November 25, 2019

Volksoper「König Karotte」PremiereReport(下)

20191124001現在、ローマ法王が来日されていますが、カトリックの国、オーストリアでも日本での法王の活動が報道されています。

さて、Volksoper「König Karotte」PremiereReport 3回目の今日は、出演者の仕上がりを含めた雑感です。「König Karotte」は、創作された時代が第二帝政から第三共和政への移行時期であったということを踏まえないと、作品の論評は難しいと思います。

また、現在は、そのような政治的背景はありません。この点を踏まえることがポイントだと思います。なお、DiePresseはWeb版で「So siegt Operette über Korruption」という興味深い標題を付けていました。25日にKURIERの新聞評(紙ベース)を見ましたが、見出しは「Der aberwitzige Wahnsinn hat hier mehr als Methode」。Perter Jarolin氏の評価は何と五つ星(★★★★★)でした。

本作品では第2幕をはじめ「ファランドール」に代表される「フランス特有の旋律」が使われています。Feriは、これがフランスでは、どのように演奏されるのか、オリジナルを聴いたことがありません。この「フランドール」が作品を魅力的にしているようです。ただ、恐らくウィーン風の「ファランドール」になっていると思います。

また、オリジナルはフランス語ですが、本作品はドイツ語上演です。当然、フランス語の歌詞をドイツ語にする訳ですから、その過程でニュアンスが変わることもあると思います。

歌手陣のコメントの前に、今回も全員がワイヤレスマイクを使っています。そのため、歌唱力は明確には評価しかねます。

森氏の論文によるとパリ・ゲテ座での初演では王女キュネゴンド、王女ロゼ・デュ・ソワール、妖精ロバン・リュロンの評価が高かったようですが、今回のPremiereでも女性陣の仕上がりが良かったですね。

20191124005また、興味深いのはソリストにはオペレッタの歌役者だけではでなく、オペラ畑の歌手が起用されている点です。これは、本作品が「オペラ的要素が強い」ことと関係があるのかもしれません。

王女キュネゴンドを務めたJulia Kociさんは、歌、お芝居ともに申し分ありませんでした。こういった計算高い女性を演じると上手ですね。

一方、ロゼを務めたJohanna Arrouasさんも、途中から男装になり、ショートカット姿で登場。声の質がJulia Kociさんとは異なりますが、今回は役に合っていたような気がします。セカンドクルーは、Elisabeth Schwarzさんが予定されています。

そして、妖精ロバンのAmira Elmadfaさんは、歌もさることながら、お芝居と台詞が多いのが特徴。フリドラン一行を導く重要な役ですが、お芝居の仕上がりも上々でした。こちらのセカンドクルーはManuela Leonhartsbergerさんが予定されています。

なお、Amira Elmadfaさんは2016/17シーズンに「フィガロの結婚」(Cherubino役)でハウスデビューを果たしたオペラ畑の方。今シーズンは「König Karotte」で復帰です。

20191124002王子フリドラン24世を演じたのはMirko Roschkowskiさん。ちなみにフリドラン24世は、原作ではナポレオン三世を象徴する人物です。Volksoperの出演は久々ですが、オペレッタの出演は初めて。

本人は不本意かもしれませんが、「だらしない王子」という役(実際は、終始、学生に扮装したまま)をうまく演じていたと思います。オペラ畑の歌手なので、歌唱力もまずまずでしょうか。なお、セカンドクルーはCarsten Süssさんが予定されています。

本作品では、タイトルロールながら、結果的にヒール役となる「にんじん王」には韓国出身のSung-Keun Parkさんが起用されました。フィナーレまで、特殊メイクのままなので、素顔を見ることはできません。本作品がハウスデビューです。

オペラ畑の歌手で、ヨーロッパの劇場で活躍している方。モーツァルト、ドニゼッティの作品に出演しています。何箇所かソロで歌う場面もありますが、なかなか良い歌いぶりでした。しかし、特殊メイクのお陰で存在感は抜群。良い演技に惜しみない拍手が送られていました。ところで、こちらのセカンドクルーはSebastian Reinthallerさん。Feriとしては、是非、観たいところです。

なお、おどろおどろしい特殊メイクで終始舞台で存在感を示す「野菜の家臣」。カーテンコールでマスクを外したらビックリ。女性も含む、多種多様なメンバーでした。

20191124003Feriが、一番、気に入った男性歌手は警察長官ピペルトリュンクを務めたMarco Di Sapiaさん。結構、単独で歌う場面も多く、正直、目立ちます。特殊メイクで、いつもの素顔は見えませんが、歌、お芝居共に申し分ありませんでした。こういう役は上手ですね。

