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November 20, 2018

産業遺産の動態保存に思う

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今日は「産業遺産の動態保存についての雑感」をお届けしましょう。

先日、日本の方が、アメリカから購入した飛行可能な零戦を資金的な理由で手放すというニュースを耳にしました。

ビンテージ航空機の動態保存ですが、「日本では絶対に不可能」とまで言われた状況でしたが、法的な問題も含めて難問をクリアし、飛行可能状態を維持していました。

しかし、最終的に「資金の問題」で挫折した訳です。これに対して、「資金の問題で挫折とは、残念」という意見がある一方、「そもそも、この零戦を動態保存する意義があるのか」という意見も聞かれます。

というのは、この機体、パプアニューギニアのラバウル付近で朽ち果てていたものを、1970年代にアメリカのサンタモニカ航空博物館が回収。その後、ロシアで、ほとんどの部品をリバースエンジニアリングで、製造当時同様に新造して復元されたものなのです。

リバースエンジニアリングとは、機械を分解、動作観察などを通じて、製品の構造を分析し、製造方法や動作原理、設計図などの仕様を調査する手法です。

つまり、オリジナルは存在しますが、「事実上の新造機」なので、零戦に縁がありそうな博物館などが「本物ではない」ため食指は動かないにでは‥という訳です。

更に、意外なことに日本では「ビンテージ航空機の飛行可能は価値がない」という考え方があります。

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世俗的な言い方をすれば、金儲けのために人口密集地で飛ばすことは、周辺住民に危険を与える行為だというものです。

保存している団体(個人)が、この飛行機で金儲けをしようと考えているかどうかは、知る由はありませんが‥

ところで、こちらでは航空機だけではなく、リバースエンジニアリングの手法を活用して動態に復元するという行為は、一般的なことのようです。

鉄道車両などでは、オリジナルの部材を全く使わずに、図面から新造してしまうケースもあります。もちろん、その場合、「レプリカ」と明記されますが‥

当然、動態復帰を行うためには、多額の資金が必要なので、寄付を募る、ファンドを組むといった活動が行われます。

それに対して、「オリジナルではないから、意味が無い。資金も出さない」という声は、あまり耳にしません。

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これは、恐らく「産業遺産の動態保存」に対する考え方の違いによるものだろうと思います。

「例えリバースエンジニアリングで復元したものや、レプリカであっても実際に動くことに価値がある」という考え方が根底にあるような気がします。

こちらの保存団体は、商売で行っている訳ではありませんが、組織や設備を維持するためにお客さまからお金を頂いています。しかし、主目的は「産業遺産の動態保存」なので、立派な博物館と言えるでしょう。

また、アメリカでは民間団体によるビンテージ航空機の動態保存が盛んです。

しかし、やはりオリジナルの部品だけでは、動態保存は困難なので、代替部品(エンジンを含む)などを使っているケースが多いという話を耳にしました。こちらについても、否定的な意見はあまり聞いたことがありません。

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なぜ、日本で、このような手法によって動態に復元されたものに対して、否定的な意見があるのか‥その理由について、Feriはよくわかりません。

ところで、日本で数少ない鉄道遺産の動態保存を行っている純民間団体「羅須地人鉄道協会」は、動態保存に意義を見いだしているようです。

そのため、代替部品の新造や他機種からの部品転用、一般部品の使用も行っています。中にはオリジナルと全く無縁の部品を活用しているケースもあるという話です。

さらに、全く新しい蒸気機関車を自分たちの手で創り上げています。「オリジナル重視」という視点に立てば邪道なのかもしれませんが、「後世に軽便鉄道の遺産を残す」という観点からみると、Feriは立派な活動だと思います。

ちなみに、日本でレプリカを堂々と公的な博物館に展示しているケースはJR東日本系の鉄道博物館(南館)のE5型(車番はE514-9001)だそうです。現役車両で、博物館に納入できる車両がなかったため、レプリカの製造に踏み切ったようです。

現在、JR各社が運行している蒸気機関車も、いずれ部品が枯渇してくると、リバースエンジニアリングによって部品の新製を行うケースが出るかも知れません。オリジナルに、どこまでこだわるのか‥これは永遠の課題かもしれません。


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