January 14, 2020

「Gräfin Mariza」再演レポート(下)

20200113002

昨日に引き続き「Gräfin Mariza再演レポート」をお届けしましょう。演出に関しては、前回のものを踏襲しており、大きな変更はありません。

「謎の少女」がストーリーテラーとして、Tschekkoと一緒にポイントで舞台袖から登場します。本筋とは余り関係がないので、この演出は、どうかな‥と思っています。

また、ジュパンが1幕でマリッツァに強烈にアプローチする場面では、例によってジュパンと同じ格好をしたダンサーが12名登場し、ジュパンの熱意を表現しています。

ここも、やり過ぎの感がありますが、まぁ、テンポの良い踊りがメインなので、ギリギリで許容範囲と言えるでしょう。なお、Jakob Semotanさんは、体格が良いので、群舞の中でも存在感があり、埋もれることはありませんでした。これは、非常に良かったですね。

20200113001また、ジュパンがリーサにアプローチする場面は、Jakob SemotanさんとJuliette Khalilさんの体格が随分違うため、ユーモラスな感じが強調されていました。2人の息もあっていましたね。

また、出番は少ないですがキーパーソンとなっているマニャはAnnely Peeboさんだったので、抜群の歌唱力で存在感を発揮していました。前回の上演時にも、Annely Peeboさんがよく起用されていたので、役作りも完璧でした。

また、2幕のタバリンの場面では「Die Bajadere」の楽曲が使われて、バレエ団による華麗なダンスが披露されるのは従来どおりです。

オペレッタでは、リフレインがポイントになるケースが多いのですが、本演出では、3幕のハイライトであるマリッツア、ポプレスク、ジュパンの三重唱のリフレインが1回と少ないのが残念。

これは、3幕の時間短縮を図るためだと思うのですが、リフレインの途中で舞台が回り、ボジェナ侯爵夫人とペニジェクが登場する演出です。

202001120073幕については、お芝居が中心になりますが、ボジェナ侯爵夫人とペニジェクの掛け合いが大受けでした。ベテランのHelga PapouschekさんとRobert Meyerさんですから、アドリブも含めて、見応えのあるお芝居でした。

なお、ボジェナ侯爵夫人とポプレスク侯爵の再会場面については、過度な演出ではなく、好感が持てます。

3幕後半では、リーサとジュパン、ボジェナ侯爵夫人とポプレスク侯爵、ペニジェクが一緒になって歌う場面が見どころですが、ここもリフレインがないのが寂しいところ。

Feriは、4年ぶりに観たわけですが、Karsten Januschkeさんの指揮もよく、カールマンらしい躍動感あふれる楽曲の演奏は見事でした。

カーテンコールでは、Caroline Melzer とJuliette Khalilさんに花束が投げ込まれました。オペレッタの花束は久しぶりですね。

Continue reading "「Gräfin Mariza」再演レポート(下)"

| | Comments (5)

January 13, 2020

「Gräfin Mariza」再演レポート(上)

20200112001日本では、今日は「成人の日」でお休みですね。華やかに着飾った若い方が街中で見られることでしょう。12日の日曜日、ウィーンは快晴。気持ちの良い1日となりました。天気が良いと、散歩が好きなウィーン子は、一斉に繰り出します。Feriも、その1人‥

さて、2020年、最初の「オペレッタの話題」は、Volksoperの「Gräfin Mariza再演レポート」をお届けしましょう。

2019/20シーズン、VolksoperでFeriが期待していたのは、カールマンの傑作「Gräfin Mariza」の再演です。

Feriは1998年からVolksoperでオペレッタを観始めましたが、今日に至るまで、同一演目でPremiereを3回経験した作品が「Gräfin Mariza」です。

最初は2002/03シーズン(Premiereは2002年12月)。この演出は場面設定を全面的に変えてしまった上に、3幕がテレビショーの形式をとるなど、正直、最悪の作品でした。

なにしろ収容所のような農園に、カリビアンバンドが出てくるのですから‥Volksoperの「オペレッタ暗黒史」と言える演出です。

その後、ブダペストとの共同制作による新演出が2006/07シーズンにPremiereを迎えました(Premiereは2006年12月)。本演出は、正統派に戻り、明るく楽しい舞台に仕上がっており、Feriは最も気に入った「Gräfin Mariza」でした。

Sándor Némethさんがポプレスク公爵に起用されるなど、キャスティングも良かったという印象です。

20200112004ただ、ブダペスト色が強かったことが影響したのか、2013/14シーズンに再度、演出改定が行われました(Premiereは2014年3月)。最近の傾向で若干、暗い舞台になりましたが、舞台設定やお話の展開はほぼオリジナルのままで、安心しました。

