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January 07, 2020

オーストリアの救急ヘリコプター

20200106006今日は「救急ヘリコプターの話題」をお届けしましょう。日本では、必ずお正月になると「餅を喉に詰まらせて病院に搬送された」というニュースが流れますが、死亡事故が起きているのに「餅」は危険な食品に指定されませんね。

日本にあるFeriの実家は、近くにドクターヘリが配置されている某基地病院がある関係で、上空を時々ドクターヘリが飛行しています。

日本のドクターヘリは2019年に運航開始20年を迎えましたが、平成30年の段階で、43道府県に53機のドクターヘリが配備されており、患者さんの救命率向上に大きく寄与しているという話を耳にしました。

体制の整備により、搬送回数(ミッション数)も大幅に増え、2016年には25000件を越えています。

日本のドクターヘリは、「大人の事情」から厚労省の管轄になっており、地方自治体がイニシアチブをとって運行されています。

基地病院にドクターヘリが常駐しており、消防機関などからの要請を受けて、基地病院からフライトドクターとフライトナースを乗せて、現場へ向かいます。現場到着後、患者さんとランデブーした段階から本格的な治療行為が始まり、その状態で基地病院へ搬送する形になっています。

20200106003なお、ドクターヘリの運航については、民間会社へ委託されています。

一方、オーストリアの場合、地方自治体や国ではなく、全国規模の組織であるÖAMTC(Österreichischer Automobil-, Motorrad- und Touring Club、オーストリア自動車、バイク、ツーリングクラブ)とARBÖ(Auto-, Motor- und Radfahrerbund Österreichs、オーストリア自動車、サイクリスト協会)が全国規模で一元的に運営しています。この両組織は日本のJAFに近い団体ですが、活動は広範囲に及んでいます。

ただ、救急ヘリコプターの運営には多額の費用がかかるため、スポンサー企業(大手保険会社)に加えて、各種の寄付でまかなっているようです。救急ヘリコプターに関しては、ÖAMTCの方が、規模が大きいようです。

20200106005ヨーロッパの場合、一般的にはフライトドクターは乗務せず、高度な救命措置を行うことができるメディック(航空救難員、日本の救急救命士に近い存在)が搭乗しており、この点が、日本とは異なるようです。

ただ、法令の関係で、ヨーロッパのメディックは、日本の救急救命士よりも高度な医療行為が可能なので、一概に比較はできません。

さて、オーストリアではÖAMTCの場合、特別に訓練された選任パイロットに加えて、メディック(航空救難員)、フライトドクターの3名でチームが編成されています。フライトドクターが搭乗しているため、日本に近い体制です。

日本ではフライトナースが乗務しますが、この役目を航空救難員が務めます。航空救難員は、空中でホバリングしているヘリコプターから降下して救助するスキルを備えています。このあたり、日本の自衛隊救難隊のパラメディックと相通じるものがあります。

20200106002なお、パイロットはÖAMTCの所属ですが、医療要員は赤十字、山岳救助サービス、ウィーン救助隊、救急病院などから派遣されています。もちろん、志願制です。
使用されている機材は日本でもおなじみのEUROCOPTER社のEC135です。この機材は日本のドクターヘリでも使っているところが多いですね。

ところで、オーストリアでは、救急ヘリにはChristophorosという愛称がついていますが、これはキリスト教の伝説的聖人の名前です。「旅人や自動車運転手の守護の聖人」とされているところから、愛称に採用されました。

以上がオーストリアの救急ヘリコプターの概要ですが、先日、こちらで2019年のÖAMTCが運用する救急ヘリコプターの活動状況が紹介されていました。

現在、オーストリアにはÖAMTCが運用する救急ヘリコプター基地は全国に16箇所、設置されており、2019年には年間18921回のミッションを行いました。1日平均、52回のミッションです。

日本のドクターヘリよりもミッション数が少ないですが、国土が狭いこと、人口が少ないことを考えると、驚異的なミッション数だと思います。

20200106004また、夜間のミッションも870回に増加しました。日本ではドクターヘリは、有視界飛行のため、「日の出から日没までの運航」と定められていますが、オーストリアの場合、一部の基地では暗視ゴーグルを使った夜間フライトを実施しており、24時間運行を行っています。

ミッションの内訳ですが、16%は職場、家庭、レジャーなどで発生した事故、12%が山岳事故だったそうです。

日本では山岳救助は、防災ヘリコプターや警察のヘリコプターが投入されますが、山岳国であるオーストリアでは、その任務も救急ヘリコプターが担当している訳です。

その中でウィーンを管轄するÖAMTCの救急ヘリコプター(Christophorus9、基地は3区のBaumgasse 129にあります)のミッションは1724回。これはオーストリアの救急ヘリコプター基地の中で最も多いミッション数です。

Subenに基地を持つChristophorus Europa3は24時間体制なので、1613回のミッションをこなしました。

20200106001日本では、ドクターヘリの運行を民間のヘリコプター運航会社へ委託していますが、オーストリアでは、ÖAMTCが独自にパイロットを採用し、養成しています。

パイロットの要件は最低飛行時間2000時間(これは、ごく最近まで日本でも同じでした)に加えて、山岳地帯でのフライト経験や計器飛行のライセンス所持など、結構、ハードルが高いようですが、入隊後は、さらに救急ヘリコプターパイロットに必要な訓練を重ねた上で、現場の任務に就きます。

また、メディックについても、救急医療訓練だけでなく、山岳救助訓練を済ませた上に4年間の実務経験をしていることが入隊の条件になっています。

そのため、パイロットをはじめとする運行乗務員の練度も高いようで、日本では行われていない夜間のミッションや、上空にホバリングした状態でメディックがホイストで降下し、要救助者を収容するミッションも行っています。

国土が狭いオーストリアで、16ヵ所の救急ヘリコプター基地があるため、概ね派遣要請から15分程度で、現場へ到着することができるようです。

20200106007Feriは、日本で元ドクターヘリのパイロットだった方の運営しているブログを定期的に見ていると、日本のドクターヘリの運航やパイロットの養成については、問題が山積しているようです。

特に経験豊富な優秀なパイロットが定年退職(いわゆる団塊の世代)し、後継者難が深刻化しているようです。これは、民間会社に運行を委託しているために、発生している問題だとか。そのため、飛行経験が1000時間に短縮された門戸を広げたそうです。

本来であれば、日本もオーストリアのように全国を一元的な組織で運営した方が、パイロットの養成を始め、協力体制も含めて強化できるのでしょうが、設立の経緯から、難しいようです。

なお、日本では、この他に地方自治体が関与している消防防災ヘリコプターなども存在します。

ところで、日本では、意外なことに首都の東京にはドクターヘリが配備されていません。これは島嶼部や奥多摩などを除くと、救急車での対応が可能との判断によるものという話です。

東京の場合、ドクターヘリが着陸できるスペースが少ないため、効率的な運用が難しいという側面もあるのかもしれません。

ウィーンでは、事故発生現場の近くに直接、着陸して要救助者を収容、AKHなどの基幹病院へ搬送するケースが多く、市内を歩いていると、救急ヘリが飛んでいる姿をよく見かけます。感覚としては、「空飛ぶ救急車」といった感覚で積極的に運用されているようです。

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