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November 25, 2019

Volksoper「König Karotte」PremiereReport(下)

20191124001現在、ローマ法王が来日されていますが、カトリックの国、オーストリアでも日本での法王の活動が報道されています。

さて、Volksoper「König Karotte」PremiereReport 3回目の今日は、出演者の仕上がりを含めた雑感です。「König Karotte」は、創作された時代が第二帝政から第三共和政への移行時期であったということを踏まえないと、作品の論評は難しいと思います。

また、現在は、そのような政治的背景はありません。この点を踏まえることがポイントだと思います。なお、DiePresseはWeb版で「So siegt Operette über Korruption」という興味深い標題を付けていました。25日にKURIERの新聞評(紙ベース)を見ましたが、見出しは「Der aberwitzige Wahnsinn hat hier mehr als Methode」。Perter Jarolin氏の評価は何と五つ星(★★★★★)でした。

本作品では第2幕をはじめ「ファランドール」に代表される「フランス特有の旋律」が使われています。Feriは、これがフランスでは、どのように演奏されるのか、オリジナルを聴いたことがありません。この「フランドール」が作品を魅力的にしているようです。ただ、恐らくウィーン風の「ファランドール」になっていると思います。

また、オリジナルはフランス語ですが、本作品はドイツ語上演です。当然、フランス語の歌詞をドイツ語にする訳ですから、その過程でニュアンスが変わることもあると思います。

歌手陣のコメントの前に、今回も全員がワイヤレスマイクを使っています。そのため、歌唱力は明確には評価しかねます。

森氏の論文によるとパリ・ゲテ座での初演では王女キュネゴンド、王女ロゼ・デュ・ソワール、妖精ロバン・リュロンの評価が高かったようですが、今回のPremiereでも女性陣の仕上がりが良かったですね。

20191124005また、興味深いのはソリストにはオペレッタの歌役者だけではでなく、オペラ畑の歌手が起用されている点です。これは、本作品が「オペラ的要素が強い」ことと関係があるのかもしれません。

王女キュネゴンドを務めたJulia Kociさんは、歌、お芝居ともに申し分ありませんでした。こういった計算高い女性を演じると上手ですね。

一方、ロゼを務めたJohanna Arrouasさんも、途中から男装になり、ショートカット姿で登場。声の質がJulia Kociさんとは異なりますが、今回は役に合っていたような気がします。セカンドクルーは、Elisabeth Schwarzさんが予定されています。

そして、妖精ロバンのAmira Elmadfaさんは、歌もさることながら、お芝居と台詞が多いのが特徴。フリドラン一行を導く重要な役ですが、お芝居の仕上がりも上々でした。こちらのセカンドクルーはManuela Leonhartsbergerさんが予定されています。

なお、Amira Elmadfaさんは2016/17シーズンに「フィガロの結婚」(Cherubino役)でハウスデビューを果たしたオペラ畑の方。今シーズンは「König Karotte」で復帰です。

20191124002王子フリドラン24世を演じたのはMirko Roschkowskiさん。ちなみにフリドラン24世は、原作ではナポレオン三世を象徴する人物です。Volksoperの出演は久々ですが、オペレッタの出演は初めて。

本人は不本意かもしれませんが、「だらしない王子」という役(実際は、終始、学生に扮装したまま)をうまく演じていたと思います。オペラ畑の歌手なので、歌唱力もまずまずでしょうか。なお、セカンドクルーはCarsten Süssさんが予定されています。

本作品では、タイトルロールながら、結果的にヒール役となる「にんじん王」には韓国出身のSung-Keun Parkさんが起用されました。フィナーレまで、特殊メイクのままなので、素顔を見ることはできません。本作品がハウスデビューです。

オペラ畑の歌手で、ヨーロッパの劇場で活躍している方。モーツァルト、ドニゼッティの作品に出演しています。何箇所かソロで歌う場面もありますが、なかなか良い歌いぶりでした。しかし、特殊メイクのお陰で存在感は抜群。良い演技に惜しみない拍手が送られていました。ところで、こちらのセカンドクルーはSebastian Reinthallerさん。Feriとしては、是非、観たいところです。

