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October 14, 2020

「鉄道の夢」から「夢の鉄道」へ、鉄道ファンの夢を実現した男(下)

今日は「Vom Eisenbahntraum zur Traumeisenbahn - Die Pfalzberger Feldbahn der Familie Stotz」の後半、完成に至るまでに道のりをお伝えしましょう。

2020101404まず、ハロルドさんは、軌間600mmという手頃な産業用ディーゼル機関車(ドイツを代表する産業用機関車メーカーGmeinder GmbH製)を見つけ、所有者と交渉の末、入手します。

この機関車は重量4.7tの2軸タイプ。主に大規模な土木工事などで資材の運搬に使用されるポピュラーな機関車。ある意味、個人で所有することが可能なサイズかもしれません。

ちなみに2枚目の写真は、この機関車が現役で活躍していたことのものです。また、3枚目の写真は、この機関車に製造銘板です。

2020101423機関車の入手に目処がついたところで、ハロルドさんは、次にレールや枕木(カラマツ製400本)など鉄道建設に必要な資材を調達。何と家族総出で、自宅周囲に鉄道建設を始めたのです。

オーストリア人は時間をかけて自宅を自分で建設してしまう方もいらっしゃるので、「日曜大工の延長」という感じで、このような工事も決して不可能ではありませんが‥

線路敷設に不可欠なバラスト(砂利)は170t。トラックで自宅にバラストが搬入された際、ハロルドさんは、大変な仕事になると、改めて実感したそうです。ちなみにハロルドさんが算出した工数は約11000人工だったそうです。

2020101414本人がYouTubeに静止画で構成された建設記録をアップしていますが、それを見ると中途半端な工事ではなく、ユンボで庭を掘り下げて地盤を固め、そこにバラストを敷き、枕木を設置するという本格的な工法が採用されています。

2020101408模型ではないのでレールは直線で納品されますので、それを曲線に合わせて変形させる作業も家族総出で行いました。

また、レールを敷設するため、従来からあった花壇や生け垣の移設も必要。住まいを取り巻く鉄道には橋が2つかけられたほか、車両を保管する車庫も新たに作りました。

2020101409とにかく建設中の写真を見ると、車両の整備以上に土木工事が本当に大がかりなことがわかります。それを家族だけでやり遂げてしまう「情熱」には頭が下がります。

入手した機関車は、屋内に保管されていたため、状態はかなり良かったようです。しかし、残念なことに動態ではなかったようで、足回りや動力装置などの基本的な修復は鉄道会社に依頼しています。

2020101413ただ、運転室まわりなどの修復は自分たちで行っています。左の写真は修復工事を終えて鉄道会社の工場から搬出される機関車です。

また、現在、人車となっている車両は、通称「ナベトロ」と呼ばれる砂利などを運搬する貨車(トロッコ)。この足回りを活用して、自分たちで人車に改造しています。

2020101424それにしても、外部の職人さんや技術者を起用せず、自分たちだけで鉄道を建設してしまうのですから、それなりに技術力(土木、木工、機械、電気など)をお持ちになっているのでしょう。

2020101412 ハロルドさんは、どのようなご職業に就いているのかわかりせんが、たいしたものです。

一家の努力が実り、着工から1年半でファルツベルク軽便鉄道は完成しました。

ハロルドさんは、“父のために作った”とは一切、言わなかったそうですが、ヘルムートさんは自宅のまわりを走る列車に乗って大変、喜んでくれたそうです。親子ですから、以心伝心です。

20201014102018年8月15日、夢を叶えたヘルムートさんは天国へ旅立ちました。彼の遺骨は線路脇に埋葬されているそうです。

ハロルドさんは、“父はいつも私たちと一緒です。列車に乗るたびに、一緒にいてくれます”と語っています。ヘルムートさんが天国へ旅立っても、「夢の鉄道」に終わりはありません。

2020101416何とハロルドさんは、現在、自宅から近くの森まで路線延伸を計画しています。“軽便鉄道の列車でキノコ狩りに行けるかも”とハロルドさんとヒルデガルトさんは語っています。ただ、森までストッツ家の土地なのかどうかは、存じませんが‥

2020101415YouTubeにÖBBが制作したビデオがアップされていますが、鉄道建設中のスチル写真やドローン撮影、本人へのインタビューも加えた見事な作品です。このビデオをご覧になると、この軽便鉄道の様子がよくわかります。

ハロルドさんの実行力には頭が下がりますが、それ以上にオーストリアらしい「家族の愛情」が伝わってくる心温まるエピソードではないでしょうか。

2020101425 Feriは、このエピソードに接して、オーストリアに限らず欧米では「鉄道趣味」が市民権をえているということを改めて痛感しました。

もちろん、この例は「例外中の例外」だからこそ、ÖBBが取り上げたのだと思います。しかし、少なくとも奥さまのヒルデガルトさんを初めとする家族の理解が得られていること、自宅敷地内とは言え、大規模な土木工事をする訳ですから、近隣との関係もあるでしょう。

2020101417鉄道趣味というものが、立派な大人の趣味として認知されている文化がベースに存在しているような気がします。

鉄道趣味に限らず、その前提は「大人としての節度ある行動」にあるような気がします。ある意味、躾の行き届いている愛犬がホイリゲやレストランに入ることが認められていることと一脈通じるものがあるのかもしれません。

最後の写真は帰還者の前で寛ぐハロルドさんとヒルデガルトさんです。きっと天国から Pfalzberger Feldbahnを見守っているヘルムートさんの話でもしているのでしょう。

最後にÖBB制作のビデオとご本人制作の静止画ビデオをお目にかけましょう。まるで夢のような鉄道建設であることが、鉄道ファンでない方にもご理解いただけると思います。許されることならFeriも、Pfalzberger Feldbahnを訪問してみたいものです。

 

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