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February 21, 2016

フォルクスオーパー「Der Kongress Tanzt」(会議は踊る)プルミエレポート(上)

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2月20日、ウィーンは昼間はひさしぶりの快晴に恵まれました。週末ということもあって、ウィーンの森周辺は散歩を楽しむ人達で賑わっていました。ただ、夜には予報にはなかった雨が降り出しましたが‥ 

さて、オペレッタ・ファンの皆さま、お待たせしました。

2015/16シーズンのフォルクスオーパーのオペレッタ、新作第2弾はDer Kongress Tanzt」(会議は踊る)です。

ご存じのように、この作品は普通のオペレッタと異なり、1931年にドイツで製作されたオペレッタ映画が元になっています。

通常、オペレッタ映画は、「白馬亭にて」のように、舞台版のオペレッタを映画仕立てにするケースが多いのですが、このケースは映画がオリジナルです。日本では1934年に上映されているそうです。

ところで、「会議は踊る」は、フォルクスオーパーより先に日本で舞台化されています。カンパニーは宝塚歌劇団。花組が1989年に上演していますが、Feriは観ていないので、どんな舞台だったのかは知る由もありません。

さて、このお話は、ナポレオン失客後の「ウィーン会議」が舞台ですが、本物の会議は1814年から1815年にかけて行われているので、200周年ということになります。考えましたね。

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本物のウィーン会議は、フランス革命とナポレオン戦争終結後のヨーロッパの秩序再建と領土分割を目的としたものです。

1792年より前の状態に戻すことを原則としたのですが、各国の利害が衝突して、数ヶ月を経ても遅々として進捗せず、本作品のタイトルにもつながる「会議は踊る、されど進まず」という名言が生まれた訳です。

だいたい各国の利害が絡み合う会議は、現在のTPPもそうだったようにタフネゴシエーターが必須で、時間がかかるのは常。

本作品でも描かれていますが、1815年3月、ナポレオンがエルバ島を脱出したとの報が入ると、危機感を抱いた各国の間で妥協が成立し、1815年6月にウィーン議定書が締結されました。

ただ、作品の方では、議定書締結の前にお開きになります。

制作陣ですが、演出はダイレクターのRobert Meyerさん、舞台装置はEva-Maria Schwenkelさん、衣装はGertrude Rindler-Schantlさん、振付はFlorian Hurlerさんです。

指揮はChristian Kolonovitsさんが起用されました。

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主なキャストは以下の通りです。

-Metternich(メッテルニヒ):Robert Meyerさん

-Pepi(ペピ、メッテルニヒの秘書):Michael Havlicekさん

-Christel, Inhaberin des Handschuhladens zur schönen Schäferin(手袋屋の娘クリステル):Anita Götzさん

-Zar Alexander von Rußland / Uralsky(ロシア皇帝アレクサンドル/替玉ウラルスキー):Boris Ederさん

-Bibikoff, Adjutant des Zaren(ビビコフ、皇帝の副官):Thomas Sigwaldさん

-Komtesse(伯爵婦人):Ildiko Babosさん

-Wellington(イギリス首席全権代理ウェリントン):Wolfgang Gratschmaierさん

-Talleyrand(タリィランド、フランス首席全権):Marco Di Sapiaさん

-König August von Sachsen(ザクセン皇帝アウグストゥス):Axel Herrigさん

-General von Piefke, Preußischer Gesandter(プロイセン特使):Bernd Birkhahnさん
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-Polnischer Gesandter(ポーランド特使):Franz Suhradaさん

-Schweizer Gesandter(スイス特使):Gernot Krannerさん

-Heurigensängerin(ホイリゲ歌手):Agnes Palmisanoさん

-Finanzminister(財務大臣):Nicolaus Haggさん

-Bürgermeister(市長):Fritz von Friedlさん

-Fürstin(侯爵夫人):Regula Rosinさん

-Gräfin(伯爵夫人):Renée Schüttengruberさん

-Vollzugsbeamter(執行官):Georg Wacksさん

フォルクスオーパーの新作オペレッタでは珍しく、ダブルキャストではなく、シングルキャストです。そのため、セカンドクルーは存在しません。もちろん、カバーは用意しているとは思いますが‥

では、まず、総評から‥それでも長いのですが‥

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○「限りなくミュージカルに近いオペレッタ」
結論から申し上げると、「限りなくミュージカルに近いオペレッタ」と言うことができます。というのは、楽器編成がミュージカルとほぼ同じで、金管楽器が多く、バンジョーも配置されています。また、指揮者の前にはグランドピアノ、右側にはドラムセットが用意されていました。

当然、金管楽器はミュートを装着して演奏する場面もあります。これはフォルクスオーパーのミュージカルでよく見られるパターンです。また、鍵盤付きグロッケンシュピール(チェレスタかもしれませんが‥)も配置されており、場面転換で使用されます。

びっくりしたのは、指揮者を含めて男性奏者は、ビッグバンドジャズの楽団のように白いジャケットを着ていることです。女性奏者は黒の服でしたが‥この衣装だけでも、作品の性格がわかります。

ところで、このジャケット、揃っていたので新調したのだと思うのですが、この費用を他のところに使った方が良かった気がします。何か、本末転倒‥という気がしますね。

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○場面転換が多い演出
オリジナルが映画なので、場面転換が多く、これをどのように料理するかがポイント。通常、フォルクスオーパーの場合、場面転換が多い作品の場合、「吊し物で対処する」、「回り舞台を活用する」という二つのパターンがあります。

