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September 19, 2020

技術博物館で大型蒸気機関車12.10号機の展示開始

2020091803今日はウィーン技術博物館(Technischen Museums Wien)で9月18日から一般公開が始まった「大型蒸気機関車の話題」をお伝えしましょう。

訪問した方も多いと思いますが、シェーンブルン宮殿に近いウィーン技術博物館は、工業技術に関する総合博物館です。Feriは絵画などの美術品より工業技術に興味があるので、かなり前から足を運んでいました。

交通関係の展示も多く、かつては技術博物館に隣接する機関車公園に多くの蒸気機関車が展示されていました。

2020091801しかし、1999年、技術博物館の再編により、機関車公園が閉鎖され、多くの機関車がシュトラスホーフ鉄道博物館に移りました。現在、館内に少数の鉄道車両が展示されているにとどまります。

今回、以前から技術博物館で保存されていたオーストリア最大の蒸気機関車12型(登場時は214型)が修復の上、館内(西ホール)に展示され、9月18日から一般公開が始まりました。

2020091804一般の皆さまには馴染みのない12型ですが、鉄道ファンには有名な機関車です。

1928年から1936年にかけて、ウィーンのフロリツドルフ機関車工場(Floridsdorfer Lokomotivfabrik)で13両(214.01~13)が製造された高速旅客用蒸気機関車です。

全長は22.6m、重量138t、軸配置は1D2(先輪が1軸、動輪が4軸、従輪が2軸、通称バークシャー)、動輪経は1940mm、2700PS、最高速度120km/hです。

ただ、試運転では154km/hを記録しています。動輪間を結ぶ主連棒(メインロッド)が、世界で最も長いことでも知られています。

2020091805落成後、ウィーン-ザルツブルク間(西鉄道)の急行列車に使用されました。

この機関車が誕生した背景ですが、1927年、当時のオーストリア連邦鉄道は幹線の電化を一時的に中段することを決定します。

そこで、ウィーン-ザルツブルク間を電気機関車牽引の場合と同じ所要時間で結ぶための高性能蒸気機関車の開発を決定。

2020091806114型(3気筒)と214型(2気筒)という2種類の機関車が試作されましたが、最終的に214型が採用されました。

落成後、ウィーン-ザルツブルク間、ウィーン-パッサウ間の急行列車の先頭に立ちますが、オーストリアがドイツに併合された際、214型はドイツ帝国鉄道に引き継がれ(形式は12型に変更)、レーゲンスブルクまで乗り入れるようになりました。

戦後、ウィーン-ザルツブルク間の電化が完成すると、12型は南鉄道へ移動し、ウィーン-ヴィラッハ間で使用されるようになります。

2020091807しかし、軸配置が禍し、セメリング線の急勾配と急曲線には適応できず、動輪の摩耗が頻発。1956年には休車となります。

新製からわずか20年で、まだまだ使えることから、ÖBBでは海外への売却を視野に入れて、しばらく保管していました。

当時、近隣諸国(特に西側)でも幹線の電化が進み、本線用の大型旅客用蒸気機関車は買い手が付かず、1961年と1962年に全機廃車となりました。何しろ汎用性に欠けますから‥

2020091809ただ、歴史的な技術遺産であるため、12.10号機だけは、解体されることなく、ÖBBが保管していました。

1970年代、ウィーン技術博物館に隣接する機関車公園に静態保存されます。ちなみにFeriも機関車公園に保存されている12.10号機を見ており、写真も撮影しています。

20200918101999年、技術博物館の再編により、12.10号機はシュトラスホーフ鉄道博物館へ貸与譲渡されました。

Feriも2007年にシュトラスホーフ鉄道博物館を訪問した際、屋外に保存されている12.10号機を見ましたが、主連棒も外されて痛々しい限りでした。

2018年10月、12.10号機は2019年にWiener Neustadtで開催が計画されていた展示会(Niederösterreichische Landesausstellung 2019、2019年3月10日~11月30日までWiener Neustadtで開催)への出展が計画されます。そのため、Korneuburgへ運ばれ、痛んだ外部の修復作業が行われます。

