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March 31, 2017

工事が進むÖBB南鉄道プロジェクト(後編)

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今日は昨日に引き続き「ÖBB南鉄道(Süd Bahn)改良プロジェクト」をご紹介しましょう。

しかし、詳しい情報を見ると、ウィーン近郊でも関連する改良工事がいくつも行われていることがわかり、正直、驚きました。

さて、今日は、本プロジェクトで最も注目されているSemmering-Basistunnelから南側をご紹介します。

-05:Semmering-Basistunnel
Wien-Graz間で輸送上のネックになっているセメリング峠を長大トンネルで通過させようという大プロジェクトです。

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セメリング峠を鉄道で通過した方は、わかると思いますが、ループ線を使って峠を登るため、RailJetでも最高速度が70km/h以下に低下します。

さらに重量の重い貨物列車の場合、補助機関車を連結しても、編成に制限があります。それだけに輸送の大きなネックになっている訳です。

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オーストリア以外でも聞くことが増えてきた「Basistunnel」という言葉ですが、これは山の基部に近いところに長大トンネルを掘削する場合に使う言葉です。

従来はトンネル掘削の手間を省くため、ある程度の高さまで登ってから、短いトンネルで峠を越えるという方法が一般的でした。

しかし、トンネル掘削技術の進歩により、地圧が高い山の基部にトンネルを掘ることが可能となりました。当然、この方が勾配が少ないため、到達時間の短縮効果は絶大です。

余談になりますが、日本で建設が始まったリニア中央新幹線の南アルプストンネルも、在来線は走りませんがベーストンネルの仲間です。

さて、Semmering-Basistunnelですが、各種の環境影響調査も終わり、大型トンネルボーリングマシンを使った掘削工事も始まっています。

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日本の鉄道トンネルは、基本的に複線トンネルですが、ヨーロッパでは保守や事故の対応を考慮して、単線トンネルを2本掘るのが一般的です。Semmering-Basistunnelも、この方式です。

ÖBBが発行しているパンフレットにトンネルの断面図が出ていましたが、避難路を確保するため、線路はトンネル中心では無く、左側に寄せて敷設されるようです。

完成するとウィーン-グラーツ間は、最短1時間50分で結ばれるようになります。巨大な山脈の下にトンネルを掘るため、工事は難易度が高く、完成予定は2026年になっています。

-06:Modernisierte Bahnhöfe
Bruck an der Mur-Graz間53kmの路線についても、改良工事が行われています。

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こちらは線路をはじめとする設備の更新と同時に、Graz近郊区間として、S Bahnも運転されているため、バリアフリー化に代表される駅設備の改良工事も進められています。

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左の写真はプラットホームの改良工事が完了したBruck an der Mur駅の様子です。

このほか、右写真のように道路交通との連携を強化するため、駅前広場の整備なども行われています。

オーストリアでは、このように鉄道と自動車の連携を強化し、鉄道利用の利便性を高めようという施策が増えている感じがします。

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-07:Graz Hauptbahnhof
現在は、南鉄道のシュタイヤマルク側の拠点となっているGraz Hauptbahnhofの大規模改良工事です。

こちらは場所の移転をともなわない既存駅の改良ですが、すでに工事は大部分が完了しています。

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このブログでもご紹介したように路面電車は地下に入り、駅前広場も大きく変わりました。

駅設備ではWien Hauptbahnhofに似た大屋根が設置され、雰囲気が一新し、オーストリア第二の都市であるGrazの表玄関にふさわしい駅に生まれ変わりました。

今後、下記のKoralmbahnが開業すると、Graz Hauptbahnhofの重要性が更に高まるため、大規模改修工事に踏み切ったのでしょう。

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-08:Koralmbahn
Graz Hauptbahnhofについては、以前、このブログでもプロジェクトをご紹介しましたが、Graz とケルンテン州の州都 Klagenfurt間を直接結ぶ130km余りの新路線です。ちなみに昨日の記事、トップの写真がKoralmbahnの完成予想イラストです。

従来、GrazからKlagenfurtへ行く場合、Bruck an der Murへ出て、Leoben、Judenburgなどを経由して向かう必要がありました。

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そのため、距離が長く、鉄道よりも所要時間が短いバス(2時間)を利用するお客さまが大多数です。

Koralmbahnですが、一部は既存の路線を改良して転用しますが、長大トンネルを含む新路線なので、230km/h運転対応で設計されています。

長大トンネルについては、Semmering-Basistunnelと同じく、単線トンネルを2本掘削する方式です。トンネルボーリングマシンなどを使って、工事が進められている様子が紹介されています。

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この区間は、自然が豊かな場所なので、環境への配慮もなされており、写真のように高架区間には遮音壁が当初から設置されることになっています。

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完成するとGraz-Klagenfurt間は、最短45分で結ばれるようになり、両州の交流が非常に盛んになると期待されています。プロジェクトは1999年から開始されており、2023年に開通予定です。

2026年のプロジェクト完了時には、Wien-Klagenfurt間は現在の3時間55分から、2時間40分に短縮されます。

ちなみに、現在、Wien-Graz間が2時間35分ですから、Grazまでの時間とほぼ同じになる訳ですから、利用者からの期待が高まります。

すでにトンネル掘削を含む建設工事はかなり進んでいます。完成予想イラストのように、非常に風光明媚な場所を通るので、完成後が楽しみな路線です。

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ÖBBでは、南鉄道の改良プロジェクトについて、様々な広報活動を行っています。立派なパンフレットを駅の案内所などで配布する一方、工事概要を説明する展示なども行っています。

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さらに、一部の工事現場には見学施設も設けています。このあたりのパブリシティは、JRよりも上手かも知れません。

これは、ÖBBが上下分割方式を採用し、施設改良はÖBB INFRAという会社が行っていることと関係がありそうです。

何しろ車両のように、一般のお客さまにアピールする様相が少ないですから‥

なお、今回の写真ですが、工事中のもの、完成予想イラストなどは、ÖBBの公式写真をお借りしています。


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Comments

オーストリアと言うと、オーストリアとイタリアを結ぶ「ブレンナーベーストンネル」やウィーン~ザルツブルク間の高速新線の話題に目が行きがちになりますが、今回の南鉄道プロジェクトの方もかなり壮大になるので、かなり注目を浴びそうです。そうなると、イタリア方面へも速達化も出来そうですし、何かと利便性が高くなりそうです。ただ、完成はまだまだ先なのが残念な所でしょうか・・・

Posted by: おざきとしふみ | April 06, 2017 at 09:13 PM

おざきとしふみ様

Grazは、一応、オーストリア第二の都市なので、本来は、南鉄道の方が重要性が高い訳です。

ただ、西鉄道に比べて軽視されていたきらいはありますね。

Feri個人としては、GrazーKlagenfurt間の新線に非常に興味があります。

Posted by: Feri | April 07, 2017 at 04:32 AM

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