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May 14, 2016

直前情報 フォルクスオーパー来日公演の見どころ

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今日、5月14日から、9回目となるフォルクスオーパーの来日公演が始まります。最初の演目である「Die Csárdásfürstin(チャールダーシュの女王)」の模様については、明日、お伝えする予定です。

ただ、その前に、これからご覧になる皆さまに、「Feriの視点による見どころ」をご紹介しましょう。2012年の際は、3回に分けてご紹介しましたが、今回は1回にまとめてみました。

Feriは、招へい元のNBSやフォルクスオーパーからご招待を受けたこともありません。チケットの購入と観賞は、ウィーンも含めて総て自腹です。チケットもご覧のように、ちゃんとコンビニエンスストアで発券してもらいました。

そのため、いわゆる「大人の事情を踏まえた見どころ紹介」ではなく、一オペレッタファンとしての「見どころ紹介」です。Feriは、基本的に良い点については、広く皆さまに紹介しているつもりです。

反面、“これはちょっと‥”といったマイナス面については、表現は配慮していますが、遠慮はしません。

では、公演順に沿って、「見どころ」をご紹介しましょう。

○「Die Csárdásfürstin」(チャールダーシュの女王)
そもそも「邦題がおかしい」というご指摘があるのは承知しています。

確かに、この邦題だと「ハンガリーを代表するチャールダーシュの名歌手」というイメージになりますが、実際は、「街の人たちに愛される平民の歌手」といったイメージです。日本で言えば、地元で有名な演歌歌手といった趣でしょうか。

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フォルクスオーパーの来日公演で「Die Csárdásfürstin」が上演されたのは、1999年以来なので、日本でフォルクスオーパー版を観るのは始めて‥という方も多いかもしれません。

まず、演出は基本的に1999年に上演されたRobert Herzlさんの手によるものです。ただし、再演に際して一幕と三幕に手が入れられました。一幕はシルヴァとエドウィンの婚約記念パーティにバレエが加わりましたが、これは必然性があるので問題なし。

三幕はウィーンのグランドホテルのバーですが、ここにバレエソリストによるショーが加わりました。ただ、正直、これは余計。

なぜなら、上映時間の関係から、三幕の目玉である「ヤイ、ママン」のリフレインが大幅に省略されてしまったからです。このようにバレエが加わったのは、国立バレエ団として独立したことによる「大人の事情」であることは明白です。

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しかし、2015年の再演時、三幕冒頭のバレエソリストによるショーは省略され、「ヤイ、ママン」のリフレインが復活しました。これは「日本公演」を踏まえたテスト公演だったので、日本公演も間違えなく、このパターンで上演されると思います。

日本のファンは、「ヤイ、ママン」のリフレイン(繰り返し)を大いに期待していると思うので、その点はご安心ください。必ず「日本語版」も入りますから!!

ただ、リフレインの回数が、何回になるかは、当日のお楽しみ‥ そして、お客さまのノリ次第です。

さて、キャストですが、今回、表向きの目玉はシルヴァに起用されたゲストのAndrea Rostさんです。実際、NBSが発行しているニュースレターでも大々的に取り上げられています。

Feriも、Andrea Rostさんは好きな歌手の一人で、オペラ「リゴレット」のジルダなどは、ピッタリだと思っています。

が、シルヴァにピッタリかと言えば、申し訳ありませんが、首をかしげざるを得ません。それは、Feriがイメージするシルヴァと違うからです。確かにハンガリーのご出身ですから、ご自分なりのイメージはしっかり持っているようですが‥

実は、残念なことですが、現在、フォルクスオーパーのアンサンブルで、シルヴァにピッタリの歌役者は存在しません。そのように考えると客演もやむを得ないと思います。が、Andrea Rostさんが適役かと言えば、それは違うと思います。

1999年の来日公演では、Ilisabeth KalesさんとRegina Renzowaさんがシルヴァを務めましたが、比べるのが気の毒な気がします。日本では、もう一人のシルヴァ、Ursula Pfitznerさんは、あまり知られていませんが、意外と良いかもしれません。

なお、「Die Csárdásfürstin」と言えば、フェリバチの存在が重要。1999年では、ご存じSándor Némethさんが起用されていましたが、現在はウィーンでも出演されていません。

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2012年4月の「Sándor Némethさん70歳記念公演」が、現時点では最後。正直、この公演以降、フォルクスオーパーの「Die Csárdásfürstin」を観たくないという硬派のオペレッタファンも存在するくらいです。