「白馬亭にて」は前者、「パリの生活」は後者ですが、今回は「回り舞台を活用する」演出で対処していました。

また、回り舞台がレコードの形になっているのがミソ。これは映画版へのオマージュでしょうね。ただ、背景は一切変わらず、照明と画像投影で変化を付けています。

つまり、実質、各場はイスやベッド、テーブルといった道具で対応している訳です。これには、正直、驚きました。舞台装置の経費は安くできそうですが‥

場面転換が多いため、テンポが良いのは評価できるのですが、反面、じっくりと魅せる場が少ない点がちょっと残念です。

なお、場面転換は、暗転で行われ、その際、鍵盤付きグロッケンシュピールの伴奏が入ります。

オリジナルの映画は95分だそうですが、本作品は休憩時間を除くと2時間20分ほど。当然、その分、どこかで水増ししている訳です。

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「娯楽委員会」の場面などが、水増しした箇所かもしれません。正直、「娯楽委員会」のシーンは余計だと思います。

楽しいオペレッタに仕上がっているのは事実ですが、もっと舞台版を意識して、場を少なくし、かつ長めに設定した演出の方が、魅力的なオペレッタに仕上がったような気がします。

映画という下敷きはありますが、事実上の「創作オペレッタ」なのですから、思い切った脚本の変更をすべきだったと思います。これ、日本で漫画を原作とした実写版映画が失敗するパターンに似ていますね。

○乗りの良い編曲と振付
事実上のミュージカルなので、楽曲の中にはアメリカナイズされている作品もあります。そのため、全体的に「乗りが良い」感じの編曲になっています。

また、バレエの振付も、オーソドックスなクラシックバレエより、モダンなものになっています。

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「会議は踊る」の映画をリアルタイムで観た方からすると、奇異に感じるかもしれませんが、21世紀に上演することを考えると、今の感覚に合わせた構成は評価されるかもしれません。

今シーズンにプルミエを行った「白馬亭にて」と一脈通じる仕上がりになっています。全体的にテンポが良く、楽しい仕上がりになっていると言って良いでしょう。

○お芝居と歌が十分融合していない
通常のオペレッタでは、お芝居の流れの中から、自然に重唱やアリアに移るのが一般的ですが、本作品では「お芝居中心の場」、「歌中心の場」、「踊り中心の場」と、場毎に内容がある程度、決まっているような感じでした。

これは最初から作曲家がつくり上げたオペレッタではないので、やむを得ないことですが、映画版を下敷きにしているため、映画の「カット割り」に影響されている気がします。また、全体的にお芝居の場面が多い展開になっています。

このあたりは、オリジナルが映画なのでやむを得ない部分だろうと思います。

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○きれいな舞台と衣装
簡素な舞台装置ですが、基本的にオペレッタらしい明るい舞台です。また、衣装についても各国代表が、その国をイメージしたコスチュームを着用するなど、なかなか工夫されています。

また、その他の出演者の衣装も、当時の姿を再現しており、その点については、オペレッタらしい仕上がりと言えるでしょう。なお、アレクサンドルの髪型は、事前に後悔されている広告写真とは異なり、かなり個性的です。

○出演者は多いが合唱団の出番はなし
珍しいのは、通常のオペレッタと異なり、合唱団の出番がないことでしょうか。各国首脳のソリストによる重唱場面は、設定されていますので、合唱が全くない訳ではありません。

合唱団の出番を省いた背景には、背景を固定した形で回り舞台を使っているため、舞台が意外と狭くなっていることも関係しているかもしれません。

最も「パリの生活」の場合は、同じような回り舞台を使った演出でしたが、合唱団が活躍する場面もあったので、やり方次第かもしれませんが‥

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また、最近のフォルクスオーパーでは、Kinderchor der Volksoper Wienに所属する子役を使うことが多いのですが、今回は子役の出番は全くありません。「大人の世界」です。

特に、本作品のハイライトである、クリステルがロシア皇帝アレクサンドルの招きを受けて、馬車で街の中を「ただ一度」を歌いながら進む場面は、合唱団を動員すれば、オペレッタらしい華やかな演出になったと思うだけに、極めて残念です。

なお、今回、「白馬亭にて」と同じく、全員がワイヤレスマイクを使っていました。これもミュージカルと同じです。

○救いのあるフィナーレ
2014/15シーズンにプルミエが行われた「パリの生活」は、後味の悪いフィナーレだったのですが、今回は、一工夫されていました。

しかし、クリステルは、これが永遠の別れになることを悟ります。フィナーレはホイリゲでのクリステルとアレクサンドルのデート場面。ここでの二人のやり取りは、泣かせます‥

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アレクサンドルが急きょ、祖国へ戻った後、1人になったクリステルが、“これは、ただ一度だけ、再び起こることはない美しすぎる夢‥”(Das gab’s nur einmal, das kommt nicht wieder, das war zu schön, um wahr zu sein!)を情感込めて歌います。

このままだと、哀しい幕切れになってしまうのですが、この様子を見ていたホイリゲ歌手がやってきて、明るい調子で「ただ一度だけ」を歌います。ホイリゲ歌手に元気づけられたクリステルは、二人で明るい調子で「ただ一度だけ」を歌いながら街へ戻っていくのでした。

やってきたのはクリステルが働いていた手袋屋。ところが、今は土産物屋になっており、ウィーン会議に参列した人達で商売繁盛。そこへペピもやってきて、クリステルもペピと新しい人生を歩み出す‥という明るい展開です。

これは非常に良い演出ですね。見終わった後、「辛いことがあっても、明日に向かった明るく歩みだそう」という気持ちになります。ホイリゲの場面で終わってしまったら、後味が悪くなったと思います。

「あらすじ」に沿った見どころのご紹介は、明日、お届けします。

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