そして、今までオペラでの出演が多かったYasushi Hiranoさんが黒魔術師トリュックで起用されたのも嬉しい限り。しかも、ミステリアスな雰囲気を出すため、台詞の多くを日本語という設定にしたのも頭が下がります。歌、お芝居も良く、怪しげな黒魔術師を見事に体現していました。Feriは、オペラでは何回か観ていますが、今回の方が存在感はありましたね。

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November 24, 2019

Volksoper「König Karotte」PremiereReport(中)

20191123021今日は「König Karotte」の休憩後、後半の様子をお届けしましょう。なお、後半は45分なので、場面転換も早くテンポが良く、冗長な感じはありません。

第3幕
前奏曲の最中から、緞帳の前に「にんじん王」が登場します。緞帳が開くと「宮殿広間」で始まります。本来の4幕版では、3幕の冒頭は宮殿広間ではないそうです。なお、3幕版の第3幕は「にんじん王の宮殿広間」で始まるので、このパターンを踏襲しているようです。

にんじん王はジャムに夢中。そこへ、ロバン、ロゼ、ピペルトリュンクは東洋から来た商人に扮して「にんじん王」に接見。様々な貢ぎ物を「にんじん王」に差し出しますが、その中には巨大なスライサーも‥ これで「にんじん王」のカラダを削る場面も‥

皆が立ち去ると、フリドランが現れ、キュネゴンドを見つけます。魔法のため「にんじん王」の愛人になっているキュネゴンドは「自分は被害者だ」と訴え、フリドランを油断させます。そして、「ソロモンの指輪」をフリドランから奪い取ってしまうのでした(3枚目の写真が、その場面です)。

なお、舞台写真を見るとわかるようにフリドランが王座に座るときは、ちゃんと椅子は正規の形に戻します。

20191123022「にんじん王」を失墜させる作戦は失敗。一行は宮殿から姿を消します。

場面は「」。ロゼはフリドランの「最後の救い」である「魔法の四つ葉のクローバー」を手に入れます。ただ、「魔法の四つ葉のクローバー」には掟があります。最後の葉を摘んで願いを叶えると、使った人間は死んでしまうのです。ロゼはフリドリンに会うため、最初の葉を抜くのでした。健気なロゼ。

なお、「森」の場面は、舞台上ではなく、プロンプターボックス経由で宮殿から逃げたロゼとロバンが、オーケストラピットの中でお芝居を展開します。

その間、舞台には森をイメージしたスクリーンが降りています。そのため、オーケストラピットが見えない席だと、何が起こっているのかよくわかりません。

場面は「アリの王国」に変わります(ここも公式写真が入手できませんでした)。映像を駆使した幻想的なシーン。アリ軍団は、ライトサーベルのような武器を手にしています。そこへロバンとロゼがやってきます。

クローバーの威力でアリ軍団のリーダーはフリドリンとトリュックを解放し、魔女との戦いを支援する準備を整えます。

20191123024アリ軍団は魔女コロカントを捕らえます。そして、ロゼは2番目のクローバーの葉をはぎ取り、フリドリン、ロバン、トリュックと逃げます。

この場面は、後半の見せ場の一つ。オリジナルでは「虫のバレエ」が披露される箇所で、オッフェンバックはかなり苦労したようです。今回、バレエダンサーは出演せず、合唱団がアリ軍団に扮しています。どのようなバレエだったのか、正直、観たかった箇所でもあります。

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November 23, 2019

Volksoper「König Karotte」PremiereReport(上)

20191123102今日オッフェンバック生誕200年を記念して上演が決定したオペラ・フェリー(opéra-bouffe-féerie)「König Karotte(にんじん王)」Premiereの様子をお伝えします。

今回も原則としてVolksoper提供の公式写真を使って舞台の模様をお伝えしますが、必ずしもFeriが皆さまに見ていただきたい場面が提供されていません。その点は、ご了承ください。

昨日もご紹介したように「König Karotte」は、「Orpheus in der Unterwelt(地獄のオルフェウス)」などと異なり、1870年の普仏戦争後に上演された作品で、今まで光が当たることが少なかった作品。そのため、ウィーンのオペレッタ・ファンでも、観たことがないという方が大多数だと思います。

この時期、オッフェンバックの作品に対する一般的な評価は下がっており、マスコミからも手厳しい意見が出されています。

時代は第二帝政から第三共和政へ移行する時期。オッフェンバックは起死回生を図るべく、時代の変化を踏まえて、ボナパルティストであった劇作家サルドゥとともに「König Karotte」の創作と初演に望んだものと思われます。