今回は、Axel HerrigさんとKurt Schreibmayerさんが今日されますが、正直、Kurt Schreibmayerさん以外考えられません。

なお、直近になってレオポルト・マリア侯爵が、Wolfgang Hübschさんに変更になったようです。余談ですが、Robert Meyerさんが出演ないのは、この作品だけ。まぁ、適役がないですからね。

ところで、指揮はオペレッタ界の長老Rudolf Biblさんが起用されていますが、正直、お歳を召しているため、その意を汲んで、適確にオーケストラをリードするコンサートマスターのアシストが不可欠です。

その点、フォルクスオーパーのコンサートマスター(実際は女性なのですが‥)は、永年、Rudolf Biblさんと共演しているため、ツボを押さえているので安心。

指揮者とオーケストラの信頼関係が重要なのは、言うまでもありません。

○「Die Fledermaus」(こうもり)
正直、日本のオペラファンやオペレッタファンの皆さまの中には、“また、「こうもり」か‥ 何回も観たし、演出も同じらしいから、今回はパス”という方も多いような気がします。

確かに、現在の演出は通算上演回数400回を超える「偉大なるマンネリ」であることは事実です。しかし、あえてFeriは申し上げます。“フォルクスオーパーの「Die Fledermaus」こそ、ウィンナ・オペレッタの王道を行く作品である”と‥

その理由は、今回、上演される3作品の中で、演出、舞台装置(含む衣装)、出演者の三拍子が揃っているからです。

正直、今のフォルクスオーパーでオペレッタを上演する際、三拍子揃った‥というのは、なかなか難しいのですよ‥

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このブログでも何回か書いていますが、現在、フォルクスオーパーのオペレッタで出演者が固定されていない唯一のオペレッタが「Die Fledermaus」です。それだけに出演者の組み合わせによって、公演の雰囲気が大きく変わるという「オペレッタらしい」展開になっています。

当然、アンサンブル(専属歌手)中心のキャスティングなので、出演者同士も気心が知れており、状況に応じてお芝居や台詞にアドリブを入れてきます。

今回の三演目の中では、正直、最もフォルクスオーパーの強みが生きる作品であると言っても過言ではないでしょう。

また、指揮はAlfred Eschwéさんなので、演奏には期待が持てます。簡単に演奏しているように見えますが、ヨハン・シュトラウスのワルツには、独特の小節があり、Alfred Eschwéさんは、それを自然に再現してくれます。オーケストラメンバーとのコンビネーションもよく、その点でも安心です。

さて、出演者は、どの組み合わせでも面白いのですが、Feri一押しは、やはり巨漢の歌役者Jörg Schneiderさんのアイゼンシュタインです。

最近は他劇場でオペラへの出演が増えているJörg Schneiderさんですが、彼はオペレッタならではのユーモラスな演技をさせたら天下一品です。それに加えて、体格が良いため声量も十分で、歌もうまい。

巨漢を生かしたコミカルな演技が、ある意味、可愛らしいのです。アイゼンシュタインのイメージと違う‥とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、このユーモラスな演技は、彼なりのアイゼンシュタイン像を確立しています。

最もJörg Schneiderさんも、オペレッタの万能テノールという訳ではなく、向き、不向きがあります。最近、最もはまっていたのは「ヴェネチアの一夜」のカラメッロですね。

刑務所長フランクが気心の知れたKurt Schreibmayerさんなので、二人の掛け合いも大いに期待できます。

前回同様、お相手のロザリンデはMelba Ramosさんですが、正直、彼女はオペレッタよりもオペラ向きの歌手です。歌がうまく、お芝居も上手ですが、オペレッタに必要な「ある種のゆるさ」が弱い感じがしています。ただ、来日直前のテスト公演では、アンサンブルらしくJörg Schneiderさんとの息もピッタリ合っていました。

Jörg Schneiderさんとの共演は予定されていませんが、ロザリンデに関してはElisabeth Flechlさんの方が、良いかもしれません。

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アデーレは、3人の起用が予定されています。先日、「Der Bettelstudent(乞食学生)」のラウラで素晴らしい演技をみせたAnja-Nina Bahrmannさんは、2回出演予定。Rebecca Nelsenさん、Beate Ritterさんは、それぞれ1回出演予定です。それぞれ、自分の持ち味を前面に出したアデーレを演じてくれるので、本来は、その違いを楽しみたいのですが、個人的には予算が(以下、自粛)。

なお、ウィーンではイーダには個性的なKlaudia Nagyさんが起用されることが多いので、Martina Dorakさんのイーダは、日本公演向けのキャスティングです。Klaudia Nagyさんとは、ひと味違った「ちょっと上品なイーダ」をお楽しみください。

