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July 21, 2016

祝 Gotthard-Basistunnel 完成 ÖBBの3大トンネルプロジェクトは今‥

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今日は、ÖBBが進めている長大トンネルプロジェクトのご紹介です。

2017年6月、17年の歳月をかけて建設が進められていたスイスでGotthard-Basistunnel(ゴッタルドベーストンネル)が開通し、日本でも「青函トンネルを抜いて、世界最長の鉄道トンネルになった」と大きく報道されました。

開通式典には、スイス政府の幹部に加えて、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領、イタリアのレンツィ首相も参加するなど、周辺国の期待が高いことがうかがわれます。

Gotthardbasistunnel_02

なぜ、周辺国の期待が高いかと言えば、それは、環境保護を主たる目的にトラック輸送を鉄道輸送に転換させる機能が重視されているからです。

従来からも、ゴッタルド峠ではトラックなどを貨車に搭載して運んでいましたが、如何せん、急勾配区間があるため時間がかかっていました。

そこで、貨物列車の運行を楽にするため、「山のベース」つまり、山脈の下方に長大トンネルを建設し、山を登らずに緩やかな勾配で、同区間を抜けるという発想で建設が計画されたものです。

Gotthardbasistunnel_01

「山のベース」を通るため、ベーストンネルという名称になった訳です。ちなみに、無理に日本語に訳すと「基底トンネル」になります。イラストを見ると「ベース」の意味がよくわかると思います。

スイス国鉄が公表している資料を見ると、在来線経由の場合、機関車2台を連結した重連運転で牽引可能なのは1400トンです。

それ以上の場合は、貨物列車の後部や中間に電気機関車を補助機関車として連結する必要がありました。ちなみに後部に補助機関車を連結した場合は1600トン。中間に補助機関車を連結した場合は1800トンでした。

一方、新線開業後は、機関車を重連で運行した場合、2000トンの貨物列車が運行可能で、単機でも1600トンを牽引することができます。つまり、電力消費量や運行乗務員の削減に大きく寄与する訳です。

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しかし、日本では、貨物列車主体の新線というのは想像がつきませんが、ヨーロッパでは、「これが当たり前」になっている訳です。
余談ですが、スイスは山岳地帯が多いため、今まで高速鉄道は運行されていませんでしたが、Gotthard-Basistunnelは、最高速度250km/h規格の同国初となる高速鉄道です。

なお、Gotthard-Basistunnelの正式運行開始は、ヨーロッパの冬ダイヤ改正日、2016年12月11日に予定されています。
さて、現在、ÖBBでは、以下のように3つの長大トンネル建設を進めていますが、その内の二つが、ゴッタルドと同じくBasistunnelです。

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Semmering-Basistunnel(全長27km、2012年着工、2024年竣工予定)

Koralm-tunnel(全長33km、2010年着工、2022年竣工予定)

Bernner-Basistunnel(全長55km、2016年着工、2026年竣工予定)

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Semmering-Basistunnelについては、このブログでも何回か取り上げていますが(2015年の記事はこちらから)、ウィーンとグラーツを結ぶ南部鉄道の難所、セメリング峠を長大トンネルでバイパスするものです。

通常、トンネルを掘削する場合、直線ルートを選ぶことが多いのですが、Semmering-Basistunnelの最終的なルートを見ると、大きなカーブを描いています。

これは、環境影響調査の結果、地下水などに影響が少ないルートが採用されたためのようです。

最高速度は230km/hに引き上げられることもあり、現在よりも50分短縮され、1時間50分で結ばれるようになります。

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ベーストンネル方式ではありませんが、すでに高速道路の方はトンネルを使って峠を抜けるルートが開業しており、大幅な時間短縮が実現しました。この区間もÖBBの幹線なので、完成が待ち望まれるトンネルです。

二つ目のKoralm-tunnelは、グラーツとクラーゲンフルトを直接結ぶ新設路線内にあるトンネルです。

グラーツとクラーゲンフルトは、直線距離では短いのですが、途中に高い山があるため、鉄道は迂回しています。
そのため、この短絡線が開通すると経済的なつながりも含めて、人的交流が、今以上に盛んになると期待されています。

さらに新線の沿線にあるグラーツ国際空港の利便性も格段に向上します(詳しくはこちらをご覧ください)。

Koralmbahn_02

Brenner Basistunnelは、ドイツ方面とイタリアを結ぶ幹線であるブレンナー峠(Brennerpass)に建設が進められている全長55キロの鉄道トンネルです。

