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January 27, 2016

オペレッタと歌舞伎

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今日は「オペレッタにまつわる話題」をお届けしましょう。

先日、ウィーンで友人と雑談をしたとき、話題に上ったのが“最近、フォルクスオーパーのオペレッタはお客さまが入らないねぇ”という内容です。

2015年9月からのシーズンでは、「白馬亭にて」が3ヵ月間で24回も上演されましたが、案の定、10月は極端にお客さまの入りが悪かったそうです。幸い、11月後半からは若干、持ち直しましたが、来シーズンが思いやられます。

また、Feriは好きなのですが、「メリーウィドウ」も、お客さまの入りが思わしくなく、それが上演回数に反映されているようだという話でした。

オペレッタの場合、平土間や2階の前部は、そこそこ埋まっていても、最上階のギャラリーはほとんど人が入っていないことが多いような気がします。

ところで、フォルクスオーパーにお出かけになった方はお感じになったと思いますが、オペレッタ公演では、客層がご年配の方に偏っているのも、実は大きな問題。

というのは、若い方が少ないということは、今は良いですが、将来は尻すぼみになることが明白だからです。最も冗談で、Feri達が元気な内だけ、オペレッタを続けてくれればいいや‥と友人と話していますが‥

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フォルクスオーパーでも、当然、この事実を踏まえて、子供さんの料金を下げる、各種割引を設定するといった施策を打っていますが、なかなか効果を上げていないようです。これには、ロベルト・マイヤーさんをはじめとする劇場幹部も頭が痛いことでしょう。

ところで、その時、日本の歌舞伎に話題が発展しました。ご存じのように、歌舞伎が誕生した当初は、オペレッタと同じく、庶民の娯楽でした。能が「武士階層を対象とした芸術」であったのとは対照的です。

ちょうどオペラが貴族の楽しみ、オペレッタが庶民の楽しみだったのと、良く似ているような気がします。

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Feriは、歌舞伎のファンではないので、日本の歌舞伎座での公演が、どの程度の稼働率なのかはわかりませんが、少なくともフォルクスオーパーのオペレッタよりもお客さまが入っているような気がします。

しかも、歌舞伎は、基本的に近代的な演出は少なく、伝統的な演出に沿って上演されている公演が中心です。

その理由として、友人が立てた仮説が、“歌舞伎役者がテレビドラマなどに出演していて、顔が売れていることが、観客動員の背景にあるのではないか”ということでした。

言われてみると、時代劇はもちろん、現代劇のテレビドラマや映画などにも、歌舞伎役者が結構、出演しています。

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そう考えると、若手・中堅の歌舞伎役者が、「本業の歌舞伎に出演する場合、“あの人が出ている歌舞伎をちょっと見てみようか”と考える若いファンが出てきても不思議ではありません。日本の場合、マスメディアの威力が動員を後押ししている可能性は十分考えられます。

一方、オーストリアでは、一部の役者はテレビ番組に出演しているケースはありますが、アンサンブルの歌手をテレビドラマなどで見るケースはほとんどありません。

その理由の一つは、アンサンブルがテレビに出演しない理由は良くわかりませんが、そのような番組が少ないという背景があるのかもしれません。何しろ、オーストリアのテレビで放送されているドラマは、ドイツで制作された作品が多いですから‥

かつて、日本オペレッタ協会の寺崎さんが、「オペレッタ歌手と歌舞伎役者は相通じるものがある」という見方をしていましたが、歌舞伎の場合、基本的に役者さんが世襲というのも大きいような気がします。

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親のファンだった方が、子供のデビューを楽しみにしているというケースもあるでしょう。そういう意味で、「お客さまを呼べる役者」が存在することが、動員の大きな要素になっている訳です。

