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November 23, 2019

Volksoper「König Karotte」PremiereReport(上)

20191123102今日オッフェンバック生誕200年を記念して上演が決定したオペラ・フェリー(opéra-bouffe-féerie)「König Karotte(にんじん王)」Premiereの様子をお伝えします。

今回も原則としてVolksoper提供の公式写真を使って舞台の模様をお伝えしますが、必ずしもFeriが皆さまに見ていただきたい場面が提供されていません。その点は、ご了承ください。

昨日もご紹介したように「König Karotte」は、「Orpheus in der Unterwelt(地獄のオルフェウス)」などと異なり、1870年の普仏戦争後に上演された作品で、今まで光が当たることが少なかった作品。そのため、ウィーンのオペレッタ・ファンでも、観たことがないという方が大多数だと思います。

この時期、オッフェンバックの作品に対する一般的な評価は下がっており、マスコミからも手厳しい意見が出されています。

時代は第二帝政から第三共和政へ移行する時期。オッフェンバックは起死回生を図るべく、時代の変化を踏まえて、ボナパルティストであった劇作家サルドゥとともに「König Karotte」の創作と初演に望んだものと思われます。

もちろん、今は21世紀ですから、パリ・ゲテ座で初演が行われた1872年1月とは時代背景が全く異なるのは、言うまでもありません。しかし、「政治体制の変革期」に当時の世相を背景に創作された作品であることを踏まえて、本作品を見ると、違った見方ができると思います。

20191123006また、初演後のマスコミ評も賛否両論があり、当時の知識人の間でも評価が対立していたようです。森氏の論文では、これは「特定の層に対する風刺」を和らげた結果、観客の理解を妨げることにつながったという分析がなされています。

しかし、今シーズンVolksoperが、オッフェンバック前期の代表作である「Orpheus in der Unterwelt(地獄のオルフェウス)」と、新しい試みを取り入れた後期の野心的な作品「König Karotte」をプログラムにいれたのは、オッフェンバックの多様性を伝えると同時に、後期作品の再評価を狙っていると思います。Volksoperの見識の高さを見直しました。当初、変な作品を上演すると思っていたFeriは、赤面の思い‥

ところで、「König Karotte」は、オッフェンバック自身の手で、初演後、オリジナルの4幕版から3幕版に改変したという経緯があります。
もちろん、3幕判、4幕版の両スコアも存在しているようです。

20191123001今回、Volksoperでは3幕版ではなく、あえて4幕版で上演することを決定したのは、非常に興味深いところです。Feriは、残念ながらオリジナルの台本を持っていないので、正確に比較することはできません。実際、森氏の論文を読んだ上でVolksoperの舞台を観ると、正確に4幕版の台本を再現している訳ではないようです。

これは、現在、Volksoperではオペレッタは原則として休憩1回を含み上演時間2時間45分という「基本的な枠組み」があります。そのため、オリジナルの4幕版から、削ったシーンも多々あるようです。

さらにオリジナルは第二帝政から第三共和政へ移行しつつある時代に現体制や改革への風刺を盛り込んだ作品ですから、かなりリスキーです。そのため「示唆的な風刺」が基本だったようですが、今はどんなストレートな表現をしても問題はありません。このように考えると、オリジナルの脚本や演出とは、大きく異なっているのかもしれません。

20191123002なお、本作品はドイツStaatsoper Hannoverとの共同制作で、実際には同劇場で先行上演されたプログラムを移植したようです。

Feriは、Staatsoper Hannoverの「König Karotte」は観ていませんので、比較はできませんが、実際に作品を観た印象では「Volksoperならではの味付け」はしてあると思います。

制作陣ですが演出はMatthias Davidsさん、舞台装置はFischer-Dieskauさん、衣装はSusanne Hubrichさん、照明はMichael Grundnerさんでした。

20191123003指揮はGuido Mancusiさん。Premiereの出演者は、以下のとおりですが、最近のVolksoperのオペレッタとしては出演者が多いのが特徴です。また、複数の役を兼任している歌手もいます。本来はバレエシーンもあるようですが、今回、バレエ団の出演はありませんでした。

