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September 18, 2016

「Axel an der Himmelstür」(アクセル、天国の扉の前で)Premiereレポート(上)

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フォルクスオーパー2016/17シーズンは、オペレッタのPremiereが2作品上演されます。

そのトップを飾るのが、Ralph Benatzky作曲の「Axel an der Himmelstür」(アクセル、天国の扉の前で)です。

Ralph Benatzkyは、「Im Weißen Rössl」(白馬亭にて)が代表作で、それ以外の作品が上演されることは極めて希です。

それだけにフォルクスオーパーが、今シーズン、「Axel an der Himmelstür」を取り上げたのは、想定外の出来事でした。

一応、古い演奏のCDなどは発売されているようですが、生の舞台を観たことがある方は非常に少ないと思います。

それ故に、定番オペレッタに比べると突っ込まれる可能性が低いというメリットも。もちろん、「Im Weißen Rössl」よりも後に作曲された作品で、アメリカのハリウッドを舞台としたオペレッタですが、当然、全編ドイツ語です。

「Im Weißen Rössl」も、最近では編曲も含めてかなりミュージカルに近い演出になっているだけに、本作品も限りなくミュージカルに近い作品ではないかと予想していました。

しかし、意外なことに、実際に観てみるとオペレッタ的な展開でした。

そして、台詞回しなどがウィーン子の心を捉えているようで、お客さまの反応が非常に良かったのには驚きました。まずは、今回の作品の特長を簡単にご紹介します。

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○モノクロ映画を基調とした演出
舞台となった当時はモノクロ映画が全盛期。そのオマージュなのでしょうか、出演者や舞台装置がモノトーンで度肝を抜かれました。

出演者は全員、白いドーランを塗っており、奇妙な感じがします。また、衣装も全てモノトーンです。

今回の制作陣は「Frau Luna」(ルーナ夫人)のスタッフです。「Frau Luna」も月世界の人間は白い特殊メイクをしていましたが、一脈通じるものがあります。ただ、こちらは、ドイツ語を話すアメリカ人ですが‥

○舞台装置は映像主体
舞台装置は非常に簡素で、どちらかと言うと小道具が中心です。背景に映像を使って変化をつける最近流行のパターンでした。特に白いキャンバスに手書きで絵を描くと、それがリアルに変化すると行った演出もあります。

また、舞台が階段状になっており、オーケストラピット側にも張り出しています。その関係で、プロンプターボックスがありません。どこかにいらっしゃると思うのですが、確認できませんでした。

また、アメリカの雰囲気を出すためか、アメリカンコミック調の映像を使っている部分もあります。とにかく全体的にシンプルな舞台装置です。とにかくモノトーンなので、正直、華やかさが乏しい感じがしました。

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○女性は2人だけ
オペレッタでは女性歌手が舞台を盛り上げるケースが多い訳ですが、本作品の女性歌手は、女優のグロリア・ミルズと秘書のジェシーの2人だけ。その分、本作品の鍵を握る映画スターのグロリア・ミルズが目立つようになっています。

最近のフォルクスオーパーでは定番となっているバレエ団の出演場面がなく、なおかつ合唱団も出演しません。
また、男性歌手も複数の役をこなすパターンなので出演者が少ない「省エネオペレッタ」です。

同じ、Ralph Benatzkyの作品でも、大人数で華やかな舞台がウリの「白馬亭にて」とは、正反対のこぢんまりとした作品です。

○楽器編成も変則的
「白馬亭にて」も通常のオペレッタとは異なる楽器編成ですが、本作品はミュージカルに近い楽器編成になっています。

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中央にグランドピアノがあり、指揮者の隣にはドラムセットが置かれています。このほか、ドラムセットももう一組あったようです。全体的に弦楽器よりも管楽器中心の編成でしたね。