本作品は、3幕がお芝居中心なので、その対応が鍵を握ります。この演出ではペニチェクにRobert Meyerさんを起用し、お芝居で魅せる展開にしたのが、良かったかもしれません。

本作品は2シーズン上演されたものの、その後、残念なことに上演が途切れてしまいました。

そして、2019/20シーズンに再演が決まったものです。Volksoperの場合、上演期間が途切れると、新演出に切り替える傾向があったのですが、最近は「地獄のオルフェ」、「ヴェネチアの一夜」など、出演者は変わりますが前演出を踏襲するケースが増えてきました。

ある意味、良い演出ならば、無理に演出をかえる必要はないので、結構なことです。

Feriが出演者を観て喜んだのはタイトルロールのGräfin MarizaにCaroline Melzerさんが起用されること。

それでは、再演初日の様子をお伝えしましょう。久しぶりに「オペレッタらしいオペレッタを観た」というのが、Feriの率直な感想でです。

指揮はフリーの指揮者Karsten Januschkeさん。今シーズンは、本演目だけの担当です。余談ですが2019年5月、日本の新国立劇場で「Don Giovanni」を振っています。

主にドイツの歌劇場への出演が多いようです。オペレッタは2018年にVolksoperで「Zirkusprinzessin」を振っていますが、Feriは観ていません。

20200112003主な出演者は、以下のとおりです。
-Gräfin Mariza:Caroline Melzerさん
-Fürst Populescu:Toni Slamaさん
-Baron Koloman Zsupán:Jakob Semotanさん
-Graf Tassilo:Carsten Süssさん
-Lisa, seine Schwester:Juliette Khalilさん
-Karl Stephan Liebenberg:Nicolaus Haggさん
-Fürstin Božena:Helga Papouschekさん
-Penižek, ihr Kammerdiener:Robert Meyerさん
-Tschekko, ein Diener:Franz Suhradaさん
-Manja, eine Zigeunerin:Annely Peeboさん
-Ein Mädchen:Emma Westerkampさん

Continue reading "「Gräfin Mariza」再演レポート(上)"

| | Comments (0)

December 31, 2019

2019年の「オペレッタ観賞」を振り返って

201911230062019年も、1年間、当ブログにお付き合いいただき、ありがとうございました。2004年9月に当ブログを開設したので、今年で15年になります。まぁ、良く続けられたものです。

Feriにとって、2019年は激動の一年でした。日本滞在中に自然災害の直撃も受けましたし、自分の身辺にも大きな変化が訪れました。

さて、今日は当ブログ、恒例の「今年のオペレッタ観賞を振り返って」をお届けしましょう。

まず、2019年に観たオペレッタですが、2008年に続き、非常に少なくなってしまいました。

 Volksoperでは「ヴェネチアの一夜」、「姉さんと私」、「Axel an der Himmelstür」、「地獄のオルフェ」、「チャールダーシュの女王」、「にんじんの王」の6作品、そしてバーデン市立劇場では「ファテッニッツァ」です。

Schwester_015とは言っても、「姉さんと私」、「にんじん王」の2作品は、しっかりPremiumとゲネプロに顔を出しました。Volksoperで上演されたオペレッタのPremiereについては「皆勤賞」です(笑)。

ゲネプロを含めると、2019年のオペレッタ鑑賞回数は10回。かろうじて二桁になりましたが、最も多かった2016年は27回ですから、三分の一という惨憺たる結果。とても「オペレッタにはまっている男」というハンドルネームを名乗れない状況です(涙)。

当ブログでオペレッタ記事のコメントをお寄せ頂くSteppke様も、ウィーン・オペレッタ界の「体たらく」に愛想をつかして、ドイツ方面に舵を切ってしまったほどです。

Orpheus_0030022さて、Feriが2019年に観た作品で、ベストのものは‥作品そのものは大好きですが、設定を含む演出が気にくわない「チャールダーシュの女王」は却下。

再演ものの「ヴェネチアの一夜」と「地獄のオルフェ」については、演奏は申し分ありませんが、出演者が物足りないので、これも却下。

20191230003「Axel an der Himmelstür」もなかなか良い作品ですが、個人的には好きなタイプのオペレッタではないので、ベスト1にはなりませんでした。

このような状況では、従来、バーデン市立劇場がベスト作品の候補に挙がるケースが多いのですが、「ファテッニッツァ」は歌手は揃っていたものの、舞台装置が抽象的でFeri好みでなかったので、却下。