今回、招へい元としては、オルロフスキー公爵のAngelika Kirchschlagerさんを「最大の目玉」にしています。まぁ、日本での知名度も高いですから‥ 3公演に出演してもらうなど、力が入っていますね。

FeriもAngelika Kirchschlagerさんは、好きな歌手の一人ですが、正直、オルロフスキー公爵ならば、アンサンブルにも適任な歌手は沢山います。まぁ、日本公演スペシャルなので、恐らく皆さまの期待に応えてくれると思います。

弁護士ブリントでは、最近、オペレッタへの出演が増えているBoris Ederさんが楽しみです。テスト公演でも、良い味を出していました。

そして、劇場運営よりも自分が出演する方がお好きらしいRobert Meyerさんはフロッシュにご出演。Meyerさんの場合、どの役をやってもキャラが立っているため、Meyerさんのままなのですよね。

その点が、ちょっと残念ではありますが、サービス精神旺盛な方なので、きっと日本のファンを楽しませてくれることでしょう。

○「Die lustige Witwe」(メリーウィドウ)
今回の3演目の中で、比較的最近、演出が変わったのが「Die lustige Witwe」です。とは言っても、前回の来日でも、本演出による公演だったので、すでに前演出の日本公演をご存じないファンもいらっしゃるかもしれません。

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「Die Csárdásfürstin」、「Die Fledermaus」の2作品が、ウィンナ・オペレッタの伝統を継承しているのに対し、現在の「Die lustige Witwe」は、洗練された舞台になり、ウィーンらしい泥臭さはなくなりました。

その理由は、退廃的な伊達男ダニロにピッタリのオペレッタ歌手が存在しないため、今、出演可能な歌手に合わせて演出を変えたためであると言われています。まぁ、現実的な選択ではあります。

「Die Csárdásfürstin」、「Die Fledermaus」に比べて、舞台装置が抽象的になっているのも最近のフォルクスオーパーの傾向です。最も「Die lustige Witwe」の場合、多くの場面で背景にパリの景色が登場するので、その点だけは救いですが‥

このブログを長くご覧の皆さまはご存じのように、Feriが「オペレッタにはまった」きっかけを作った作品が「Die lustige Witwe」です。

はじめてウィーンのフォルクスオーパーで観た「Die lustige Witwe」は、前々演出版だったのが幸いでした。特に3幕で「天国と地獄のギャロップ」に合わせて、盛大に行われるカンカン。何度も繰り返されるリフレインの際、客席と一体になった盛り上がりを体感し、“世の中に、こんなに楽しい、かつ客席と一体になるクラシック系の舞台芸術が存在したのか!”と思ったものです。それ以来、オペレッタの虜になってしまった‥という訳です。

さらに「Die lustige Witwe」は、「Die Csárdásfürstin」、「Die Fledermaus」に比べ、様々なメロディーの楽曲が使われており、その点でも、聴いていて飽きることがありません。正にレハールの最高傑作と言っても過言ではないでしょう。

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それだけに、2004/05年の新演出を観たときのショックは、現地の新聞同様「Die lustige Witweのお葬式」という雰囲気でした。定番に手を加えることの難しさを再認識したのも、この作品です。

その後、小手先の改訂では帳尻が合わなくなり、2011/12シーズンに、今の演出でプレミアが行われました。ダニロにはDaniel Schmutzhardさんが、起用されたのですが、ウィーン情緒あふれる退廃的な伊達男という雰囲気がないので、逆に母性本能をくすぐる演出になったという裏話があります。

前演出が余りにもひどかったため、今の演出がまともに見えるというのも変なはなしですが、Feriは、正直、今の演出を完全に肯定する訳ではありません。

それは、3幕の構成です。現在、3幕はヴァランシェンヌを中心にグリゼットが「グリゼットの歌」に合わせて、カンカンを披露した後、バレエ団による華麗なショーへと転換していきます。舞台上では、観客に扮した男性陣が、盛んに手拍子を入れて盛り上げます。

が、ウィーンでは、この場面で、客席から手拍子が出ることは希です。なぜか‥ つまり舞台と客席の一体感が薄いのです。このあたり、Robert Herzlさんが演出を手がけた前々演出版は、レハールの楽曲ではありませんが「天国と地獄のギャロップ」を巧みに使い、リフレインで一気に客席を巻き込むという見事な展開でした。これぞ、ウィーン風の泥臭さなのです‥ 