もちろん、今は21世紀ですから、パリ・ゲテ座で初演が行われた1872年1月とは時代背景が全く異なるのは、言うまでもありません。しかし、「政治体制の変革期」に当時の世相を背景に創作された作品であることを踏まえて、本作品を見ると、違った見方ができると思います。

20191123006また、初演後のマスコミ評も賛否両論があり、当時の知識人の間でも評価が対立していたようです。森氏の論文では、これは「特定の層に対する風刺」を和らげた結果、観客の理解を妨げることにつながったという分析がなされています。

しかし、今シーズンVolksoperが、オッフェンバック前期の代表作である「Orpheus in der Unterwelt(地獄のオルフェウス)」と、新しい試みを取り入れた後期の野心的な作品「König Karotte」をプログラムにいれたのは、オッフェンバックの多様性を伝えると同時に、後期作品の再評価を狙っていると思います。Volksoperの見識の高さを見直しました。当初、変な作品を上演すると思っていたFeriは、赤面の思い‥

ところで、「König Karotte」は、オッフェンバック自身の手で、初演後、オリジナルの4幕版から3幕版に改変したという経緯があります。
もちろん、3幕判、4幕版の両スコアも存在しているようです。

20191123001今回、Volksoperでは3幕版ではなく、あえて4幕版で上演することを決定したのは、非常に興味深いところです。Feriは、残念ながらオリジナルの台本を持っていないので、正確に比較することはできません。実際、森氏の論文を読んだ上でVolksoperの舞台を観ると、正確に4幕版の台本を再現している訳ではないようです。

これは、現在、Volksoperではオペレッタは原則として休憩1回を含み上演時間2時間45分という「基本的な枠組み」があります。そのため、オリジナルの4幕版から、削ったシーンも多々あるようです。

さらにオリジナルは第二帝政から第三共和政へ移行しつつある時代に現体制や改革への風刺を盛り込んだ作品ですから、かなりリスキーです。そのため「示唆的な風刺」が基本だったようですが、今はどんなストレートな表現をしても問題はありません。このように考えると、オリジナルの脚本や演出とは、大きく異なっているのかもしれません。

20191123002なお、本作品はドイツStaatsoper Hannoverとの共同制作で、実際には同劇場で先行上演されたプログラムを移植したようです。

Feriは、Staatsoper Hannoverの「König Karotte」は観ていませんので、比較はできませんが、実際に作品を観た印象では「Volksoperならではの味付け」はしてあると思います。

制作陣ですが演出はMatthias Davidsさん、舞台装置はFischer-Dieskauさん、衣装はSusanne Hubrichさん、照明はMichael Grundnerさんでした。

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November 22, 2019

Soiree Anlässlich der Premiere “König Karotte”von Jacques Offenbach

20191121001今日は11月20日にVolksoperで行われた「興味深い催し様子」をお届けしましょう。

今シーズン、Jacques Offenbachの生誕200年を記念して、Volksoperでは2つの作品が上演されます。一つは前シーズンからの再演である「Orpheus in der Unterwelt」(地獄のオルフェウス)そして、2019/20シーズンでPremiereを迎える「König Karotte」(にんじん王)です。11月20日に行われた催しは、「König Karotte」の作品解説とピアノ伴奏により、一部の楽曲を披露するものでした。

当たり前ですが、ご来場しているのは熱心なファンの皆さま方です。

Magdalena HoisbauerさんがMCを務め、オッフェンバッハのスペシャリストFrank Harders-Wuthenowさん、指揮者Guido Mancusiさん、演出家Matthias Davidsさんらが参加し、オッフェンバックと「König Karotte」に関する考察を展開しました。

また、Premiereに出演予定のJohanna Arrouasさん、Julia Kociさん、Amira Elmadfaさん、Sung-Keun Parkさん、Mirko Roschkowskiさん、Marco Di Sapiaさん、Yasushi Hiranoさんが加わり、「König Karotte」の楽曲を披露。ピアノ伴奏はFelix Lemkeが務めました。

実は「König Karotte」は、日本でもほとんど知られていない作品で、資料が極めて乏しい作品です。Feriは、シーズンプログラムが公開されたタイミングで、各種資料を探したところ、非常に興味深い日本語の論文にたどり着きました。

「オッフェンバックの“にんじん王”初演における“風刺”」-第二帝政と第三共和政の狭間でーという論文で、著者は森 佳子氏(音楽学者)。オッフェンバックに関する著書も多数、出版されています。