Axel_005残るはPremiere作品の「姉さんと私」と「にんじん王」。消去法みたいで好きではないのですが、あえて、どちらをとるかと言えば、オッフェンバックの後期作品に光を当てたVolksoperに敬意を表して「にんじん王」でしょうか。

正直、観賞前は特殊メイクの出演者に抵抗があったのですが、実際に観てみると、意外としっかりした物語。

ただ、Steppke様もご指摘のように、上演時間の関係でバタバタしているところもある点がマイナスですが、演奏も含めて、トータルで考えると最近のVolksoperのオペレッタでは珍しくバランスがとれていたと思います。

Continue reading "2019年の「オペレッタ観賞」を振り返って"

| | Comments (2)

December 17, 2019

Baden「FATINITZA」(ファテッニッツァ)PremiereReport(下)

20191216001Adventの3週目。ウィーンは天候にも恵まれて、各地のクリスマスマーケットは大変な混雑でした。一応、証拠写真をアップしておきましょう。

さて、今日は「ファテッニッツァ」の後半とFeriの感想をお伝えします。休憩を挟んで、2幕の後半が終わると暗転で3幕へ。

第3幕 ソフィアにあるリディアの家の部屋
将軍はリディアに、年老いたシュヴェルディコフ殿下と結婚せよと強く迫ります。しかし彼女はウラディミールに恋しているので、嫌だと断り続けているのです。

20191215009将軍は“人間、いつでも欲しいものが手に入るとは限らない、自分もファティニッツァを恋しているが、彼女は見つからない”と嘆くのでした(何やら意味深な発言‥)。

そこにウラディミールが現れ、“もしファティニッツァをここに連れて来たら、私とリディアの結婚を許してくれますか”と言います。

20191215011ファティニッツァに恋心を抱く将軍は、“それなら、もちろん喜んで”と答えるのでした。それを聞いてウラディミールは奥に入って変装して出てきます。

それを見て将軍はやっと、ファティニッツァがウラディミールの変装であったことに気づき、自分もファティニツァに恋をしたくらいだから、リディアがその本人に恋をするのは無理もない、と2人の結婚を認めるのでした。

20191215007本作品は、ウラディミールと、架空の女性ファティニッツァの対比が見どころ。

今回の演出ではファティニッツァは女性的なドレスで登場し、髪もロングヘアでしたので、一見すると凛々しい軍服姿のウラディミールが変装しているようには見えません。この点は良かったですね。

また、Bea Robeinさんのお芝居、歌ともに申し分ありませんでした。なかなか良い味を出していました。

Continue reading "Baden「FATINITZA」(ファテッニッツァ)PremiereReport(下)"

| | Comments (0)

December 16, 2019

Baden「FATINITZA」(ファテッニッツァ)PremiereReport(上)

20191215000 Adventも3週目に入り、リースのろうそくも3本目に明かりが灯りました。教会のミサも、この時期、限定の式次第で行われるケースが増えてきます。

「音楽の話題」が続いてしまい、申し訳ございません。12月はVolksoperでオペレッタのPremiereがありませんでしたが、Baden市劇場(Bühne Baden)でスッペ(Franz von Suppé)の作品「FATINITZA」(ファテッニッツァ)のPremiereが行われました。

当初、観に行けるかどうか微妙だったのですが、何とか都合がついて観賞することができました。

20191215021この作品は1876年にウィーン・カール劇場で初演された作品。1877年、ロシア・トルコ戦争中のお話で、トルコのイプサラとブルガリアのソフィアが舞台となっています。

スッペがオッフェンバックの成功に刺激されて作ったオペレッタと言われていますが、スッペらしい管弦楽を重視したウィーン風の楽曲が特徴です。

バーデンでは1956年以来の上演です。
当日の指揮は、Franz Josef Breznik,さん。主な出演者は、以下のとおりです。
-General Timofey Kantschukoff(ロシアの将軍):Reinhard Alessandri,さん
-Fürstin Lydia Uschakoff(リディア、将軍の姪):Regina Rielさん
20191215001-Izzet Pascha(イプサラのトルコ要塞司令官):Franz Suhradaさん
-Osipp Wasielowitsch Safonoff, Leutnant:Beppo Binderさん
-Steipann Sidorowitsch Bieloscurim:Robert Kolarさん
―Wladimir Samoiloff(ウラディミール、副官):Bea Robeinさん
-Julian von Golz(ジュリアン、ドイツの新聞社戦時特派員):Thomas Zisterer,さん
-Hassan Bey / Mustafa /ein Pope / Wuika :Robert R. Herzlさん
-Izzet Paschas Lieblingsfrauen:Dessislava Filipovさん、Maria Korenevaさん、Maria Lukasovskyさん、Elaterina Polaterさん