なお、おどろおどろしい特殊メイクで終始舞台で存在感を示す「野菜の家臣」。カーテンコールでマスクを外したらビックリ。女性も含む、多種多様なメンバーでした。

20191124003Feriが、一番、気に入った男性歌手は警察長官ピペルトリュンクを務めたMarco Di Sapiaさん。結構、単独で歌う場面も多く、正直、目立ちます。特殊メイクで、いつもの素顔は見えませんが、歌、お芝居共に申し分ありませんでした。こういう役は上手ですね。

そして、今までオペラでの出演が多かったYasushi Hiranoさんが黒魔術師トリュックで起用されたのも嬉しい限り。しかも、ミステリアスな雰囲気を出すため、台詞の多くを日本語という設定にしたのも頭が下がります。歌、お芝居も良く、怪しげな黒魔術師を見事に体現していました。Feriは、オペラでは何回か観ていますが、今回の方が存在感はありましたね。

20191123101_20191124192801もう一人のヒール役魔女を演じた男性のChristian Grafさん。彼は「チャールダーシュの女王」でオイゲン役も演じる芸達者な方。今回もヒール役としての怪演が光りました。

本当はいい男なのですが、特殊メイクの関係で素顔は見えず‥ちょっと、残念。なお、伝説の魔術師キリビビも兼任です。

この他、Feriお気に入りのJosef Luftensteinerさんが大臣Graf Schopp、Martina DorakさんがBaronin Koffre / Christiane, eine Studentin / Corinne / Brigadeführerin der Ameisenという複数の役で起用されています。しかし、複数の役をこなす器用な歌役者さんです。Feriの好きなオペレッタ歌手なのですが、今回は脇を固める側に回りました。

Baron Koffreは第二帝政末期の総理大臣ルーエルを連想される人物設定だそうです。今回はBoris Ederさんが務めていますが、寝返った側近を上手に演じています。

「こうもり」のイーダでは抜群の存在感を示すKlaudia Nagyさんがちょい役(Médulla / Bürgerin von Krokodyne)ですが、登場します。いずれも特殊メイクの関係で、よくわかりません(よく見ていないと見落としてしまいます)が、こういった個性的なオペレッタ歌手の皆さんが出演したことで、舞台が締まったような気がします。

20191124004

Volksoperでは、かつて主役を張っていたオペレッタ歌手が、後年、脇役に回って若手を盛り上げいい味をだすという文化がありますが、今回も、そんなことを思い出しました。

このように見ると、セカンドクルーに結構、魅力的な方が起用されています。それだけにセカンドクルーの皆さんが出演する公演も観たいところです。

Feriの拙い語学力では、残念ながら、どの程度、原作の風刺が再現されていたのかは、理解できませんでした。ただ、台詞や歌に対するお客さまの反応を見ると、それなりに笑える要素が盛り込まれていたようです。

さて、今回、あえて選択された「König Karotte」。オッフェンバック生誕200年であれば、「地獄のオルフェウス」と並ぶ前期の代表作で、最近は上演されていない「美しきエレーヌ」(1864年初演)という選択肢もあったような気がします。しかし、今回、あえて後期、普仏戦争後の作品に光を当てたことに劇場スタッフの見識を感じました。

また、表面的にはドタバタ劇のように見えるので、お子さまでも楽しめるオペレッタ。実際、Premiereでは珍しくお子さまの姿が多く観られました。

余談になりますが、Volksoperの場合、Premiereでは終演後、ホワイエで「お土産」が配布されることがあります。今回はスポンサーが付かなかった関係なので、何もありませんでした。

20191124006最後に森氏の論文から、興味深い話題をいくつかご紹介しましょう。興味深いのは劇作家であるサルドゥは台詞が削られ、音楽部分が増えることを極端に警戒しており、オッフェンバックは、手紙で極端に音楽部分が増えることはないことを、彼に伝えています。こういう葛藤もあるのですね。

「初演」で賛否両論が渦巻いた「König Karotte」ですが、贅沢な演出が功を奏し、ゲテ座の売り上げの回復に大きく貢献しました。同劇場の売り上げは1871年12月に、およそ38000フランまで落ち込んでいましたが、1872年2月には22万フランにまで回復したそうです。

