オーストリアの大統領選挙雑感
今日は「大統領選挙の話題」をお伝えしましょう。
オーストリアでは、4月24日、社会民主党(SPÖ)出身のハインツ・フィッシャー現大統領大統領の後任を決める大統領選挙が行われました。
オーストリアでは、1950年から、国民による直接選挙で大統領が選ばれるようになりました。
憲法の規定で、大統領の任期は6年、2期までの再選が認められており、現大統領のハインツ・フィッシャー(Heinz Fischer)さんは、2004年の就任後、2期12年を勤め上げたので、任期満了ということになります。
日本は、大統領制ではありませんから、ピンときませんが、多くの人は大統領と聞くと、強大な権力を握るアメリカ大統領をイメージすると思います。
しかし、オーストリアの大統領は、実は名誉職で、政治的な権限は非常に限定されています。
そのため、本当かどうかは知りませんが、“誰が大統領になっても、オーストリアの政治に大きな影響はない”という声も聞かれます。
今回の大統領選挙に立候補したのは、以下の6名で、この中には、楽天のテレビコマーシャルに出演している「あの有名人」も入っていました。
-ルドルフ・フンドストルファー前社会大臣(Rudolf Hundstorfer、与党の社会民主党出身)
-アンドレアス・コール元議会議長(Andreas Khol、政権パートナーの国民党出身)
-ノルベルト・ホーファー第3国会議長(Norbert Hofer、自由党出身)
-アレキサンダー・バン・デ・ベレン元党首(Alexander Van Der Bellen、緑の党出身)
-イルムガルド・グリス元最高裁判所長官(Irmagrad Griss)
-リハルド・ルーグナー氏(RichardJLugner、楽天のコマーシャルにも出ている変わり者の実業家)
なお、オーストリアの大統領選挙は、第1回投票で過半数を獲得できる候補者がでなかった場合、上位2名の候補者による決選投票(5月22日実施予定)が行われる規定になっています。
選挙前、例の難民問題で、政権与党への批判が高まっており、野党候補が上位に入るのではないかと言われていました。
仮に政権与党出身の候補者が決選投票に残らない事態になれば、いくら大統領が名誉職だと言っても、国民が現政権の運営にノーを突きつけた形になりますから、政権運営や与党幹部の責任問題に発展するのでは‥という訳です。
まぁ、選挙権もないし、国籍も日本のFeriには全く関係のない話ですが、どんな展開になるか興味はありますね(完全な野次馬モードです)。
実際、事前の世論調査では、難民受け入れで強硬姿勢を打ち出している自由党が擁立したホーファーさんの支持率が高かったようです。
ちなみに、過去の大統領選挙で、与党候補者が第1回選挙で敗れたことはなかったそうです(つまり、決選投票にまではコマを進めたという訳です)。
さて、気になる結果ですが、事前の世論調査の結果どおり、自由党出身のホーファーさんが、36%の得票を獲得し、トップに立ちました。トップの写真は、党首と満面の笑みをたたえてマスコミの取材の応じるホーファーさんです。
時点は、20%の得票を獲得した緑の党出身のファン・デ・ベレンさん。連立与党の候補者フンドストルファーさんとコールさんは、投票率が10%程度に留まりました。という訳で、連立与党の候補者は、決選投票に進めない事態に‥
正直、難民問題で、現政権が迷走を続けたことに対して国民の不満が如実に現れた結果と言えるでしょう。
確かにオーストリアは、キリスト教の信徒が多いこともあり、友愛精神が広く普及しています。ただ、国民が個人的に難民支援に力を貸すのと、政府の難民政策とは一線を画すような気がします。
日本などでは、オーストリア自由党(FPÖ)を「極右」として紹介するケースが多いですが、現在では、自国民優先をスローガンに、国境管理の強化や厳格な法の執行といった現実的な政策を打ち出しています。
確かに税負担の高いオーストリアで、それが難民政策に使われるのは、正直、面白くない国民も多いことでしょう。
この結果を受けて、与党内でも幹部に対する責任問題が浮上するのではないか…と言われています。「オペレッタ国家」と揶揄されるオーストリアですが、これで、また政治が混乱しそうです。
余談ですが、こちらの新聞インターネット版では、州ごとの得票率も紹介されているのですが、伝統的に社会民主党が強いウィーンでも、緑の党出身のファン・デ・ベレンさんが一位、ホーファーさんが二位という結果になったことに、正直、Feriもちょっと驚いています。与党の政権運営に不満を持っている国民が、いかに多いかということでしょうね。
ちなみに、オーストリアでは、今まで社会民主党か、国民党が指示する人物が大統領を務めてきただけに、両党にとっては歴史的敗北(野党にとっては、歴史的勝利)と言えるでしょう。
そして、決選投票の5月22日まで、野党陣営による派手な選挙戦が繰り広げられることでしょう。とくに5月1日のメーデーは、盛り上がりそうです。
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