-Fridolin XXIV Prinz von Krokodyne:Mirko Roschkowskiさん
-Robin, ein guter Geist:Amira Elmadfaさん
-Rosée-du-Soir:Johanna Arrouasさん
-Prinzessin Kunigunde:Julia Kociさん
-König Karotte:Sung-Keun Parkさん
-Hexe Kalebasse / Zauberer Quiribibi:Christian Grafさん
-Pipertrunck, Polizeichef:Marco Di Sapiaさん
-Truck, Schwarzmagier:Yasushi Hiranoさん
-Baron Koffre, Schatzmeister / Pyrgopolyneikis:Boris Ederさん
-Marschall Track, Schlachtenminister:Jakob Semotanさん
-Graf Schopp, Geheimrat:Josef Luftensteinerさん
-Dagobert, ein Student:Daniel Ohlenschlägerさん
-Marschallin Track / Echo:Renate Pitscheiderさん
-Madame Pipertrunck:Sulie Girardiさん
-Gräfin Schopp:Elvira Soukopさん
-Baronin Koffre / Christiane, eine Studentin / Corinne / Brigadeführerin der Ameisen:Martina Dorakさん
-Herold / Curculion / Pompejischer Händler:Gernot Krannerさん
-Brigadier / Mégadore / Pompejischer Händler:Christian Drescherさん
-Psitt, Kammerherr / Carion / Polizist:Franz Suhradaさん
―Médulla / Bürgerin von Krokodyne:Klaudia Nagyさん
-Lépida / Bürgerin von Krokodyne:Stefanie Mayerさん
-Drusille / Händlerin:Susanne Litschauerさん
-Ein Affe :Konstantin Oberlikさん
-Kleiner Zauberer :Jonas Voillさん

20191123004まず、総評ですが、演奏が素晴らしかったですね。さらに大規模な合唱場面が多く、この点も魅力的。演出については、「架空の国」(ドイツやハンガリーを意識しているという節があります)でのお話で、かつ夢幻劇なので、ファンタスティックなもの。作品の性格上、暗い部分もあるのですが、明るいシーンも多く、オペレッタらしい作品に仕上がっていました。

舞台装置は、比較的簡素なもので、映像を使うことでカバー。最近のVolksoperでは回り舞台を活用するケースが多いのですが、今回は吊し物を多用する方式でした。これはハノーバー歌劇場との関係かもしれません。吊し物を多用しているため、場面転換も比較的容易で、変化に富んだ舞台になっていました。

衣装については、一応、想定される時代と国をイメージしたものになっていましたが、架空のお話なので、「にんじん王」一派以外もちょっと変わったメイクになっています。

それでは、例によって「あらすじ」に沿って、ご紹介しましょう。

20191123005 前奏曲の時から、フリドラン24世の側近が緞帳の前に登場して、お芝居を始めます。自撮り棒で撮影するシーンも‥ 実は、今回、プロンプターボックスを劇中でも活用する場面が多いのが特徴。プロンプターさんは、ここで上からボックスに入ります。

第1幕
オープニングは架空の国クロコディヌのマルクトプラッツ。市が賑わっています。ここは大人数の合唱団が、実力を発揮します。男性陣は水タバコとビールで盛り上がっていると、女性陣がピザを持ってくると言う展開。

王子フリドラン24世は散財してしまい、国家財政が破綻しかけています。そこで、隣国の金持ち王女キュネゴンドとの結婚を画策しています。妖精のロバン・リュロンは、この状態を心配しています。

キュネゴンドのコスチュームが、いかにも成金というイメージ。どこかの大統領夫人を連想させます。なお、なぜかスマホを持っています。フリドランの側近達も奇抜な服装の人が多く、個性的な面々。

場面は「城の塔の部屋」へ。魔女コロカントは、ロゼ・デュ・ソワールを捕らえています。ロゼは窓から見えるフリドランに恋をしているのでした。ロバンはフリドランを更生させるためロゼの力が必要であると訴え、ロゼの解放を約束します(この時使うのが魔法の毛糸)。

魔女コロカントは、フリドランの父親に妖術を使った罪で罰せられ、10年間、魔法を使うことができませんでした。この恨みを晴らすため、フリドランを追放することを画策しているのです。話が複雑なのは、この時、ロバンはフリドランを更生させるため、一時的に魔女コロカントと手を組むのでした。

20191123007場面は「王室菜園」。フリドランに呪いがかけられ、魔女コロカントの力によって「にんじん王」と「野菜の家臣」が土から誕生します。地上に出てきた「にんじん王」一行は、地上の生活になじめず、最初は歩くのもおぼつかない様子。最初はゾンビを思わせます。