本作品は3幕構成ですが、今回は2幕の途中に休憩を入れるパターンでした。また、バーデンは今まで、基本的に写実的な舞台装置と衣装が特徴でしたが、今回の舞台装置は大きなトンネル状のものだけ。この奥に様々な映像を投影することで変化を付けていました。

20191215006衣装に関しては、一応、時代設定を踏まえたものですが、後半、突飛な衣装が出てきて、度肝を抜かれました。

劇場幹部が替わったことで、演出方針に変更が生じた可能性がありますね。Feri個人としては、コンパクトでも写実的な舞台装置の方が好きです。

本作品はウラディミールが事実上の主役ですが、今回は女性がズボン役として起用されています。そのため、ファティニッツァに変装した場面では、自然体でしたね。

第1幕 ロシア軍のイプサラ野営陣地
トルコの要塞イプサラを包囲しているロシア軍ですが、要塞がなかなか陥落しないため、兵士の士気が落ちています。副官のウラディミールも恋人リディア・ウザノーヴァに思いを巡らす日々。ここで歌うワルツは聴かせます。

そこにドイツの戦争特派員ジュリアンが訪ねてきます。彼は旧友ウラディミールに会って喜ぶのですが、同時に、ロシア軍の士気が落ちているのを見て驚きます。

20191215015そこで、ジュリアンは、このたるんだ雰囲気に刺微を与えるため、アマチュア芝居でもやってみたら、と提案します。ウラディミールは、“それなら俺の女装冒険談を芝居にしよう”と言いだすのでした。

彼は変装してファティニッツァと名乗り、トルコ軍の中にスパイとして潜入し、まんまと敵の出撃情報を入手したことがあったのです。

それに味をしめて、今度は恋人のリディアの後見人カンチャコフ将軍の監視が厳しく彼女に近よれないので、再びフアティニツツァに変装して彼女の世結係として雇ってもらうことに成功。

20191215013ところが将軍がファティニツツァを気に入り、追いまわされるはめになり、ほうほうの態で逃げ出した経験が‥。この話を皆にすると、大いに受けて、早速それを芝居にすることになります。

ファティニッツァ役は当然、ウラディミールが引き受けます。芝居で盛り上がっている時、カンチャコフ将軍が突然、視察にやってきて、兵士は大慌て。

歩哨が出ていないため、激怒する将軍。しかも、ドイツの新聞記者がいるのも気に入りません。

そこで、ジュリアンは将箪に手柄話をさせて、それを記事に書くと言ってなだめるのでした。インタビューの中で“将軍のような軍人でも恋をされることがありますか”と質問します。将軍は、“一度だけある、その娘はファティニッツァと言って‥”と話し始めたところに、変装が終ってウラディミールがファティニッツァの姿で登場。

20191215014将軍は、この娘だと大喜び。ウラディミールは大変なことになったとばかり、乙女の恥らいの態で将軍をかわすのでした。

ジュリアンは将軍に、ファティニッツァの兄がトルコ軍に捕まってしまったので探しに来ているのだ、言い繕います。将軍は、“それなら私が助け出してやるから妻になってくれ”とファティニッツァの前に跪くのでした。そこにウラディミールの恋人リディアが突然訪ねてきます。

将軍はリディアに“戦場は女の来る所ではない、すぐに女子修道院に戻りなさい”と言い、兵士を閲兵するために出ていきます。

軍人達がいなくなり、兵合に二人の娘とジユリアンが残ると、そこに、トルコのスパイが乱入し、ジュリアンを縛り上げ、二人の娘をさらっていくのでした。

Continue reading "Baden「FATINITZA」(ファテッニッツァ)PremiereReport(上)"

| | Comments (0)

November 25, 2019

Volksoper「König Karotte」PremiereReport(下)

20191124001現在、ローマ法王が来日されていますが、カトリックの国、オーストリアでも日本での法王の活動が報道されています。

さて、Volksoper「König Karotte」PremiereReport 3回目の今日は、出演者の仕上がりを含めた雑感です。「König Karotte」は、創作された時代が第二帝政から第三共和政への移行時期であったということを踏まえないと、作品の論評は難しいと思います。

