創業130年を迎えたANKER BROT
今日はウィーンの老舗ベッカライチェーン「ANKER BROT」の話題です。
「ANKER」は、今年、創業130周年を迎えることになりました。同社は1891年、Heinrich MendlとFritz Mendlがウィーン近郊Laaerbergにパン・菓子工場を設立しました。「信頼の象徴」として錨をパンに刻印したことから、後に「ANKER」が工場の名称になります。
創業者の2人は、最初からベッカライで初めて生地を作る機械を導入し、25名の職人が1日、約2000個のパンを焼いていました。
個人が経営する小規模なベッカライが中心であった時代に大量生産の手法を導入した訳で、これが今日の「成功の礎」となった訳です。
第1次世界大戦中は、パンの製造だけでなく、自社が所有していた畑でとれた、穀物を畜産家に提供するなどの支援も行っています。
1920年頃には、ANKERブランドを全面に打ち出した営業展開を行うなど、ブランディングにも力を入れるようになります。
順調に業績を伸ばしていたANKERですが、第2次世界大戦が始まると様相が一変します。
当時、ナチス・ドイツが進めていたユダヤ人の影響下にある企業をアーリア人に売却させ、ユダヤ人を経済活動から排斥する経済政策Arisierung(アーリア化)を進めていました。
終戦後の1945年4月、ウィーンで食料供給を再開するための緊急プログラムが開始されます。
ANKERの工場も戦災で破壊されましたが、創業者のMendl一家はウィーンに戻り、ANKERは再びMendl一族の所有となりました。そして、工場を復旧し、操業を開始。ウィーンの住民にパンの提供を再開します。
時がたち、1970年代、ANKERは全盛期を迎えます。工場でのパンの大量生産で使用される設備は、この時、ANKERで導入されたものです。
原料の全自動混合システムなどの導入により、従来、2日間の煩雑な製造工程が、8時間に短縮できるようになりました。
これらのシステムは、14カ国で特許を取得しており、現在でも同社の成功要因の一つとなっています。
1990年代初めには、約2500名の従業員を擁し、オーストリア全土に370の支店を持つ魚介のリーディングカンパニーに成長します。
2013年、経営の安定を図るため、ANKERはAustro Holding Gruppeのメンバーになります。
そして、2021年、創業130年を迎えることになりました。同社の常務取締役Walter Karger氏は“私たちは、130年の伝統を誇りに思い、ウィーンの人々の生活の質の向上に貢献してきました”と述べています。
同社では、創業130年を記念して、記念誌(社史)「Ankerbrot - die Geschichte einer großen Bäckerei」を出版。一般の書店とANKER全店で、25Euroで販売されています。
また、1月24日にはORF2で、同社のドキュメンタリー番組が放送される予定です。
さらに「SüßeAnkerl」が、ANKER全店で購入できるようになりました。1周年記念商品は、最高級のイースト生地を使用しており、錨の形をしています。なお、収益はWiener Grätzel-Projekteに寄付されることになっています。
トップの写真は、かつて旧市街am hofに面した場所にあった店舗です。昔の面影を残したお店でFeri、お気に入りだったのですが、その後、レストランになってしまいました。
現在の標準店舗からはシンボルマークだった錨が消えて、ちょっと寂しくなったような気がします。
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