また、歌手が踊りながら歌う場面が多いため、「白馬亭にて」と同じく、全員、ワイヤレスマイクを使っています。

なお、今回の制作陣は、以下のとおりです。

-Regie(演出):Peter Lundさん

-Stückbearbeitung(脚本):Peter Lundさん

-Bühnenbild(舞台装置):Sam Madwarさん

-Kostüme(衣装):Daria Kornyshevaさん

-Choreographie(振付):Andrea Heilさん

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また、指揮はLorenz C. Aichnerさんが務めました。出演者は、以下のとおりです。

-Gloria Mills, Filmstar(映画女優グロリア・ミルズ):Bettina Mönchさん

-Axel Swift, Reporter(記者アクセル):Andreas Bieberさん

-Jessie Leyland, Sekretärin(秘書ジェシー):Johanna Arrouasさん

-Theodor Herlinger, Friseur(メーキャップ・アーチスト テオドール):Boris Ederさん

-Cecil McScott, Filmproduzent(映画プロデューサー スコット):Kurt Schreibmayerさん

-Kriminalinspektor Morton(刑事モートン):Gerhard Ernstさん

-1. Herr / Autor / Randy Racebottom, Klatschreporter(第1の男、記者:ランディほか):Stefan Bischoffさん

-2. Herr / Aufnahmeleiter / Ausstatter / Bab Peppermint, Rechtsanwalt(第2の男、弁護士:バブ・ペパーミントほか):Jakob Semotanさん

-3. Herr / Komponist / Beleuchter / Tommy, Polizist(第3の男、警察官:トミーほか):Oliver Lieblさん

-4. Herr / Regisseur / Meredith, Butler / Clark, Glorias Chauffeur(第4の男、グロリアお抱え運転手ほか):Roman Martinさん

-5. Herr / Tonmeister / Prinz Tino Taciano(第5の男、プリンス・ティノ・タチアーノほか):Maximilian Klakowさん

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それでは、「あらすじ」にそって作品をご紹介します。

一幕のスタートは、グロリア・ミルズの映画試写の場面で始まります。プロデューサーのスコットは、作品の仕上がりにご機嫌斜めで、スタッフに当たり散らします。

場面は、スコットのオフィスに変わります。

スコットの秘書ジェシーが1人で仕事をしているところへ、記者のアクセル・スイフトがやってきます。

うだつのあがらない記者のアクセル・スイフトは、何とかスクープ記事を書いて突破口を開こうと焦ってるのです。

彼のターゲットは、女優のグロリア・ミルズ。しかし、今をときめく映画界の人気女優は、男性関係など様々な問題をかかえ、インタビューには一切応じません。

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アクセルは、ガールフレンドのジェシーを介して、グロリアに接近しようとするのですが、アクセルの下心に腹を立てたジェシーは、“男とたらしのグロリア・ミルズとのインタビューなど、絶対、実現させない”と冷たく言い放つのでした。

途方に暮れたアクセルは、オフィス内に隠れて様子を見ます。

その後、映画関係者がオフィスにやってきて、グロリア・ミルズがご機嫌斜めだと大騒動が始まります。

そこへ、癇癪持ちで有名なグロリアがオフィスに怒鳴り込み、スコットに契約を解消するよう迫ります。彼女のご機嫌をとるために、奔走する関係者。ここは踊りも入ってなかなか面白い展開です。

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彼女は誤解され孤独だと訴えるのですが、プロデューサーのスコットはグロリアに向かって、“社交界のプリンス・ティノ・タチーノとの情事こそが、彼女の気分の原因だ”と言い放つのでした。

スコットは、Kurt Schreibmayerさんですが、こういう役をやらせると上手ですね。

ことの一部始終をアクセルは物陰に隠れて聞いていますが、アクセルの存在に気付いたグロリアは怒りの全てを彼に向けます。

グロリアに罵倒されたアクセルは、逆に意欲に目覚め、“必ずグロリアとのインタビューを実現させよう”という野心を抱くのでした。そして、スタジオの関係者から、グロリアに関する取材をはじめます。