また、現在は、そのような政治的背景はありません。この点を踏まえることがポイントだと思います。なお、DiePresseはWeb版で「So siegt Operette über Korruption」という興味深い標題を付けていました。25日にKURIERの新聞評(紙ベース)を見ましたが、見出しは「Der aberwitzige Wahnsinn hat hier mehr als Methode」。Perter Jarolin氏の評価は何と五つ星(★★★★★)でした。

本作品では第2幕をはじめ「ファランドール」に代表される「フランス特有の旋律」が使われています。Feriは、これがフランスでは、どのように演奏されるのか、オリジナルを聴いたことがありません。この「フランドール」が作品を魅力的にしているようです。ただ、恐らくウィーン風の「ファランドール」になっていると思います。

また、オリジナルはフランス語ですが、本作品はドイツ語上演です。当然、フランス語の歌詞をドイツ語にする訳ですから、その過程でニュアンスが変わることもあると思います。

歌手陣のコメントの前に、今回も全員がワイヤレスマイクを使っています。そのため、歌唱力は明確には評価しかねます。

森氏の論文によるとパリ・ゲテ座での初演では王女キュネゴンド、王女ロゼ・デュ・ソワール、妖精ロバン・リュロンの評価が高かったようですが、今回のPremiereでも女性陣の仕上がりが良かったですね。

20191124005また、興味深いのはソリストにはオペレッタの歌役者だけではでなく、オペラ畑の歌手が起用されている点です。これは、本作品が「オペラ的要素が強い」ことと関係があるのかもしれません。

王女キュネゴンドを務めたJulia Kociさんは、歌、お芝居ともに申し分ありませんでした。こういった計算高い女性を演じると上手ですね。

一方、ロゼを務めたJohanna Arrouasさんも、途中から男装になり、ショートカット姿で登場。声の質がJulia Kociさんとは異なりますが、今回は役に合っていたような気がします。セカンドクルーは、Elisabeth Schwarzさんが予定されています。

そして、妖精ロバンのAmira Elmadfaさんは、歌もさることながら、お芝居と台詞が多いのが特徴。フリドラン一行を導く重要な役ですが、お芝居の仕上がりも上々でした。こちらのセカンドクルーはManuela Leonhartsbergerさんが予定されています。

なお、Amira Elmadfaさんは2016/17シーズンに「フィガロの結婚」(Cherubino役)でハウスデビューを果たしたオペラ畑の方。今シーズンは「König Karotte」で復帰です。

20191124002王子フリドラン24世を演じたのはMirko Roschkowskiさん。ちなみにフリドラン24世は、原作ではナポレオン三世を象徴する人物です。Volksoperの出演は久々ですが、オペレッタの出演は初めて。

本人は不本意かもしれませんが、「だらしない王子」という役(実際は、終始、学生に扮装したまま)をうまく演じていたと思います。オペラ畑の歌手なので、歌唱力もまずまずでしょうか。なお、セカンドクルーはCarsten Süssさんが予定されています。

本作品では、タイトルロールながら、結果的にヒール役となる「にんじん王」には韓国出身のSung-Keun Parkさんが起用されました。フィナーレまで、特殊メイクのままなので、素顔を見ることはできません。本作品がハウスデビューです。

オペラ畑の歌手で、ヨーロッパの劇場で活躍している方。モーツァルト、ドニゼッティの作品に出演しています。何箇所かソロで歌う場面もありますが、なかなか良い歌いぶりでした。しかし、特殊メイクのお陰で存在感は抜群。良い演技に惜しみない拍手が送られていました。ところで、こちらのセカンドクルーはSebastian Reinthallerさん。Feriとしては、是非、観たいところです。

なお、おどろおどろしい特殊メイクで終始舞台で存在感を示す「野菜の家臣」。カーテンコールでマスクを外したらビックリ。女性も含む、多種多様なメンバーでした。

20191124003Feriが、一番、気に入った男性歌手は警察長官ピペルトリュンクを務めたMarco Di Sapiaさん。結構、単独で歌う場面も多く、正直、目立ちます。特殊メイクで、いつもの素顔は見えませんが、歌、お芝居共に申し分ありませんでした。こういう役は上手ですね。

そして、今までオペラでの出演が多かったYasushi Hiranoさんが黒魔術師トリュックで起用されたのも嬉しい限り。しかも、ミステリアスな雰囲気を出すため、台詞の多くを日本語という設定にしたのも頭が下がります。歌、お芝居も良く、怪しげな黒魔術師を見事に体現していました。Feriは、オペラでは何回か観ていますが、今回の方が存在感はありましたね。