ブレンナー峠は、オーストリアのチロル州とイタリアのボルツァーノ自治県の間に位置する峠で、古来からイタリアと北東ヨーロッパを繋ぐ重要な峠として利用されています。

Brenner Basistunnelは、ブレンナー峠の激しい交通渋滞を解消し、環境を改善することを目的としたプロジェクトです。

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新トンネルの建設により、アルプス山脈を横断する列車の高速化を実現し、オーストリアとイタリア間にまたがるチロル地方や、両国間の鉄道交通が大きく改善することが期待されています。

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計画ではイタリアの高速新線網TAVに接続するため、トンネル内の最高速度は250km/hに設定されています。

同プロジェクトは、オーストリア、イタリア両政府の出資と、欧州連合(EU)の一部出資で計画が進められています。

ただ、予算措置が不十分なこともあり、建設計画が遅れており、現在では2027年の営業開始が予定されています。だいたい複数の国や機関がかかわると、その調整に時間がかかりますからね‥

Brenner Basistunnelは、オーストリア国内の鉄道トンネルでは、最大のプロジェクトであると同時に、Gotthard-Basistunnelと同じく、ドイツ方面とイタリア方面を結ぶ重要なルートであるだけに、広報活動も含めて、かなり力を入れています。

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実際に入場無料のトンネル資料館(BBT Tunnelwelten)が、2016年4月、チロル州のSteinach am Brennerにオープンしており、プロジェクトの概要などをビジュアルで展示しているようです。

ところで、これら3つのトンネルに共通しているのは、青函トンネルに代表される日本の新幹線トンネルと異なり、複線式ではなく、線路1本につき1つのトンネルを掘り、これを2つ並べた「単線並列方式」を採用していることです。

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非常の際やトラブルの発生時には、独立した単線トンネルとして、片方の線路だけを使い、上下線の区別なく列車を運行させることができるシステムになっています。

このほか、上下線の間には、非難および保守用のトンネル(Erkundungstollen)が掘削されているケースが多く、両方のトンネルも一定間隔で、非常用通路により連結されています。

ちなみにBrenner Basistunnelの場合、上下線のトンネルは70メートル離れており、333メートルごとに上下線を結ぶ非常用連絡通路が設置される予定です。

日本では、青函トンネルに新幹線が開業した際、在来線の貨物列車とすれ違いの際、荷崩れが危惧され、新幹線の速度が制限されています。その点、単線並列方式では、そのような心配はなく、高速での運転が可能です。

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ただ、複線方式に比べると、単線並列方式は、トンネルの寸法は小さくなるとは言え、トンネルを2つ掘る訳ですから、当然、建設コストは上昇します。その当たりは、基本的な考え方の違いと言えるかも知れません。

オーストリアは、山岳国だけに、NATM工法(New Austrian Tunneling Method)に代表される高度なトンネル掘削技術を誇っていますが、それでも各トンネルとも、工期は10年以上になっており、難工事であることが想像できます。

Bernnerbasistunnel_05

ところで、NATM工法は、日本でも導入されており、JRの新幹線建設などでも活用されています。日本では、今後、3000メートル級の山々が連なる南アルプスを貫くリニア新幹線の南アルプストンネル工事が本格化しますが、きっとオーストリアのトンネル掘削技術も役に立つことでしょう。

ところで、オーストリアと日本を比べると、一番の違いは地質ではないかと思います。日本のトンネル建設では、大規模な湧水をともなう破砕帯を突っ切ることが多いですが、こちらは比較的安定している岩盤をくり抜いていく感じです。そういう意味では、単純に後期や工事費を比べることは意味がないかもしれません。

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いずれにしても、このような長大トンネル建設の背景が、旅客列車の高速化以上に貨物列車の効率的な運行実現にあることを、日本でももっと取り上げて欲しいと思っている今日この頃です。

さて、最後にGotthard-Basistunnel の完成を記念して、1970年代後半に、Gotthard線で撮影した懐かしのTEE「Gotthard」の写真をお目にかけましょう。

ちなみに列車の上にはループ線が見えています。通常は1ユニットで運転されるTEE「Gotthard」ですが、この日は特別に2ユニットでやって来ました。

今回、ご紹介する動画はÖBBが提供しているSemmering-Basistunnelのプロモーションビデオです。

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