その点、現在のフォルクスオーパーには、残念なことですが「お客さまを呼べる歌手」は、存在しません。

その結果、フォルクスオーパーの場合、面白いオペレッタでも、1回見れば十分‥という地元の人が多いようで、リピーターが極端に少なくなっているそうです。

最も日本の場合、1回見れば十分という人でも、人口の絶対数が多いですから、総人口が少ないウィーンやオーストリアは、日本に比べてハンデキャップがありますね。

しかし、「オペレッタでは人が呼べない」となると、演目をミュージカルに変更するという路線になりかねないので、オペレッタが好きなFeriとしては、何とかならないものかと思っています。

歌舞伎座は、松竹という純民間会社がやっている訳ですから、集客に向けて色々な工夫をしています。

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例えば、「歌舞伎美人」(かぶきびと)という歌舞伎公式ホームページには、初心者向けに「歌舞伎へ行こう」というコーナーが設けられており、初心者の不安解消などに努めています。

中には「知らない話だけどおもしろいのかな」といったコーナーもあり、「観劇を楽しむ第一歩はチラシにあり」という答えが用意してあるところなど、様々なメディアを活用して興味関心を高めようという姿勢が感じられます。

一方、フォルクスオーパーというか、こちらの場合、基本的にチラシは皆無ですし、こういった初心者向けの案内はなく、お客さまにおまかせといった感じがします。

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インターネットでチケットが買えるのは同じですが、さすが日本。細かい購入の手引が画面のハードコピー付きで紹介されています。

こちらの劇場は、ホームページも含めて、初心者向けのガイドが少なく、正直、一見さんには冷たい感じがしますがします。

もしかすると、このような劇場側の対応が、お客さま離れを招いているのかもしれませんが、これには文化的な背景も影響している可能性もあると思います。

本当は「お客さまとの集い」でロベルト・マイヤーさんに、その当たりの考え方を伺ってみたいところです。

ところで歌舞伎に関して、興味深い話題を目にしました。日本航空の機内誌「SKYWARD」2016年1月号に掲載されていた浅田次郎氏の連載「つばさよつばさ」に「高麗屋 in ラスベガス」というエッセイです。

内容は昨年、ラスベガスで行われた七代目市川染五郎主演の「鯉つかみ」公演の模様なのですが、浅田氏は50年以上の歌舞伎鑑賞歴をお持ちのベテランファン。歌舞伎に慣れ親しんだ「いきさつ」も書かれていました。

子供の頃、祖母に連れられて(しかも学校を休ませて)、歌舞伎に通ったことがきっかけらしいのですが、このエッセイの中に、こういった一文があります。是非、皆さまにもご紹介したいので、引用させていただきます。

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“外国人にはストーリーもセリフも理解できまい。だが、感動は等しく共有できるはずだ。なぜなら、八歳か九歳の私がそうであったからである。かつて私は、舞台の絢爛に心奪われ、役者たちの肉体の動きから理屈抜きに人間の「情」を汲みとって、少しも退屈することがなかった。すなわち歌舞伎は,教養や階層とはまったく関係なく、観る者に等しい感動を与えるのである。”

これは、実はFeriがオペレッタにはまった経緯と全く同じ感覚なのです。オペレッタ復活の鍵は、このあたりにあるような気がします。

つまり、小手先の演出でお客さまを喜ばせるのではなく、オペレッタ歌手のレベルを上げ、伝統的な豪華絢爛な舞台装置を使い、観る者に感動を与える公演を打ち続ける‥言わば「オペレッタの王道」ですが、これが実は復権の近道かもしれまえせん。

正直、今、フォルクスオーパーで上演されているオペレッタは、それなりに楽しいですが、自分の心を揺さぶる程の感動を体験できる公演は、極めて少なくなりました。とくに新演出初演では、その傾向が顕著です。