この論文は「西洋比較演劇研究」(日本演劇学会分科会西洋比較演劇研究会発行)に掲載されたものですが、オリジナルの入手は困難。ところが、国立国会図書館に所蔵されていることがわかり、コピーを依頼しました。

20191121002森氏はフランスに留学され、音楽修士号を獲得されている方だけに、作品誕生の背景や初演当時の反応など、一次資料を精査された見事な論文。Feriは、滝に打たれたような衝撃を受けました。

そこで、今回は、この論文の一部をご紹介する形で、この催しでも紹介された「König Karotte」誕生の背景をご紹介したいと思います。

オッフェンバックの代表作である「地獄のオルフェウス」(1858年)をはじめ、「美しきエレーヌ」(1864年)、「パリの生活」(1866年)、「ジエロルステイン大公妃殿下」(1867年)など比較的多く上演される作品に対して、「König Karotte」は、1870年の普仏戦争以降に発表された作品です。オペラ「ホフマン物語」以外は、ほとんど上演されることがありません。

「König Karotte」は、オペレット・フェリー(あるいはオペラ・フェリー)と呼ばれる作品で、19世紀中頃に大流行した「フェリー」(夢幻劇)とオペレッタを融合した作品。

とくに「König Karotte」は、フェリーの伝統を最大限に生かした作品なのですが、あまり上演されない背景には、1870年代のオッフェンバックに対する一般的な評価が背景にあるようです。

オッフェンバックは王権に基礎を置く第二帝政期の寵児で、第三共和政の元では、力を発揮できなかったというもの。つまり、「König Karotte」初演時には、オッフェンバックは創作のピークを過ぎていたという見方があったようです。

1870年代に入るとオッフェンバックの評価にも大きな変化が生じ、オペレッタ作品に対する批判も厳しいものが出てきました。

オッフェンバックのオペレッタは、社会批判の機能をもっており、「ブルジョワジーの快楽」と言われた政治的革命が停滞した時代には、観客を煽動する役割を果たしていました。

しかし、第二帝政が崩壊に近づくと、煽動する必要性が低くなってしまい、オッフェンバックの「オペレッタの毒」は、敬遠される傾向にあったようです。

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November 21, 2019

2019/20シーズン「Die Csárdásfürstin」

20191120003しばらく「オペレッタの話題」からご無沙汰していましたが、今日は2019/20シーズン「Die Csárdásfürstin」の模様をお届けしましょう。

2018/19シーズンではORFでのテレビ放映を行うなど、劇場側としても気合いの入っていた「Die Csárdásfürstin」。今シーズンも、当然、継続上演です。

当日の指揮はAlfred Eschwéさん。出演者は、以下のとおりです。
-Leopold Maria, Fürst von und zu Lippert-Weylersheim:Robert Meyerさん
-Anhilte, seine Frau:Sigrid Hauserさん
-Edwin Ronald, beider Sohn:Szabolcs Bricknerさん
-Anastasia Komtesse Eggenberg:Juliette Khalilさん
-Eugen Baron Rohnsdorff:Christian Grafさん
-Boni Graf Káncsiánu:Jakb Semotanさん
-Ferenc Ritter Kerekes, genannt Feri Bácsi:Axel Herrigさん
-Sylva Varescu:Ursula Pfitzneさん
-Sándor von Kiss:Nicolaus Haggさん

20191120002当初、BoniにはMichael Havlicekさんが予定されていましたが、当日になって交代です。

SylvaのUrsula PfitzneさんとEdwinのSzabolcs Bricknerさんは2018/19シーズンのPremiere組ではなく、2016年の来日公演を前にした2015/16シーズン(旧演出)で起用されています。

また、FeriがBoris EderさんからAxel Herrigさんになりました。Axel Herrigさんは、2016年の来日公演でもFeriを演じています。

20191120001演出については、Premiereと同じで、変更はありません。オーケストラの演奏は申し分ありませんでしたが、ちょっと気になったのは、歌手の歌と演奏が合っていない部分があったこと‥ 

お客さまの反応が意外と良かったのが印象的でした。とくにRobert MeyerさんとSigrid Hauserさんの掛け合いは受けていましたね。

一年ぶりですが、正直、この演出は好きになれません。1幕と2幕は、ギリギリ許容範囲ですが、やはり大団円を迎える3幕がねぇ‥戦時色を前面に出しすぎている点も気になりますが、微妙な「恋の駆け引き」が消えてしまい、ストレートな表現になっていることが、Feriとしては不満です。