Continue reading "Volksoper「König Karotte」PremiereReport(下)"

| | Comments (2)

November 24, 2019

Volksoper「König Karotte」PremiereReport(中)

20191123021今日は「König Karotte」の休憩後、後半の様子をお届けしましょう。なお、後半は45分なので、場面転換も早くテンポが良く、冗長な感じはありません。

第3幕
前奏曲の最中から、緞帳の前に「にんじん王」が登場します。緞帳が開くと「宮殿広間」で始まります。本来の4幕版では、3幕の冒頭は宮殿広間ではないそうです。なお、3幕版の第3幕は「にんじん王の宮殿広間」で始まるので、このパターンを踏襲しているようです。

にんじん王はジャムに夢中。そこへ、ロバン、ロゼ、ピペルトリュンクは東洋から来た商人に扮して「にんじん王」に接見。様々な貢ぎ物を「にんじん王」に差し出しますが、その中には巨大なスライサーも‥ これで「にんじん王」のカラダを削る場面も‥

皆が立ち去ると、フリドランが現れ、キュネゴンドを見つけます。魔法のため「にんじん王」の愛人になっているキュネゴンドは「自分は被害者だ」と訴え、フリドランを油断させます。そして、「ソロモンの指輪」をフリドランから奪い取ってしまうのでした(3枚目の写真が、その場面です)。

なお、舞台写真を見るとわかるようにフリドランが王座に座るときは、ちゃんと椅子は正規の形に戻します。

20191123022「にんじん王」を失墜させる作戦は失敗。一行は宮殿から姿を消します。

場面は「」。ロゼはフリドランの「最後の救い」である「魔法の四つ葉のクローバー」を手に入れます。ただ、「魔法の四つ葉のクローバー」には掟があります。最後の葉を摘んで願いを叶えると、使った人間は死んでしまうのです。ロゼはフリドリンに会うため、最初の葉を抜くのでした。健気なロゼ。

なお、「森」の場面は、舞台上ではなく、プロンプターボックス経由で宮殿から逃げたロゼとロバンが、オーケストラピットの中でお芝居を展開します。

その間、舞台には森をイメージしたスクリーンが降りています。そのため、オーケストラピットが見えない席だと、何が起こっているのかよくわかりません。

場面は「アリの王国」に変わります(ここも公式写真が入手できませんでした)。映像を駆使した幻想的なシーン。アリ軍団は、ライトサーベルのような武器を手にしています。そこへロバンとロゼがやってきます。

クローバーの威力でアリ軍団のリーダーはフリドリンとトリュックを解放し、魔女との戦いを支援する準備を整えます。

20191123024アリ軍団は魔女コロカントを捕らえます。そして、ロゼは2番目のクローバーの葉をはぎ取り、フリドリン、ロバン、トリュックと逃げます。

この場面は、後半の見せ場の一つ。オリジナルでは「虫のバレエ」が披露される箇所で、オッフェンバックはかなり苦労したようです。今回、バレエダンサーは出演せず、合唱団がアリ軍団に扮しています。どのようなバレエだったのか、正直、観たかった箇所でもあります。

Continue reading "Volksoper「König Karotte」PremiereReport(中)"

| | Comments (0)

November 23, 2019

Volksoper「König Karotte」PremiereReport(上)

20191123102今日オッフェンバック生誕200年を記念して上演が決定したオペラ・フェリー(opéra-bouffe-féerie)「König Karotte(にんじん王)」Premiereの様子をお伝えします。

今回も原則としてVolksoper提供の公式写真を使って舞台の模様をお伝えしますが、必ずしもFeriが皆さまに見ていただきたい場面が提供されていません。その点は、ご了承ください。

昨日もご紹介したように「König Karotte」は、「Orpheus in der Unterwelt(地獄のオルフェウス)」などと異なり、1870年の普仏戦争後に上演された作品で、今まで光が当たることが少なかった作品。そのため、ウィーンのオペレッタ・ファンでも、観たことがないという方が大多数だと思います。

この時期、オッフェンバックの作品に対する一般的な評価は下がっており、マスコミからも手厳しい意見が出されています。

時代は第二帝政から第三共和政へ移行する時期。オッフェンバックは起死回生を図るべく、時代の変化を踏まえて、ボナパルティストであった劇作家サルドゥとともに「König Karotte」の創作と初演に望んだものと思われます。

もちろん、今は21世紀ですから、パリ・ゲテ座で初演が行われた1872年1月とは時代背景が全く異なるのは、言うまでもありません。しかし、「政治体制の変革期」に当時の世相を背景に創作された作品であることを踏まえて、本作品を見ると、違った見方ができると思います。

