Hotel Sacherがドライブスルー方式でSacher-Torteを販売
新型コロナウイルス感染再拡大によるロックダウンで、オーストリアでは各業界も大きな打撃を受けているのは、皆さまご存じのとおり。
本来であれば、11月11日の聖マルティン祭以降、クリスマスに向けて商業活動が活発になる時期です。それが12月6日までロックダウンですから、皆さま頭が痛いところでしょう。
さて、Sacher-Torteで有名なHotel Sacherが、ロックダウン当日の11月17日、新しいサービスを開始すると発表しました。何と同ホテル自慢のスィーツSacher-Torteをドライブスルー方式で販売するというものです。
現在、閉鎖されているホテルの駐車場に駐車すると、従業員がオーダーをとり、スィーツを車まで持ってきてくれるというもの。支払いは非接触方式も可能。毎日8時から19時まで営業している点がセールスポイントです。
また、徒歩で来店したお客さま向けにKärntnerStraßeの角を曲がったSacher Confiserieにも販売エリアが開設されました。
同ホテルのDirektor であるAndreas Keese氏は“オリジナルのSacher-Torteを非接触で購入し、家に戻って楽しんでください。私たち全員が安全で健康な状態を保つことができます”と語っています。今回、kleineren Sacher-Würfelも販売される予定です。
ところで、今や日本のコンビニエンスストアでも販売されている「Sacher-Torte」ですが、皆さまは誕生のいきさつをご存じでしょうか。以前、日本オーストリア食文化協会の方から詳しく教えていただきました。
1832年、クレメンス・メッテルニヒ(Klemens Metternich)に仕える料理人の一人だったフランツ・ザッハー(Franz Sacher)が考案したもの。
当時、フランツ・ザッハーはまだ16歳で、下級の料理人でしたが、当時、病床に伏せっていた料理長の代わりにお菓子屋見習いになって2年目のフランツ・ザッハーにメッテルニヒから“飽食した貴族たちのために、かつて誰も食したことのないようなデザートを作るように”との命を受けて作り上げたのが、あの有名になった「Sacher-Torte」だったのです。
しかし、この「Sacher-Torte」は、正確には彼の発案ではありません。というのはチョコレートを使ったケーキは誰でもが想像できるようで、18世紀前半には文献上にも出現しており、各国でもチョコレートを使ったケーキは作られていました。
「Sacher-Torte」のポイントは、当時、作られていたチョコレートケーキをヒントにハプスブルク家のお家芸である「食材に糸目をつけなかった」ことです。
つまり、当時、高級品であった砂糖、バター、チョコレートをふんだんに使ったのです。もちろん、ただ大量に食材を使用したからと言って美味しいスィーツが出来るはずもありません。
彼の天才的なひらめきで表面全体を溶かしチョコレート入りのフォンダン(糖衣)で甘くコーティングされたケーキに、微妙な酸味のあるアンズのジャムを塗ったバランスが絶妙で、他のチョコレートケーキの味わいとは一線を画す存在になりました。
実は、その後「Sacher-Torte」を巡って、Demelとの訴訟に発展します。最終的にデメルのものはDemel's Sachertorte、Hotel SacherのものはOriginal Sacher-Torteとして、それぞれ販売されることで決着。
そのため、Andreas Keese氏がコメントであえてOriginal Sacher-Torteという名称を使っているのです。
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