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November 10, 2019

森野由みさんリサイタル「THE BOOK」

20191110001今日はFeriの友人、森野由みさんの話題をお届けしましょう。最近はオーストリア国内に留まらず、ヨーロッパ各国で活躍している彼女ですが、毎年、秋から年末にかけては日本でのリサイタルを欠かしません。

2019年もご出身地の北九州を始め、神戸、東京でのリサイタルが予定されています。

北九州では「森野由みさんを支援する会10周年記念行事」として、「森野由み ソプラノリサイタル 本編~THE BOOK~さまざまな愛の歌」が11月9日、北九州市「ウェルとばた」(中ホール)で開催されました。

20191110002「森野由みさんを支援する会」のメンバーから、当日の模様をお知らせいただいたので、当ブログでもご紹介しましょう。

最近、彼女は自分自身が中心となって、ジャンルを超えて北九州出身のアーティストに声をかけて、新しい試みを繰り広げています。精力的な活動に頭が下がります。

今回のコンサートは、2年間に亘る「一つの物語」として構成されており、今年は、その本編「The Book」。

20191110003「大いなる愛」をテーマに、去年は「われを創りたまいしもの」ということでプログラムを組み、これまでの軌跡をたどるような形で、彼女の高校の合唱指揮と指導者だった完戸真人先生と音楽の刺激を与えて下さったピアニスト吉冨淳子先生をお招きし、あのころからずっと歩んできた合唱の仲間と舞台を共にしています。まさしく彼女の本領発揮という舞台だったようです。

20191110004今年は、去年からのテーマ「愛」がいよいよ「人物像」に昇華。いろいろな曲やオペラからのシーンから楽曲が披露されましたが、全体を通して、「ひとつの物語にしたい」という彼女の思いがあり、声楽の師匠、福嶋敬晃先生のご子息である福嶋康礼さんに台本を作っていただいたとのこと‥

康礼さんは画家・陶芸家として著名だけでなく、幼少の頃からクラシック音楽に囲まれた環境の中で成長され、豊かな感性と類まれなる才能から活動の領域を音楽にも広げ、90年代には日本を代表する声楽家勝部太氏、大野徹也氏、大久保真氏、ピアニスト楠本隆一氏らのコンサートの企画運営を手掛けてこられた方。

20191110005彼女は、ここ数年間、これからのコンサートのあり方、形について幾度となく話しを重ねて、今回の10周年記念事業に際し、「THE BOOK~さまざまな愛の歌」という脚本に結び付いたのでした。

“紐解く人によって見えてくるものが変わるという不思議な本。その本を手にした女優の実花さんが見る世界とは‥”

去年も舞台を共にした女優 高山実花さんがストーリーテラーを務めました。

出演者の皆さまもピアニストの宮崎由紀子さん、マリンバの島田亜希子さん、ダンスの徳野一也さん・下河邊衣津子さん(ペア)という幅広い皆さまが集まりました。

20191110006コンサートは三部構成で、第一章は「恋が生まれる街」、第二章は「ラテンの情熱」、第三章は「捧げられた愛」、エピローグは「時限を越えて」でした。オペレッタやオペラのアリアをはじめウィンナリートなど、今回は幅広いジャンルから楽曲がセレクトされていました。

第二章ではピアソラの作品が取り上げられましたが、写真をご覧になるとわかるように、いつもの彼女と違った雰囲気で、新境地開拓といったところでしょうか。

単体の楽曲を楽しむリサイタルではなく、新しい一つの物語に各楽曲が華を添えるという展開は、ある意味、新しい試み。

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September 04, 2019

Savonlinna Festivalに出演したVolksoper

201909030001今日は「Volksoperの話題」をお届けしましょう。

夏休み中の7月30日から8月3日まで、VolksoperはフィンランドのSavonlinna Festivalに出演しましたが、その様子がVolksoperのホームページで紹介されています。

Feriは行ったことはありませんが、Savonlinna(サヴォンリンナ)は、ヘルシンキから250キロほど離れた南サヴォ県の都市で、フィンランド最大の湖、サイマー湖に面したリゾート地です。そのため、夏には多くの観光客が訪れます。

201909030006サヴォンリンナで、初めてオペラフェスティバルが開催されたのは1912年のこと。100年の歴史を誇ります。

ただ、その後、一時、休止となり、1967年に復活し、以来、毎年、開催されています。会場は、この街のランドマークになっているサイマー湖に浮かぶオラヴィ城。

実は、この城はドラゴンクエスト「竜王の城」のモデルになったと言われています。常設の劇場ではなく、仮設の劇場で、色々と制約もあるようですが、観客収容人数は2264名を誇ります。