20191123006また、初演後のマスコミ評も賛否両論があり、当時の知識人の間でも評価が対立していたようです。森氏の論文では、これは「特定の層に対する風刺」を和らげた結果、観客の理解を妨げることにつながったという分析がなされています。

しかし、今シーズンVolksoperが、オッフェンバック前期の代表作である「Orpheus in der Unterwelt(地獄のオルフェウス)」と、新しい試みを取り入れた後期の野心的な作品「König Karotte」をプログラムにいれたのは、オッフェンバックの多様性を伝えると同時に、後期作品の再評価を狙っていると思います。Volksoperの見識の高さを見直しました。当初、変な作品を上演すると思っていたFeriは、赤面の思い‥

ところで、「König Karotte」は、オッフェンバック自身の手で、初演後、オリジナルの4幕版から3幕版に改変したという経緯があります。
もちろん、3幕判、4幕版の両スコアも存在しているようです。

20191123001今回、Volksoperでは3幕版ではなく、あえて4幕版で上演することを決定したのは、非常に興味深いところです。Feriは、残念ながらオリジナルの台本を持っていないので、正確に比較することはできません。実際、森氏の論文を読んだ上でVolksoperの舞台を観ると、正確に4幕版の台本を再現している訳ではないようです。

これは、現在、Volksoperではオペレッタは原則として休憩1回を含み上演時間2時間45分という「基本的な枠組み」があります。そのため、オリジナルの4幕版から、削ったシーンも多々あるようです。

さらにオリジナルは第二帝政から第三共和政へ移行しつつある時代に現体制や改革への風刺を盛り込んだ作品ですから、かなりリスキーです。そのため「示唆的な風刺」が基本だったようですが、今はどんなストレートな表現をしても問題はありません。このように考えると、オリジナルの脚本や演出とは、大きく異なっているのかもしれません。

20191123002なお、本作品はドイツStaatsoper Hannoverとの共同制作で、実際には同劇場で先行上演されたプログラムを移植したようです。

Feriは、Staatsoper Hannoverの「König Karotte」は観ていませんので、比較はできませんが、実際に作品を観た印象では「Volksoperならではの味付け」はしてあると思います。

制作陣ですが演出はMatthias Davidsさん、舞台装置はFischer-Dieskauさん、衣装はSusanne Hubrichさん、照明はMichael Grundnerさんでした。

Continue reading "Volksoper「König Karotte」PremiereReport(上)"

| | Comments (0)

November 22, 2019

Soiree Anlässlich der Premiere “König Karotte”von Jacques Offenbach

20191121001今日は11月20日にVolksoperで行われた「興味深い催し様子」をお届けしましょう。

今シーズン、Jacques Offenbachの生誕200年を記念して、Volksoperでは2つの作品が上演されます。一つは前シーズンからの再演である「Orpheus in der Unterwelt」(地獄のオルフェウス)そして、2019/20シーズンでPremiereを迎える「König Karotte」(にんじん王)です。11月20日に行われた催しは、「König Karotte」の作品解説とピアノ伴奏により、一部の楽曲を披露するものでした。

当たり前ですが、ご来場しているのは熱心なファンの皆さま方です。

Magdalena HoisbauerさんがMCを務め、オッフェンバッハのスペシャリストFrank Harders-Wuthenowさん、指揮者Guido Mancusiさん、演出家Matthias Davidsさんらが参加し、オッフェンバックと「König Karotte」に関する考察を展開しました。

また、Premiereに出演予定のJohanna Arrouasさん、Julia Kociさん、Amira Elmadfaさん、Sung-Keun Parkさん、Mirko Roschkowskiさん、Marco Di Sapiaさん、Yasushi Hiranoさんが加わり、「König Karotte」の楽曲を披露。ピアノ伴奏はFelix Lemkeが務めました。

実は「König Karotte」は、日本でもほとんど知られていない作品で、資料が極めて乏しい作品です。Feriは、シーズンプログラムが公開されたタイミングで、各種資料を探したところ、非常に興味深い日本語の論文にたどり着きました。

「オッフェンバックの“にんじん王”初演における“風刺”」-第二帝政と第三共和政の狭間でーという論文で、著者は森 佳子氏(音楽学者)。オッフェンバックに関する著書も多数、出版されています。

この論文は「西洋比較演劇研究」(日本演劇学会分科会西洋比較演劇研究会発行)に掲載されたものですが、オリジナルの入手は困難。ところが、国立国会図書館に所蔵されていることがわかり、コピーを依頼しました。