これでは、地元の若いお客さまは離れるのは、やむを得ないでしょう。地元の若い方や子供さんに強い感動を与える「本物」を、是非、上演してもらいたいと思っています。

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Comments

私は残念ながら《フォルクスオーパー》には、30数年前に一度だけ足を運んだ事しかありません。
演目は『フィガロの結婚』でした。
ホール全体の雰囲気は勿論、客席も華やかで、ウィーンの方々にとって、日本での歌舞伎座と同じ様な場所なのだろう、と思った記憶があります。
プログラムの冊子もお洒落で、出演者の衣装のイラストがあったり、舞台上で使われている壁紙と同じ模様がプリントされた紙が薄紙を重ねて挟み込まれていたり✨
今でも同じでしょうか⁉
歌舞伎は確かに学校で課外事業で鑑賞した経験もありますし、新聞販売店、その他、招待される機会も時々あります。
Feriさんのご指摘の様に、役者が現代劇、映画、テレビドラマに出演する事もあります。
最近はテレビのバラエティ番組にも出演し、blogも人気があり、観客動員に一役かっている様です🎵
折角素晴らしい《場所》が有るのですから、衰退してほしくはないです。
観光客(私を含めて😅)も、コンサートやオペラだけではなく、オペレッタにも注目したいですね🎵

Posted by: necchi | January 27, 2016 at 05:00 PM

necchi様、こんにちは。コメント、ありがとうございます。

フォルクスオーパーへのお客さまが減っている「もう一つの理由」は、娯楽の多様化だと思います。

昔は歌劇場や劇場くらいしか娯楽がなかったですから‥

オペレッタに関して言えば、私は「お客さまを呼べるオペレッタ歌手」がいなくなってしまったことが、最大の敗因だと思っています。

例えは良くないですが、オペレッタ界のネトレプコが出てくれば、状況は一変すると思います。

ただ、オペレッタの場合、単純に容姿が良くて歌がうまいだけではダメで、お芝居やダンスの素養も重要です。それ故に、育成するのに時間がかかります。

長期的な視点に立った劇場運営が必要な訳ですが、実際には「今日の利益」を確保しないと、後が無いので大変だと思います。

なお、一度、DirectorのRobert Mayerさんに聞いてみたいのは、「フォルクスオーパーとしてオペレッタの啓蒙活動をしないのか」ということです。

余談になりますが、国立歌劇場が高い稼働率を誇っているのは、ズバリ観光客が多いからですからね。これは良くも悪くもホーレンダー氏の功績と言って良いでしょう。

ただ、今はホーレンダー時代の遺産で食べているような感じなので、今後はわかりませんが‥

なお、フォルクスオーパーのプログラムは、現在ではバレエや子供向けの公演をのぞいてA6変形サイズに統一されています。内容は公演によって異なりますが、小型の割には色々な情報が入っています。

Posted by: Feri | January 28, 2016 at 03:34 PM

7年前の年末、フォルクスオーパーで「ヘンゼルとグレーテル」を観るためにウィーンへ行きました。冬休みに入ったその時期に日本ではどこでも上演しているところがなく、冗談半分で検索していたら、フォルクスオーパーでヒットしたので、思い切って行ってしまいました。
ついでに国立歌劇場で「運命の力」も観たのですが、私は「ヘンゼルとグレーテル」の方が感動的でした。また、小さな子供がたくさん親に連れられて鑑賞に来ていて、とてもお行儀よく目を輝かせてみていたのが印象的でした。幕間にオケピを覘いたりして親が説明していて、ウィーンの子供たちはこんなに小さい時から音楽を身近に楽しむ術を教わるんだなと感動したのを思い出しました。

Posted by: カスレ | February 12, 2016 at 10:48 PM

カスレさま、コメント、ありがとうございます。

「ヘンゼルとグレーテル」に関しては、このブログでも何回か取り上げていますが、子供向けのオペラであるにも関わらず、本格的な歌手を起用してちゃんとした作品に仕上げている点が特長です。

つまり、手を抜くどころが、気合いが入っている訳です。やはり小さいうちに本物を見せることが大切だろうと思います。

ただ、作品選びは重要ですが‥

Posted by: Feri | February 13, 2016 at 07:10 PM

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