201909030004しかし、チケットは60Euro~180Euroと、結構、よいお値段。そのため、観劇ができないお客さまのために、期間中、市内のCaféでトークショーなども開催されています。このトークショーには、Volksoperの歌手なども出演しています。

Volksoperは、2015年以来、招待されているようで、今回の演目は「Fledermaus」でした。

オラヴィ城の舞台ですが、横幅はVolksoperの約3倍と広いのですが、奈落が浅いため、日本公演などでおなじみの本劇場で使っている舞台装置は使うことができません。

201909030005そこで、Savonlinna Festival専用の舞台装置が考案され、それに合わせて演出も若干、変更されたようです。

公式写真を見る限り、メルビッシュのように屋外舞台で緞帳がない構造のため、場面転換は暗転で対応したような気がします。

また、リハーサルは、シーズン中の6月にウィーンで行われています。Volksoperからは、ソリストに加えて、合唱団(36名)、オーケストラ(55名)、ウィーン国立バレエ団(20名)、マネジャーや技術スタッフ(26名)が参加しました。

201909030002専用の楽屋がないため、テントづくりの仮設の楽屋が使用されています。また、悪天候の際には気温が低下し、公演は大変だったようです。

参加したVolksoperのアンサンブルは、公演の合間に、リゾート地サヴォンリンナを楽しんだようです。

なお、期間中、5回の公演が行われ、大盛況だったと伝えられています。北欧で真夏に「こうもり」。しかも、Volksoperのアンサンブルによる「野外での上演」というのは非常に興味がありますね。

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August 03, 2019

花火大会雑感

2019080300017月の当ブログですが、最もページビューが多かったのが、7月28日でした。ただ、実際にご覧頂いた記事は、当月の記事というより、夏休みのご旅行を控えているためか、航空便の搭乗記などの閲覧が多かったようです。

さて、トップの写真は、すでに後半にさしかかったSeefestspiele Mörbisch「DAS LAND DES LÄCHELNS」の公式舞台写真です。プログラムに折り込みで掲載されている舞台全景を撮影した写真。これで雰囲気を感じ取って頂くことができると思います。

今日は夏の風物詩「花火大会の話題」です。

日本では、この時期、各地で大小の花火大会が開催されていると思います。7月の最終土曜日は、東京を代表する隅田川花火大会が開催されましたね。もちろん、夏以外の季節に花火大会が開催されるケースもあるようですが、圧倒的に多いのは夏だと思います。

また、首都圏などで、同一日程で花火大会が開かれる時もあり、お客さまも、どちらへ出かけるか迷うというケースもあると思います。

201908030005余談になりますが、Feriの実家では、毎年、8月第一土曜日に市民花火大会が開催されます。今年は、今晩。天気も良さそうなので、きっと浴衣をお召しになった多くのお客さまで賑わうことでしょう。

昔は、自分の住まいから花火を見ることができたのですが、その後、近くに中層集合住宅ができて、見えなくなってしまいました。ちなみに左の写真は、数年前に撮影した写真です。 

さて、オーストリアでも花火は盛んですが、何故か「単独の花火大会」というのは、余り聞きません。

屋外で開催されるSeefestspiele Mörbischでは、毎年、カーテンコール終了後に花火が上がります。時間は短いですが、大量の花火が上がるため、結構、見ていて楽しいものがあります。

201908030002昨年は噴水とのコラボレーションも実現して、時間は短いものの、印象に残るショーに仕上がっていました。しかも、該当作品のメドレーが流れる中で、花火が打ち上げられるため、いっそう印象に強く残りますね。

しかし、日本のように、純粋に「花火だけを楽しむ」というイベントは、余り耳にしたことがありません。

Feriが見過ごしている可能性もありますが、Sylvesterの花火も、新年を祝う行事の一環として行われているので、「花火大会」と位置づけるのには無理があるような気がします。

201908030003日本で、夏に花火大会が多い理由ですが、一説によるとお盆の迎え火、送り火と関係が深いという話を聞いたことがあります。

お盆の時には、火を使ってご先祖様の霊を慰める風習がありますが、この一つとして花火を打ち上げる風習が生まれたというものです。

言わば「鎮魂花火」と言えるかも知れません。それが、時代の変化と共に、霊を慰める行事から、花火を楽しむ行事に変化したようです。

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June 13, 2019

Feriの独断と偏見による「夏のオペレッタ2019」

2019061200006月は通常の劇場は2018/19シーズンの最終月。そして、7月からは、各地で音楽フェスティバルが始まります。という訳で、「夏のオペレッタ情報2019」をお届けしましょう。

