マンチャの男」と言えば、松本幸四郎さんが出演するプロダクションが有名ですね。Feriは、観たことはありませんが… 松本幸四郎さんは歌舞伎役者ですから、ある意味、オペレッタ歌手とも相通じるものがあります。
一方、ダイレクターのRobert Meyerさんは、良くも悪くも個性が強い「キャラが立っている役者さん」です。という訳で、仕事も一段落したので、年内最終公演に顔を出してきました。今回の演出は、Olivier Tambosiさんが担当しています。
そう言えば12月はオペレッタのプルミエはありませんね。恐らくはっぱさんがご注目しているのがバレエ「Die Schneekönigin」のプルミエ。Feriのブログでは、恐らく取り上げないと思います(要するに観に行く予定がない…ということです)。
12月6日の指揮は、Lorenz C. Aichnerさん。この方、オペレッタ「白馬亭にて」や、ミュージカル「オズの魔法使い」なども振っている若手。ただ、今回は最も奥に陣取っていたので、指揮ぶりは見えず。
当日の主なキャストは、以下のとおりです。
-Don Quixote(Cervantes、セルバンデス/ドン・キホーテ):Robert Meyerさん
-Sancho (Gehilfe、従者サンチョ):Boris Pfeiferさん
-Aldonza(アルドンサ):Patricia Nessyさん
-Dr. Carrasco(Duke、カラスコ):Christian Dolezalさん
-Der Padre:Mehrzad Montazeriさん
-Antonia(アントニア):Martina Dorakさん
-Der Gastwirt(宿屋の主人、牢名主):Christian Grafさん
-Maria, Frau des Gastwirts(マリア、宿屋の主人の妻):Susanne Litschauerさん
-Die Haushälterin(家政婦):Wolfgang Gratschmaierさん
-Der Barbier(床屋):Thomas Sigwaldさん
-Gefangene(囚人):Rita Sereinigさん
-Gefangene(囚人):Lynsey Thurgarさん
-Jose, Gefangener(ホセ、囚人):Oliver Lieblさん
-Pedro, Gefangener(ペドロ、囚人):Thomas Huberさん
-Juan, Gefangener(囚人):Roman Martinさん
-Tenorio, Gefangener(囚人):Christian Schleinzerさん
-Paco, Gefangener(囚人):Stefan Bischoffさん
-Anselmo, Gefangener(囚人):Jeffrey Treganzaさん
-Gitarrist(ギタリスト):Jonathan Bolívarさん
-Stimme des Hauptmanns:Peter Matićさん(声の出演)
しかし、Thomas SigwaldさんやMehrzad Montazeriさんをはじめ、オペレッタで活躍できる歌役者さんを引っ張り出してきて、正にやりたい放題という感じのキャスティングですね。そう言えば、お二人ともオペレッタのご出演はご無沙汰ですね。
まず、客席に入って驚いたのは、通常のオーケストラピットを塞いでしまい、そこを舞台としている点です。本作品は、上演時間が1時間45分と身近く、休憩も設定されていないため、最初から緞帳と防火壁が上がっています。
気になるオーケストラですが、舞台奥に陣取っているようです。そのため、指揮者の位置も通常とは逆で、一番奥におり、モニターで舞台の様子を見ながら指揮をしているようでした。
舞台上の大道具は事実上なく、「銀色の箱」が小道具の代表。あとは場面に合わせた小道具が出てくる程度。唯一大道具と言えるのは、セルバンテスと従者が監獄へ入ってくる階段くらいです。この階段は伸び縮み式になっており、セルバンテス一行が監獄へ入ると、上に引き上げられてしまいます。
なお、日本の公演情報を見ると、日本で上演されている作品も、似たような感じの舞台装置らしいですね。事実上、舞台装置がないため、歌役者さんのお芝居が目立つこと。正に「芝居勝負の舞台」という感じでした。
