連節バスは路面電車の代替になる?
今日は「ウィーンの市内交通にまつわる話題」をお伝えしましょう。
ウィーンでは、Wiener Linienが地下鉄、路面電車、バスを活用して市内の公共交通を行っているのは、皆さまもご存じのとおりです。
路線バスについては、Dr. Richardなどの民間会社が運行している路線もありますが、ウィーン市内に関してはWiener Linienと一体になっているため、日本のように別運賃とはなりません。
Wiener Linienが発行するチケットで、運行会社の別なく利用できるのは、観光客の皆さまにとっても便利だと思います。
ウィーンでは路面電車の更新は遅々として進みませんが、車両の寿命が短いバスについては、かなりのペースで更新が行われているようです。
車両の更新は、環境基準の問題も関係しているようで、2013年に配備が始まったメルセデス製の連節バスCitaro NG 265 MBも2016年には142両に増えました。
大型の連節バスですが、意外と小回りがきくようで、Feriがよく利用する13Aなどでは、狭い路地を巧みに走り回っています。
ところで、Citaro NG 265 MBは連節バスなので、定員は、座席41名、立ち席88名と、比較的多くなっています。
一方、路面電車のULF Type A1(3車体連接の短いタイプ)の定員は、座席42名、立ち席94名と、ほぼ拮抗しています。
それでは、「連節バスで路面電車を代替することができるか」と言えば、これは、なかなか難しい側面もあるようです。
というのは、まず乗降ドアの数です。ULF Type A1が、最前部と最後部を含めて5つの乗降口があるのに対して、Citaro NG 265 MBは、4箇所に留まっています。当然、ドアの数が少ないと言うことは、乗降に時間がかかります。
さらにULFは超低床式路面電車であるため、連接部以外は車内に突起はありませんが、Citaro NG 265 MBはバスであるため、車輪部分に大きな突起があるため、車内の移動に時間がかかります。
意外に思われるかも知れませんが、車体幅に関してはULFが2400mm、バスの方が2590mmと、バスに軍配が上がります。問題は車体長。ULFが24メートルであるの対し、バスは18メートルしかありません。
その結果、ULFでは座席が2+1であるの対して、バスは車幅の広い点を生かして2+2になっています。これで座席定員を確保しているという訳です。
ただ、車幅が広いとは言っても、ごくわずかなので、結果として通路幅が犠牲になってしまい、車内での移動が困難になっています。
実際、混雑する路線の代表である13Aでは、Feriも乗降に時間がかかるケースを体験しています。
このように考えると、輸送できる人員の数は、ほぼ同じであっても路面電車の路線を連節バスで代替するのは、困難であると言えるでしょう。
ただ、13Aのように道路が狭く、路面電車を走らせることが不可能な路線の場合は、非常に有効な輸送手段になるのは言うまでもありません。
ところで、Citaro NG 265 MBは、よくできたバスですが、やはり乗り心地はあまり良くありません。これは連接型の宿命だと思います。
そういう意味では、各輸送機関の特長を加味した路線網の構築が大切なのだろうと思います。
なお、バスに関しては、市内に専用レーンが設置されるところも増えており、以前よりはスムーズな運行が実現できるようになりました。
余談ですが、日本の地方都市では、一時期、路面電車が道路交通の邪魔者扱いされて、バス転換されたケースが沢山ありました。
しかし、バス転換がうまくいったケースは少ないようで、やはり、それぞれの特性を生かした活用が重要ではないかと思います。最近、日本でも、路面電車見直しの機運が高まっているのは喜ばしいことだと思います。
今後も、ウィーンでは、地下鉄、路面電車、バスという3つの交通期間を巧みに使いながら、市内の交通網を充実させていくことでしょう。
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