-Seefestspiele Mörbisch
やはり「夏のオペレッタ」と言えば「Seefestspiele Mörbisch」です。60年の伝統を誇る舞台ですが、Serafinさんが引退してから、正直、魅力が半減。内部もゴタゴタ続きのようで、ちょっと心配でしたが、2018年からは「王道」に戻りつつある感じもします。

2019年はご存じのようにレハールの「DAS LAND DES LÄCHELNS」(微笑みの国)。Premiere は7月11日で、8月24日が千秋楽です。

タイトルロールのPrinz Sou CongはRobin Yujoong KimさんとWon Whi Choiさんという東洋系の方が起用されます。LisaはElissa HubeさんとSophia Brommerさんのダブルキャスト。

MiはDa-Yung ChoさんとKaterina von Bennigse ́nさん。Graf Gustav von PottensteinはMartin F. LechleitnerさんとMaximilian Mayerさん。Graf Ferdinand LichtenfelsはBenno Schollumさん、ObereunuchにはHarold Serafinさんが起用されます。

今回は東洋系の歌手を比較的多く起用しているのが特徴でしょうか。ダブルキャストは、どちらが出演するかは、当日にならないと決まらないことも多いので、後は運任せ。

とにかくHarold Serafinさんを引っ張り出してきたので、注目を集めることは間違いありません。

201906120001Bühne Baden
最近は夏冬を一括してプロモーションするようになったBühne Baden。2018/19シーズンのラストを飾るSommerarena公演はCarl Zellerの代表作「Der Vogelhändler」(小鳥売り、6月22日Premiere)とFranz Lehárの「ZIGEUNERLIEBE」(ジプシーの恋、7月13日Premiere)の2作品が上演されます。

Sommerarena公演の場合、1作品は珍しいものがかかるケースが多いのですが、今回は「ZIGEUNERLIEBE」が珍しい作品ですね。

「Der Vogelhändler」では、AdamにClemens Kerschbaumerさん、ChristelにPostbotin Ilia Stapleさん、Kurfürstin MarieにRegina Rielさん、Baronin Adelaide, Hofdame der KurfürstinにVerena Scheitzさん、Graf Stanislausに Matjaž Stopinšek さん、Baron Wepsに Sébastien Soulèさん、Schneck, Dorfschulze にranz Födingerさん、Professor Würmchen にArtur Ortensさんが起用されます。

201906120002一方、「ZIGEUNERLIEBE」ではJószi, der Spielmann, ein ZigeunerにVincent Schirrmacherさん、Moschu, Kammerdiener DragotinsにNiklas-Sven Kerckさん、Zorika, Dragotins TochterにCornelia Horakさん、Jolán, Dragotins NichteにElisabeth Schwarzさん、Ilona von Köröshaza, Gutsbesitzerin にMiriam Portmannさんが起用されます。

Sommerarenaは舞台が狭い上に、構造上、場面転換が限られているので、両作品とも思い切った演出にしてくるような気がします。

Schlossfestspele LANGENLOIS
ワインの産地として有名なLANGENLOISも「夏のオペレッタ」の定番スポットです。比較的小規模な会場ですが、会場規模に合わせた演出が光ります。

2019年の演目はEmmerich Kálmánsの代表作「DIE CSÁRDÁSFÜRSTIN」(チャールダーシュの女王)。

201906120003 以前はVolksoperのメンバーが出ていることも多かったのですが、最近は異なるようです。

今回は、Leopold MariaにJohannes Terneさん、AnhilteにElke Hartmannさん、EdwinにFranz Gürtelschmiedさん、AnastasiaにEthel Merhautさん、EugenにStefan WunderさんBoniにErwin Belakowitschさん、Ferenc Ritter KerekesにSteven Schescharegさん、SylvaにNetta Orさんが起用されます。講演回数が少ないため、シングルキャストでの対応です。

7月25日がPremiereで、8月10日まで、9公演、上演されます。ワインの産地なので、なかなか良い場所なのですが、公演期間が短いのが「玉に瑕」でしょうか。

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June 09, 2019

Volksoper「Orpheus in der Unterwelt」(下)

201906090001昨晩、ウィーンでは好天の中で、盛大に「第26回LifeBall」が行われました。人混みが苦手なFeriは、某ホイリゲでのんびりとした週末を過ごしていましたが‥