Feriは、オリジナルの演出を知らないので、何とも言えませんが、ほぼ基本に忠実な舞台だったようです。舞台は中世のスペイン。劇作家ミゲルデ・セルバンテスはカトリック教会を冒涜したという疑いで逮捕され、投獄されます。
牢獄で盗賊や人殺しといった個性的な囚人たちに、所持品を身ぐるみはがされそうになったセルバンテスは、自分の脚本を守るために「ドン・キホーテ」の物語を牢獄内で演じて、囚人たちを即興劇に巻き込んでいくという内容なので、基本は牢獄の中。
しかし、途中から劇中劇になるため、囚人は劇中劇の登場人物に変身します。有名なドン・キホーテが風車に向かって突進する場面は、Robert Meyerさんが槍を持って舞台上から客席通路に乱入。一気に客席後方前走り出すという演出でした。
歌の部分に関しては、ワイヤレスマイクのアシストもあるので、大きな問題はありませんでした。また、「ラ・マンチャの男」では有名な曲の「見果てぬ夢」は、なかなか聴かせます。
セルバンテスに起用されているダイレクターのRobert Meyerさんは、良くも悪くも個性が強い「キャラが立っている役者さん」。正に、“MeyerさんのMeyerさんによるMeyerさんのための舞台”といったプロダクションでした。
お客さまも、Robert Meyerさんのお芝居を期待している側面が強く、カーテンコールでも盛大な拍手が送られていた。また、作家のメイクと、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャのメイクが大きく異なるのが興味深いところです。また、劇中劇で、ドン・キホーテが臨終を迎える場面のお芝居は出色でした。さすがMeyerさん。
ところで、1994年のプロダクションではRobert Meyerさんが、別の役で登場していたようです。今回は念願叶ってタイトルロール…という訳です。
カーテンコールで拍手が多かったのは、Robert Meyerさん意外では、Thomas Sigwaldさん、Mehrzad Montazeriさん、Patricia Nessyさんといったところだろうか。まぁ、妥当なところでしょう。
10月17日のプルミエから、年内に10公演。かなり気合いの入ったスケジュールです。年明けにも公演が予定されているので、Meyerさん節をお聴きになりたい方は、是非、劇場へ足を運んでください。
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Comments
Feriさん、こんにちは
フォルクスオーパーで「ラ・マンチャの男」楽しそうですね!
ウィーンに行くのは春に年1回と自制していますが、
プログラムを見ると、(冬がベストかな?)と年2回の誘惑が、すぐそこに!
来年5月の日本公演ですが、今日=12/9現在でも、5/19=「こうもり」だけですが、E席、F席が売れ残っています。
こんな状況だと、S席、A席が本当に埋まるのでしょうか?
とても心配です。
Posted by: ぷいい | December 09, 2015 02:32
Feriさん こんばんは
今夏大阪のシアターブラバで、松本幸四郎さんの「ラ・マンチャの男」観ました。舞台装置はフォルクスオーパーほど簡素ではなかったです。幸四郎さんの「見果てぬ夢」も聞かせてくれましたが、Robert Meyerさんのもよかったのでしょうね!!
フォルクスオーパでは、レパートリーのマイフェアレディー観たことありますが、英語や日本語で観たことのあるミュージカルをドイツ語で聞くのも楽しいですね。
Posted by: Hunger | December 09, 2015 09:57
Hungerさま、コメント、ありがとうございます。
フォルクスオーパーのミュージカルは、オペレッタに比べると舞台装置が立派なケースが多いのですが、今回は珍しいパターンでしたね。
Posted by: Feri | December 09, 2015 10:10
ぷいいさま、コメント、ありがとうございます。
来日公演のチケット販売については、日本にお任せなので、恐らくこちらは余り気にしていないと思います。
ただ、2016年はネトレプコの来日などもあり、クラシックファンの皆さまも、どれを選ぶか迷っているような気がしますね。
Posted by: Feri | December 09, 2015 10:12