その後、アクセルは、同居する親友のメーキャップ・アーチストであるテオドールに頼んで老人に扮装し、グロリアの車の前に倒れ込みます(いわゆる「当たり屋」です)。

なお、テオドールとアクセルのやりとりは、部隊、右側の袖で行われるため、客席によっては見えません。

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アクセルは“貴方は映画スターのグロリア・ミルズさんではありませんか。私は貴女のファンです”といったわざとらしい芝居を行います。

スキャンダルを避けるためグロリアは、謎の老人を自分のヴィラでの夕食に招待することで、事故の一件をもみ消そうと画策するのでした。

グロリアとヴィラで夕食ができることが決まり、意気揚々と自宅へ自転車で戻るアクセル。

この間、街中にはキングコングや某ネズミが出現するなど、古いアメリカンコミックのような背景が印象的です。

家ではテオドールとジェシーがアクセルを待っています。

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奥手のテオは、実はジェシーに惚れているのですが、親友と、そのガールフレンドの間に割り込むのはタブー。ここで「タブー」をテーマにした楽しい曲が歌われます。

ジェシーは、アクセルがまたデートの約束を忘れたのに気付いてます。

そのため、本来なら拒否するテオの積極的な態度にも、あまり抵抗がありません。テオドールは、ジェシーの髪を魅力的にカットして、自分の存在をアピール。そこへ、アクセルが正装に着替えるために戻ってきます。

亜屈せ留は荒唐無稽な言い訳をして怒るジェシーをなだめ、意気揚々とグロリアのヴィラへと向かうのでした。

落ち込んでいるジェシーを慰めるため、テオドールは「VIENNA how it sings and laughs」という映画に誘います。

キップを買って映画館の館内に。映画鑑賞にはポップコーが欠かせません。ちゃんと出てきます。

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背景は映画のオープニングになっていますが、実際には映像は流れず、舞台上にシュテファンドームやプラーターなどの小道具、ヨハン・シュトラウス、シューベルトなどの人物が現れてお芝居を展開。

さらに途中でカイザーも自動車で乱入。やはりカイザーは欠かせません(笑)。

そして、ウィーンをテーマにした映画にもかかわらず、「Im Weißen Rösslの小道具が‥そうベナツキーに敬意を表している訳です。

ウィーン情緒をスパイスにするところは、ベナツキーらしい展開です。テオドールは、VIENNAと書かれたエプロンをしているところから、ウィーンに憧れているのでしょうか。

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映画を見終わって元気になったジェシーとテオドールが自宅へ戻ると、そこへグロリアのお抱え運転手がアクセルを迎えにやってきます。

ことの次第を悟って腹を立てたジェシーは、テオドールをアクセルと偽って、一緒にグロリアのヴィラへ向かうことにします。

グロリアのヴィラの前ではゴシップ記者のランディ・レースボトムが同僚とともに、グロリアに関する最新情報を得ようと張り込んでいます。

レポーターのようにマシンガントークで実況中継をする記者の姿も‥ パパラッチ風ですねぇ。

そこへモートン刑事が、グロリアがヴィラに保管している伝説的なミルズ・フェアバンクス・ダイアモンドを盗賊が狙っているという情報を得て、やってきます。

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次にやってきたのはグロリアの恋人プリンス・ティノ・タチアーノ。記者を振り切ってさっそうとヴィラへと入っていくのでした。

そこへ現れたアクセルを、ランディは“ろくな記事が書けない記者”とこき下ろします。

しかし人々の驚きを尻目に、アクセルがドアホンで来訪を伝えると、ヴィラの扉が開き、アクセルは天国の扉を通って中へ入って行くのでした。

ここは天国にのぼるような幻想的な演出になっています。

一幕は1時間ほどで、休憩が入ります。例によって長くなったので、続きは、明日、お伝えします。


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