今のショーアップされた展開も観ていてきれいですが、何かお客さまが傍観者的になってしまうのです。最も、日本公演では、手拍子が大好きなお客さまが多いので、ウィーンとは違って、大いに盛り上がることは間違えありませんが‥

洗練されすぎず、適度に泥臭いところがウィーンらしい気がするのは、Feriだけでしょうか。

さて、ダニロに適役がいないという話をしましたが、実はハンナも難しい役です。何しろ若くて色気のある未亡人ですから‥

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今回は、Ursula PfitznerさんとCaroline Melzerさんがラインナップされています。新演出による日本公演では、両者とも初お目見えです。ちなみにウィーンではFeriは、両方とも観ていますが、Caroline Melzerさんの方が観ている階数は多いですね。そのため、Caroline Melzerさんの方に何となく思い入れがあります(笑)。

ダニロに関しては、現時点では全開の日本公演に起用されたMorten Frank Larsenさんが、ベストの選択です。が、Morten Frank Larsenさんは、体調不良により、2015/16シーズン、現地でもほとんど登場していません。当然、来日組には入りませんでした。

今回は、Mathias HausmannさんとMarco Di Sapiaさんのお二人。どちらのダニロもウィーンで観ていますが、正直、今ひとつといった感があります。もちろん、お二人とも素晴らしい歌手なのですが、イメージが‥という意味です。

ヴァランシェンヌは、Julia KociさんとMara Mastalirさんが予定されています。最近、ウィーンでもお二人が起用されることが多いのですが、どちらも見事な歌、踊り、お芝居を披露してくれます。あとは好みの問題と申し上げて起きましょう。

ところで、かつては「Die Csárdásfürstin」のボニで良い味を出していたJosef Luftensteinerさんが、端役のプリチッチで登場することになりました。ちょっとびっくり。

「Die lustige Witwe」は前半の最後に「女、女、女のマーチ」、休憩を挟んだ後半のスタートに「男、男、男のマーチ」がありますが、重唱はソリストが担当しています。来日公演の場合、メンバーの関係から、ウィーンでは観られない組み合わせが実現するのも楽しみの一つ。当日の配役発表が楽しみです。

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ご存じのようにカーテンコールでは、ニェーグシュのRobert Meyerさんが、オーケストラピットに乱入し、指揮を披露しますので、こちらもお見逃しなく。とにかくダイレクターも張り切っていますので‥

今まで紹介した内容は、あくまでもFeri個人の見解ですから、人によって見方が異なるのは当然で、それを否定するつもりは全くありません。

誰が何と言っても、自分がおもしろい、すばらしいと思ったら、是非、盛大にブラヴァや拍手をしてくださいね。

ところで、フォルクスオーパーのオーケストラメンバーをはじめ、日本に長期滞在するメンバーは、しばらくすると「緑が恋しくなる」そうです。ウィーンは、近くに緑が豊かなところが沢山ありますから、東京都心のホテル暮らしでは当然でしょうね。

そこで、公演の間に、箱根、鎌倉などへ出かけてリフレッシュするという話を耳にしたことがあります。今の時期、日本は新緑ですから、他にも高尾山など、良いところが沢山ありますから、是非、色々と見ていただきたいと思っています。

ただ、来日する方からすると、最近の円高傾向は頭が痛いことでしょう。オフのお食事や移動費用は自分持ちですから‥ 皆さん、色々と節約に工夫しているようです。

さて、フォルクスオーパーの来日公演を前にした2016年4月30日、オペラやバレエのプロデューサーであり、公益財団法人日本舞台芸術振興会/東京バレエ団代表の佐々木忠次さんが、お亡くなりになりました。

実は、佐々木さんの人脈により、ウィーン国立歌劇場をはじめとする一流のオペラ座の来日公演が実現していただけに、今後の動向が気になる方も多いと思います。

ある意味、一流カンパニーの引っ越し公演も、一つの節目を迎えたことになるかもしれません。


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Comments

Feriさん、こんにちは。初日に売店近くでお見掛けし、勇気を出してご挨拶させていただきましたが、ありがとうございました。私は明日のチャールダーシュの女王の2回目を含めてあと3公演馳せ参じる予定です。Feriさんの感想を楽しみにお待ちしております。

Posted by: Taro | May 14, 2016 at 07:19 PM

Taroさま、こんにちは。

昨日は声をお掛けいただき、ありがとうございました。面が割れてしまいましたね(笑)。

2回目はキャストが変更になるので、どんな感じになるか興味があります。

Posted by: Feri | May 15, 2016 at 08:12 AM

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