一方、テニスのフレンチオープンで、オーストリアのDominic Thiem選手が決勝進出を果たし、大変な盛り上がりを見せています。本日、行われる決勝の相手はナダル選手。さて、優勝を果たすことができるでしょうか。

Orpheus_000さて、今日は昨日に引き続きVolksoper「Orpheus in der Unterwelt」(地獄のオルフェ)の後編です。

第2幕第1場は、「地獄のプリュントの部屋」(というかウリディースの部屋)です。ウリディースは、来たばかりだというのに、プリュントに相手にされず、飽き飽きしています。プリュントの使用人ハンス・スティックスが、有名な「私がアルカディアの王子だった頃」を歌って彼女を口説くのですが、一発で袖にされてしまいます。

ちなみに、ウリディースは、黒いランジェリー姿で熱演しています。

地獄へやってきたジュピターはプリュントに、ウリディースに会わせるよう要求するのですが、拒否され、逆に宴会場へ案内されます。

この宴会場では、一緒に地獄に来た神々が盛り上がっており、何となく派手なエンディングが予想されます。

本来、冷静なはずの世論も、怪しげな酒を飲んでから本性があらわになってきます(世間体を忘れ、快楽に邁進してしまいます)。もちろん、オルフェは地獄の魅惑的な女性にぞっこん。

ジュピターはハエに化けて、ウリディースの部屋に忍び込み、彼女に一目惚れするのですが、ハエの扮装が、笑えます。まるで「仮面ライダー」みたい‥

Orpheus_008ジュピターは身分を明かして、オリンポスヘと誘いますが、地獄に飽きてしまったウリディースは、即座にOK。ここの二重唱は、笑えるシーンの連続です。

実は、この場面を、隣の部屋からジュノーがしっかり見ており、嫉妬心が燃え上がるという話に‥結局、ウリディースをバッカスの巫女に変装させて、地獄を脱出する算段をしたところで、第1場が終わります。

第2場は、「地獄の大宴会場」です。天上の神様も地獄の住人も入り乱れて、飲めや歌えの大酒宴となり、バレエ団のモダンバレエも加わり、おなじみの「天国と地獄」が盛大に演奏されます。

ジュピターと「バッカスの巫女姿」に変装したウリディースが逃げようとすると、プリュトンに見つかつてしまいます。

Orpheus_022ここで「バッカスの巫女姿」に変装した女性が、もう一人登場し、宴会場は大混乱(変なお面を付けているので顔は見えません)。

実は、最初につれてきた「バッカスの巫女姿」の女性こそ、ジュピターの妻ジュピテールだった…という落ちになっています。動揺するジュピターが、これまた見物です。

Orpheus_023そこへ、オルフェが、世論と共に登場します。天上にウリディースを連れて行きたいジュピターですが、仕方なくオルフェウスに「地上に戻るまでは決してウリディースの方を振り向いてはならない」との条件で、妻を返すことにします(ウリディースに飽きているオルフェの行いを見ていると、どうせ約束は破るだろうと踏んでいる訳です)。

しかし、オルフェは、なかなか振り向きません。そこで、業を煮やしたジュピターは雷を起こし、オルフェを強制的に振り向かせてしまいます。

プリュントは「ウリディースは黄泉の国に残る」と主張しますが、ジュピターが「彼女をバッカスの巫女にする」と宣言。

Orpheus_032また、このあたりになると、本来、世間体の代表である世論が、ハンス・スティックスに惚れてしまい、追いかけ回すというサイドストーリーも盛り込まれています(やはり世間体は、欲望には勝てないという本質を突いたお話)。

最後は、地獄で天上の神々、地獄の住人がそろって大合唱の後、「天国と地獄」のギャロップが盛大に演奏され、フィナーレを迎える展開です。

さて、出演者の仕上がりですが、プリュントのDavid Sitkaさん、スマートな感じでなかなか良い味を出していました。今までオペラやミュージカルなど幅広い作品に起用されていましたが、主役級には起用されていませんでした。

ジュピターのMartin Winklerさんは、以前、Feriが観たKurt SchreibmayerさんやCarlo Hartmannさんに比べると、ちょっと存在感が弱い感じがしましたが、まあ、合格点でしょう。

オルフェのThomas Sigwaldさんですが、Feriは久しぶりに観ました。余り変わっていませんね。ちょっとビックリ。

この人は優柔不断で、女性に目がない役は上手なので、ピタリでした。

Carsten Süssさんは真面目なイメージが強いので、Thomas Sigwaldさんの方が向いているかもしれません。個人的な感想(好みの問題)ですが‥

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