2020091811が、12型はWiener Neustadtに馴染みのない機関車であるため計画は頓挫。2019年10月、再びウィーン技術博物館が返却を求め買い取り、徹底した修復の上、今回の屋内展示に至ったものです。

ただ、重量が重いため、修復場所のKorneuburgから分解された形で博物館の展示ホールに搬入。その後、再組立が行われました。しかし、すでに完成しているホール内に展示するため、作業はかなり困難だったようです。

2020091802車輪の上にボイラーを載せる「車入れ」は、大型クレーンが使えれば比較的楽なのですが、館内では大型クレーンは使用できず、フォークリフトを使って、ボイラーをリフティングしたようです。

今回、インタラクティブビデオインスタレーションが設置され、実際に12.10号機が動く仕組みがビジュアルで理解できるようになっています。

なお、12.10号機は現存する唯一オリジナルの214型(12型)です。今回、12.10号機の展示に合わせて、有料のキュレーターツアー(45分)も開催されています。

シュトラスホーフ鉄道博物館に保管されていた時代を知るFeriとしては、今回、きれいな状態で技術博物館に屋内展示された12.10号機を見ると感慨深いものがあります。

紆余曲折はありましたが、12.10号機にとって「安住の地」が見つかって何よりです。

最後にご紹介する動画は ÖGEGが保有している1214号機の保存運転の様子ですが、現在は静態保存になっています。また、同機はオーストリア製ではなく、ルーマニアがライセンス生産した同型機を買い取ったもの。そのため、12.14号機というのは現役時代には存在しない機番です。


 

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Comments

Wiener Neustadtはセメリンク線を含む南部路線の拠点ですが、マリアヒルファー通りの技術博物館との関係が解り難く、補足説明していただけると幸いです。
当該機の軸配置1D2(1-4-2)は、310タイプの1C2とならんで、先輪と従輪の配置はオーストリア機の冴えを思わせます。
マウンテン2-4-1(2D1)はフランス、東部路線が発祥で動態保存機の他にミュルーズにも展示されていますが。

Posted by: West Bhf. | September 19, 2020 06:57

West Bhf.様

早々にコメントを頂き、ありがとうございます。Strasshof鉄道博物館から修復のため搬出された理由は、2019年に予定されていた展示会(Niederösterreichische Landesausstellung 2019、2019年3月10日~11月30日までWiener Neustadtで開催)で出展するためだったようです。

巨大な機関車であるため、当初計画では展示会のシンボル的存在として、Wiener Neustädter Hauptplatzで展示される予定でした。

ただ、本文記事にも書いたようにWiener Neustadtと関係が薄い機関車で、展示会への関連性が低いと判断。結局、出展は見送られたようです。それ以上に修復を行っていたKorneuburgからWiener Neustadtへの輸送費用が高額で、税金の無駄遣いであるとの指摘も大きかったようです。

展示会への出展取りやめは、Korneuburgでの修復工事中に決定され、資金問題も含めて修復工事の継続が議論されました。この時は、技術博物館の館長が修復の継続を強く進言し、修復が続けられました。

また、本文では技術博物館からStrasshof鉄道博物館へ譲渡と書きましたが、実際には貸与(貸出)だったことがわかりました。

せっかく外観を修復したにもかかわらず、Strasshof鉄道博物館に戻しても屋外展示になるため、技術博物館側が貸与中止を決め、Strasshof鉄道博物館へ通告。今回の技術博物館屋内展示に至りました。どうも修復予算は技術博物館側が負担していたようです。

ただ、Strasshof鉄道博物館側(現在はÖsterreichischen Straßenbahn- und Eisenbahn-Klubが運営)は、目玉展示車両の1つが消えてしまうことに非常に不満を持っているようです。

Posted by: Feri | September 19, 2020 10:48

12型の近況を教えていただきありがとうございます。私は1982年に技術博物館でこの機関車を見ました。同じ場所に展示されていた古色蒼然とした16型にくらべ近代的でスマートな機関車という印象でした。

Posted by: Kamenaga | September 21, 2020 06:43

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