20191121002森氏はフランスに留学され、音楽修士号を獲得されている方だけに、作品誕生の背景や初演当時の反応など、一次資料を精査された見事な論文。Feriは、滝に打たれたような衝撃を受けました。

そこで、今回は、この論文の一部をご紹介する形で、この催しでも紹介された「König Karotte」誕生の背景をご紹介したいと思います。

オッフェンバックの代表作である「地獄のオルフェウス」(1858年)をはじめ、「美しきエレーヌ」(1864年)、「パリの生活」(1866年)、「ジエロルステイン大公妃殿下」(1867年)など比較的多く上演される作品に対して、「König Karotte」は、1870年の普仏戦争以降に発表された作品です。オペラ「ホフマン物語」以外は、ほとんど上演されることがありません。

「König Karotte」は、オペレット・フェリー(あるいはオペラ・フェリー)と呼ばれる作品で、19世紀中頃に大流行した「フェリー」(夢幻劇)とオペレッタを融合した作品。

とくに「König Karotte」は、フェリーの伝統を最大限に生かした作品なのですが、あまり上演されない背景には、1870年代のオッフェンバックに対する一般的な評価が背景にあるようです。

オッフェンバックは王権に基礎を置く第二帝政期の寵児で、第三共和政の元では、力を発揮できなかったというもの。つまり、「König Karotte」初演時には、オッフェンバックは創作のピークを過ぎていたという見方があったようです。

1870年代に入るとオッフェンバックの評価にも大きな変化が生じ、オペレッタ作品に対する批判も厳しいものが出てきました。

オッフェンバックのオペレッタは、社会批判の機能をもっており、「ブルジョワジーの快楽」と言われた政治的革命が停滞した時代には、観客を煽動する役割を果たしていました。

しかし、第二帝政が崩壊に近づくと、煽動する必要性が低くなってしまい、オッフェンバックの「オペレッタの毒」は、敬遠される傾向にあったようです。

Continue reading "Soiree Anlässlich der Premiere “König Karotte”von Jacques Offenbach"

| | Comments (0)

November 21, 2019

2019/20シーズン「Die Csárdásfürstin」

20191120003しばらく「オペレッタの話題」からご無沙汰していましたが、今日は2019/20シーズン「Die Csárdásfürstin」の模様をお届けしましょう。

2018/19シーズンではORFでのテレビ放映を行うなど、劇場側としても気合いの入っていた「Die Csárdásfürstin」。今シーズンも、当然、継続上演です。

当日の指揮はAlfred Eschwéさん。出演者は、以下のとおりです。
-Leopold Maria, Fürst von und zu Lippert-Weylersheim:Robert Meyerさん
-Anhilte, seine Frau:Sigrid Hauserさん
-Edwin Ronald, beider Sohn:Szabolcs Bricknerさん
-Anastasia Komtesse Eggenberg:Juliette Khalilさん
-Eugen Baron Rohnsdorff:Christian Grafさん
-Boni Graf Káncsiánu:Jakb Semotanさん
-Ferenc Ritter Kerekes, genannt Feri Bácsi:Axel Herrigさん
-Sylva Varescu:Ursula Pfitzneさん
-Sándor von Kiss:Nicolaus Haggさん

20191120002当初、BoniにはMichael Havlicekさんが予定されていましたが、当日になって交代です。

SylvaのUrsula PfitzneさんとEdwinのSzabolcs Bricknerさんは2018/19シーズンのPremiere組ではなく、2016年の来日公演を前にした2015/16シーズン(旧演出)で起用されています。

また、FeriがBoris EderさんからAxel Herrigさんになりました。Axel Herrigさんは、2016年の来日公演でもFeriを演じています。

20191120001演出については、Premiereと同じで、変更はありません。オーケストラの演奏は申し分ありませんでしたが、ちょっと気になったのは、歌手の歌と演奏が合っていない部分があったこと‥ 

お客さまの反応が意外と良かったのが印象的でした。とくにRobert MeyerさんとSigrid Hauserさんの掛け合いは受けていましたね。

一年ぶりですが、正直、この演出は好きになれません。1幕と2幕は、ギリギリ許容範囲ですが、やはり大団円を迎える3幕がねぇ‥戦時色を前面に出しすぎている点も気になりますが、微妙な「恋の駆け引き」が消えてしまい、ストレートな表現になっていることが、Feriとしては不満です。

Continue reading "2019/20シーズン「Die Csárdásfürstin」"

| | Comments (1)

より以前の記事一覧