場面は「宮殿の広間」へ。フリドランとキュネゴンドとの結婚祝賀会が行われようとしていますが、フリドランは遅れて到着。

セレモニーが盛り上がっている最中、「にんじん王」が「野菜の家臣」を引き連れて乱入。参列者一同もびっくり。当初は「にんじん王」に嫌悪感を抱く参列者ですが、魔女コロカントの魔力によって、「にんじん王」に忠誠を誓うことに‥

20191123008フリドランは、「自分が正当な王位継承者だ」と訴えますが、魔法をかけられた側近をはじめとする人々から受け入れられず、宮殿から追放されることに‥

しかもキュネゴンドも魔法のせいで、「にんじん王」に首ったけ。ちなみに「にんじん王」は、王座の椅子を倒して座りますが、これは革命派であることをわかりやすくする演出。当然、寝返った人々も椅子を横にして座ります。

フリドラン本人は宮殿を去りがたいのですが、祖先の鎧兜が登場し、名誉のない王子を呪います。このあたり、衣装が見事(写真をご覧頂けないのが残念)。

20191123009フリドランは遂に宮殿に残ることを断念し、黒魔術師のトリュックと学生に扮した妖精ロバンを連れて逃げ出すのでした。なお、平野さん扮するトリュックは、東洋から来た黒魔術師という想定なので、台詞の多くが何と日本語。これは新鮮。

残った大臣たちは、手の平を返したように「にんじん王」に忠誠を誓うのでした。

フィナーレは「にんじん王」とキュネゴンドを多くの人が囲み大合唱。「革命万歳」といった雰囲気が醸し出されます。

第2幕
暗転で第2幕へ。妖精ロバンの力を借りて、「城の塔」から抜け出したロゼは男装でフリドラン一行に加わります。一方、反逆者の大臣が率いる「にんじん王」の家来はフリドラン一行を拘束するため、追跡しています。なお、改革派の「にんじん王」側に寝返るとコスチュームが野菜仕様になります。だから、すぐにわかります。

20191123010「にんじん王」側に寝返った側近は、警察長官ピペルトリュンクを「にんじん王」側に懐柔しようと試みますが、簡単にその手にはのらず、フリドラン側につくのでした。ただ、ピペルトリュンクは「政治情勢を機敏に看取って強い方につくのが大切」と考えている計算高い男。

オリジナルの4幕版では、妖精の力で砲弾が爆発すると動物(トカゲ、ヒキガエル、鶏、ライオン)が現れ、鶏がコッフルをライオンのところへ連れて行き、彼が吊り下げられるシーンが入っています。ここで、ピペルトリュンクは「王子は最も強い」と叫び、フリドランへの忠誠を誓うことになっています。この場面は観たかったですね。なお、3幕版では、この場面はカットされています。

さて、ここから「にんじん王」を打ち破るアイテムを獲得するため、フリドラン一行の冒険が始まります。

最初に訪れたのは「魔法のワークショップ」(右の写真)。ここには老練な魔法使いキリビビがいます。トリュックもかつて、教えを請うた伝説の魔法使い。フリドリンは、キリビビから呪文を破る手段が「ソロモンの指輪」であることを教えられます。

20191123011「ソロモンの指輪」は、エルサレムを征服したローマ兵が持っており、彼は古代ポンペイにいるのです。キリビビは一行に若返りの援助を依頼し、その行為に報いるため、一行を魔法のランプで西暦79年の古代ポンペイへ送るのでした。

ここでは、キリビビの体をちぎって、焼却炉に投げ込む過激な場面も‥ところが、全部を投げ込むと若くなったキリビビが現れるという演出です。

場面は「古代のポンペイ」。到着した時、すでにポンペイは廃墟に。時空移動のタイミングを間違えたようですが、ここでの5重唱は聴かせます。そこで、一行は魔法のランプを使いベスビオ火山噴火前に時空移動します。

フリドリン一行は、ポンペイ市民に温かく迎えられます(右の写真)。ポンペイ市民が、どうやって来たのかという問いに、「魔法のランプで来た」とも言えず、とっさに「鉄道で来た」と答えます。古代ポンペイ市民に鉄道とは何かと逆質問され、列車を再現する歌とお芝居が演じられます。

20191123012鉄道という「最新の技術」でポンペイの人々を魅了した一行は、キリビビに言われた「ソロモンの指輪」をゲット。その直後、ベスビオ火山が大噴火。一行は、魔法のランプのお陰で、ギリギリで噴火から逃れることができました。

ここで休憩。前半は1時間30分と長いですが、テンポの良い展開なので、冗長な感じはしませんでした。

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