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May 30, 2018

番外編 日本の倶楽部活動に思う(下)

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今日は昨日の続きをお伝えします。

活動のコンセプトはオーストリアのClub760と羅須地人鉄道協会は相通じるものがありますが、取り巻く環境は、大きく異なるようです。

羅須地人鉄道協会は、1973年の発足当初は、新潟県糸魚川市にあった某工場の協力を得て、その工場の専用線で機関車の動態保存をはじめました。

その後、車両保存に理解があった工場が閉鎖になったため、所有していた車両を各地に分散して保存していたようです。

外野の人間には知る由もないような苦労があったと思いますが、最終的に「成田ゆめ牧場」という「安住の地」を得て、ここに鉄道を建設し、各地に分散していた保存車両を集めました。

Club760と共通しているのは、「まず、車両の保存を優先し、動態復帰を含む、整備作業は自分たちの身の丈にあった方法で、時間をかけてゆっくり行う」という考え方です。

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先を急がない、息の長い活動ですね。これは、利益を優先せざるを得ない私企業にはできない発想です。

ところで、羅須地人鉄道協会の皆さまも恐らく、できれば欧米のような「開かれた保存鉄道」を運営したいのだろうと思います。しかし、日本ではオーストリアのような純粋な保存鉄道を運営することは、非常に困難なようです。

まず、日本では「この手の愛好家の活動」を、否定的に捉える人たちが比較的多く存在することです。

“自分たちの趣味のために、周囲に迷惑をかけないでほしい。関係のない住民の安全を担保して欲しい”という意見です。

このような意見も一理ありますが、これは「価値観の違い」ですから、乗り越えるのは容易ではありません。その点、私有地内であれば、比較的、このような意見は少ないようです。

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もう一つは関係法令の問題です。

「成田ゆめ牧場」のような「テーマパークの遊戯施設」は、通常の「鉄道関係の法令」は適用されません。しかし、日本では、通常、営業列車が走らない保存鉄道であっても、原則として一般の鉄道と同じ法令が適用されます(最近は若干、規制が緩和されているようですが‥)。

そのため、通常の鉄道を運営している営鉄道会社(もしくは関連会社)でないと、事実上、不可能なようです。

という訳で、日本では、純粋な保存鉄道は極めて少なく、蒸気機関車の動態保存は、いずれも既存の鉄道会社によって行われています。

それでも、普通のお客さまを輸送する列車と同じ規制が適用されるため、保安装置の増設をはじめ、安全面を担保するための苦労が多いようです。

それに対して、オーストリアをはじめとする欧米では、一般的な鉄道と保存鉄道では、別のレギュレーションが存在するようです。

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もちろん、安全管理のために、野放しという訳ではありませんが、保存鉄道の運営や保存車両の運転に関しては、日本よりもハードルが低いようです。

このあたりは、基本的な考え方(価値観)の違いなので、一概に「どちらが優れている」と断定することは意味がありませんが‥

これは、鉄道に限らず、日本では「産業遺産の動態保存」が市民権を得ていないこともあり、法令の整備が行われていないのです。

航空機の世界でも、いわゆるビンテージと呼ばれる古い機体を日本で、飛行させるのは事実上、不可能です。

ただアメリカでは「実験機」というカテゴリーがあるため、アメリカで機材を登録し、「アメリカの機体」として、日本で飛行させるという「裏技」が広く普及しているという話を耳にしたことがあります。

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日本得意の「法律の恣意的運用」になるのですが、本来、これは望ましい姿ではないと思います。

先日、千葉県の幕張で行われたRed Bull Air Race World Championshipでも、会場近隣に臨時離着陸場周辺に高層ホテルができたため、航空法に抵触し、一時期は開催が危ぶまれました。

最終的には主催者側がホテルを貸し切り、無人にするという裏技で、国交省の許可をとったようです。これも、ある意味、「法律の恣意的運用」。

これに対して、「私企業が実施する危険な興業のために法令を意志的に運用するのはいかがなものか」という意見や、「杓子定規に考えずに、国際的なイベントなのだから、法律の柔軟な運用は評価したい」という二つの意見があります。これも「価値観の違い」があるため、議論は平行線のままです。

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もちろん、日本は法治国家ですから、法令の遵守は大切。できれば、「営業用の法令」とは別に、「産業遺産の動態保存」を比較的容易にするような法令が整備されれば良いのでしょうが、社会的に認知されていない分野だけに、立法府の動きもみられません。

このほか、Club760をはじめとする団体では、機関車の復元等に際して、ファンドを組んで、広く資金を集める方式を採用しています。

こういった活動で資金が調達できる背景は、趣味が広く社会的に認知されていることも要因になっているような気がします。

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日本でも、民間団体による「産業遺産の動態保存」が広く社会的に認知され、オーストリアのような保存鉄道を運営できる日が来ると良いのですが、文化の違いもあり、なかなか難しいような気もします。

ところで、さすがにヨーロッパでも、このようなインダストリアルナローゲージの保存に関しては、閉鎖された敷地内で行っているケースが多いようです。

これは、軌間が狭く、お客さまも乗せるには不向きなことが影響しているのかも知れません。ちなみにClub760の路線は軌間760mmです。軌間760mmの狭軌鉄道は、通常の旅客輸送も行っています。

友人からの土産話を聞いて、そんなことを考えたFeriでした。

それにしても、オーストリアでも色々な価値観を持った方がいますから、「民間団体の保存鉄道」に対して、否定的な意見が皆無ではないと思います。

しかし、現実には、価値観の違いを認めつつ、何とか運営できる「理由」を知りたいと思うFeriです。


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Comments

Feriさん、楽しく、考えさせる話題を拝読させて頂きました。日本は文化に対して本当に器量の狭い社会だと思います。友人が50年前のクラシックカーを楽しんでいますが「旧い」と言うだけで税金が15%も余計に取られると嘆いておりました。イギリスではクラシックカーに税金は掛からないと聞いたそうです。日本は何時になったら文化も先進国並みになるのでしょうね。

Posted by: ハンドルネームウィーン | May 30, 2018 20:33

ハンドルネームウィーン様

コメント、ありがとうございます。日本では、かつて「趣味」を「道楽」といったように、「社会的に項をなしえた方が、私財を使って行うもの」という認識が強く、仮に社会的に役立つ内容であっても、社会が支援するのはけしからんという風土があるような気がします。

税金が高くなるにつれて、いずれオペラや映画などへ国が支援するのもけしからんという話になるかもしれません。

Posted by: Feri | May 31, 2018 11:32

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