フランスやイギリスにおける楽譜の売り上げに加えて、初演から150回までの上演料がオッフェンバックとサルドゥに支払われることになっていました。

ところが、オッフェンバックの強い要望で豪華な舞台にしたため経費が嵩み、利益は思った程上がらなかったとか‥(これはウィーンで「地獄のオルフェウス」をゴージャスな舞台で上演したことにオッフェンバックが触発された訳ですが、オーストリアも罪作りですね)。しかも、契約の中に150回目の上演で作者達には15000フランの特別手当(今で言う特別ボーナスですね)が支給されることになっていたのです。

初演後、人気を高めた「König Karotte」ですが、劇場側では特別手当の支給をためらい149回目で、やむなく上演を打ち切ったそうです。こういう生々しい話が、公演の継続を左右するとは‥

20191124007さぁ、今回のVolksoper版。ゲテ座のようにオペレッタの観客動員の起死回生作になることを願っているのは、Robert Meyerさんをはじめとする劇場関係者かもしれません。

そう言えば、Premiereの際、開演前、ホワイエでRobert Meyerさんとお目にかかることができました。こちらから声をかけると、Feriを正しい名字で呼んでくれて、至極、恐縮。奥さまもご紹介いただきました。だから私設応援団は辞められません(笑)。

「König Karotte」のReport、お楽しみ頂けましたでしょうか。今シーズン最初のオペレッタPremiereReportだったので、長くなってしまいオペレッタや音楽に興味のない方には退屈だったかもしれませんね。

明日からは「街角のディープな話題」をお届けしましょう。

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Comments

Feri さん、お久しぶりです。Steppke です。

König Karotte の3回目の公演に行ってきました。
出演者は、Kleiner Zauberer の子役を除いて、初日と同じです。(子役は、関係者の子どもでも出演しているのでしょうね)

私も、Les Contes d'Hoffmann を除いて Offenbach の後期作品を聴くのは初めてでしたが、なかなか面白かったですね。
オペレッタ作曲家が最後に1曲だけオペラを遺したと言われますが、Hoffmann が突然現れたのではなく、それに行きつく過程のようなものが見えた感じです。
ただ、かなり削られているとは言え、登場人物も多く、ちょっと話の筋が複雑すぎました。もう少し整理されていれば、分かりやすくて上演もされやすかった(=お金が掛からない)と思われます。まあ、作られた時の事情とか時代背景とかで仕方ないのでしょう。ポンペイとか鉄道とかが出て来るのも、唐突な感じでした。

字幕は、歌の時だけ表示されるのですが、平野さんが日本語で話す時はセリフであってもドイツ語で表示されていました。
平野さんの数少ないドイツ語のセリフの時、字幕に日本語が表示されたのには、笑えました。Volksoper の字幕に日本語が表示されるとは前代未聞でしょうね。

Fridolin XXIV., Prinz von Krokodyne は、プログラムの日本語でも「王子」と訳されていますが、君主なので「公爵」といったところなのでしょう。

ウィンナ・オペレッタや、私が好きな1920年代/30年代前半のドイツ語のオペレッタなどとはかなり異なるものの、興味が惹かれる作品の優れた上演でした。
Offenbach の後期やフランス・オペレッタ(特に opéra-bouffe-féerie)にも手を広げる必要がありそうです。

ちなみに、翌日の Die Csárdásfürstin には行ってません。まだ新演出に行こうという気が起こらないのと、今回の主目的がベルリンの Samson et Dalila だったからです。(Garanča はやはり凄かった!)

Posted by: Steppke | December 04, 2019 16:50

Steppke様

ご覧頂いたようで、何よりです。最近、Volksoperで上演されたオペレッタとしては、良くできたプロダクションだと思います。

オリジナルの3幕版で上演すれば、内容は整理されたかもしれません。ただ、3幕版では重要な部分が削られているので、あえて4幕版を基本にしたと思われます。

上演時間の制限がなければ、無理のない演出も可能でしょうが、このあたり、難しいところかもしれません。今シーズンは、「ジプシー男爵」の新演出が残っていますが、こちらは「定番」なだけに、どのような形になるか気になっています。

Posted by: Feri | December 08, 2019 08:18

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